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生活保護者「命の危険も」 通院費制限に受給者ら抗議

2008年05月16日01時07分

 生活保護受給者の通院のための交通費(通院移送費)を大幅に制限する厚生労働省の通知に対して、受給者やその支援者らが15日、記者会見し、窮状を訴え通知の撤回を求めた。通知は、北海道滝川市で起きた元暴力団員らによる2億円の介護タクシー代金不正受給事件を受けた対策で、7月に本格実施を予定している。

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記者会見する生活保護問題対策全国会議の小久保哲郎事務局長(左)ら=15日、厚労省、高波淳撮影

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 これまでは入院や通院などの際に「最小限度の実費」が支給されてきた。しかし、厚労省は4月1日付の通知で、支給できる場合を災害現場からの搬送などに大幅に限定した。

 10日後に東京都内の大学病院で手術予定という埼玉県の女性(45)は、担当のケースワーカーから「通院費は出せないので、生活費を削って下さい」と告げられたという。母子家庭で子ども2人と暮らす。病院までの交通費は月6千円。「1週間分の食費に相当します。ご飯か治療かの選択を迫られているようで、今後が不安でたまりません」

 うつ病で福祉事務所の管外の医療機関に通う女性(43)は「自分にあった病院をようやく見つけ、なんとか入院せずにやってこられた。追いつめないでほしい」と話した。

 06年度の移送費は計43億8600万円で、医療にかかわる生活保護費の0.32%。受給者151万人のうち、通院や往診など入院以外で受診したのは月平均110万人だ。

 支援団体の生活保護問題対策全国会議(事務局・小久保哲郎弁護士)は、この8〜9割に影響が出るおそれがあるとみる。「悪質な一部の例を一般化して基準を変えるのはおかしい。通院費が打ち切られ受診をひかえると、病状によっては命の危険にもつながりかねない」として、通知の撤回を求めていく。

 厚労省の伊奈川秀和保護課長は「運用格差があるため基準を明確化した。原則は示したので、各自治体で判断してほしい」と話している。

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