四月二十七日の衆院山口2区補選で、与党候補が二万票の大差で敗れた。翌日の本紙を含む各紙は「高齢者ら“反乱”」「高齢者に渦巻く不信」「『天引き』に憤り」などと伝えた。
七十五歳以上を対象に始まった「後期高齢者医療制度」が民意に大きな影響を及ぼしたのだ。政府が制度定着を狙って、「長寿医療制度」と呼び名を変えても、功を奏さなかった。
当然だ。名称を変えても、制度の中身は同じなのだから。むしろ政府対応の姑息(こそく)さが際立ってしまった。
年金から有無を言わせぬ保険料天引きが基本。自主納付者は一年以上滞納すれば、いったん窓口で十割負担しなければならない資格証明書に切り替え。事実上の保険証取り上げだ。
これまで七十五歳以上の方の保険証取り上げは、老人保健制度で禁止されていた。しかし、同制度は後期高齢者医療制度と引き換えに廃止された。
さらに、糖尿病や高血圧などの慢性疾患には、診療報酬に定額制が導入された。上限は六千円。これでは血液などの基本検査だけで超えてしまう。七十五歳以上だからというだけで、必要な検査や治療が受けられなくなる。
定額制は、患者の同意を条件にしているが、国の指導の下、医療機関が定額制を選択すれば患者は抵抗し切れないのではないかとの懸念が広がる。
「ちまた」面には、新制度を批判する投稿が相次いだ。岡山や広島など、各地の府県医師会も反対を表明している。私も新制度は、命をいとおしむ気持ちが欠落していると思う。
(ニュース編集部・藤井正人)