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社説:公務員制度改革 修正し法案に「骨」を入れよ

 残された会期の空費は許されない。公務員の人事や「政と官」のあり方を規定する国家公務員制度改革基本法案が今国会の新たな焦点に浮上してきた。福田康夫首相が成立に向けた努力を15日与党に促し、民主党にも法案の修正を探る意見が出ているためだ。

 政府案は「骨抜き」が目立つ内容だったが、改革前進につながるなら歓迎すべき動きだ。与野党は可能な一致点を見つけ、法案の欠点を是正し成立を図るべきである。

 政府案は(1)内閣人事庁を新設し、幹部公務員など人事の管理にあたらせる(2)政治家と官僚の接触を制限するため、各府省に「政務専門官」を置き担当させる(3)現行のキャリア制度を廃止し総合、専門、一般職の新たな採用試験区分を設ける--が柱だ。法案策定過程で中央官庁の抵抗に配慮し幹部人事の原案は各府省が作成することになった。このため人事庁による一元管理は事実上、見送られた。一方で民主党案は、新設する「内閣人事局」が幹部人事を担い、府省への幹部の配属を行う。政官の接触制限には反対し、接触の内容を文書化し情報公開するよう求めている。

 政府案は不十分な内容だが、それでも人事庁構想を嫌がる中央官庁には廃案を待望する空気が強い。そのため与党に熱意は乏しく、野党の反対もあり成立困難とみられていた。

 そんな中、民主党に修正を探る動きが出てきた。法案に単純に反対し「改革つぶし」の汚名を着せられるのは得策でないうえ、修正を迫り政府・与党を揺さぶる計算も働いたのだろう。廃案になれば、最も喜ぶのは縦割り行政に固執する官僚だ。国会で何らかの結果を導こうとする姿勢は評価できる。

 ただ、公務員制度改革をめぐっては、与党と民主党に官僚の天下り問題への対処をめぐり、抜きがたい対立がある。政府は各府省による再就職あっせんを禁じ、官民人材交流センターに一元化する法律を昨年、成立させた。民主党はこの構想を厳しく批判。キャリア官僚のほとんどが定年前に退職する慣行を定年を65歳に延長することで改め、再就職のあっせんを全面禁止せよと主張している。

 天下り問題は次期衆院選の主要争点となり得るテーマだ。この問題とは切り離し、府省幹部人事の原案を作る権限を人事庁に与えるなどの修正で与野党が折り合うのも一法ではないか。

 道路特定財源を10年間維持する法律が成立して以来国会の緊張感が薄れ、6月15日の会期末を前に日程消化の気配すら漂うのは嘆かわしい。首相の意欲表明も、よもや野党に泥をかぶせるためのポーズではあるまい。政府案の大幅修正となれば、政府・与党内の抵抗は必至だ。まさに問われるのは、官僚との協調が目立つ首相自身の指導力である。

毎日新聞 2008年5月17日 東京朝刊

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