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社説:GDP成長率 景気、物価両にらみの時だ

 今年1~3月期の国内総生産(GDP)実質成長率は前期比0・8%増、年率換算で3・3%増だった。07年度に入り、4~6月期が前期比0・6%減、7~9月期が同0・3%増、10~12月期が0・6%増だったことを勘案すれば、再び景気は上向いているようにもみえる。

 しかし、今回のGDP速報は、日本経済が景気、物価の両面で新局面を迎えつつあることを示唆する内容と読むべきである。

 その第一は外需依存色がまた、強まってきたことだ。02年2月からの景気拡大過程では、当初の輸出主導が、04年ごろから民間企業設備投資など内需に引っ張られる形になった。個人消費も成長の下支え役を果たしてきた。ところが、07年前後から個人消費が低迷する一方で、米国や中国などへの輸出が成長のけん引役に復帰した。

 米国がサブプライムローン問題による景気の減退に見舞われたにもかかわらず、1~3月期もアジア諸国や欧州向け輸出は好調で、前期比0・8%実質成長のうち、0・5%分が外需となっている。これでは持続的でない。

 民間企業の設備投資が減少に転じた背景にも、03年度以降の旺盛な投資が一段落したことのみならず、海外需要の先行きに対する懸念がある。

 第二に、物価上昇の影響がGDP統計上も表れてきたことだ。GDP全体の物価変動率であるGDPデフレーターは為替相場の影響などで昨年10~12月期より下落幅がやや大きくなった。しかし、国内需要デフレーターは同0・5%上昇、民間最終消費デフレーターは同0・3%上昇と物価に目を凝らさなければならない状況になった。原油や穀物などの価格高騰の国内消費財への転嫁が始まってきたからだ。この動きは4月以降、強まっている。

 年率で3・3%という成長を支えたのは高い伸びとなった個人消費だが、生活関連物資の物価上昇が続けば、悪影響が出ることは避けられない。

 政府は月例経済報告で今の景気拡大が足踏み状態にあることを認めている。内閣府の景気動向指数も景気の転換点が近いことを暗示している。景気の減速は前年同期比の実質成長率が1・0%にとどまったことにも示されている。

 財政再建をはじめとする日本経済が抱える諸問題の解決にも実質2%前後の成長が望ましい。政府は6月に決定する09年度予算編成に向けた「骨太の方針」で、それに向けた具体的な道筋を提示すべきである。

 また、世界的な新物価体系への移行は受け入れなければならないが、同時に、インフレの芽は即座に摘むなど、果断な物価政策も求められる。労働の価格である賃金の見直しもされるべきだ。家計が消費を控えては景気は持続しない。

毎日新聞 2008年5月17日 東京朝刊

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