「博多の水炊きの秘密を忍者が探る!」
達人の店に潜入してその調理法を探ると、鶏肉をなんと45分間も煮込み、その間ひたすらアクを取っていました。達人が火をとめた隙に試食してみると、案の定少し硬くてパサパサ、巌流島で皆をうならせた鶏肉とは全くの別物だったのです。
これが絶品の肉になったのはなぜなのでしょうか? 実は、この後にまだ続きがあったのです。
達人が火を止めた後、開店まではさらに2時間ありました。その間、達人は何も手を加えませんでした。ところが、開店まぎわに再度食べてみるとホロッホロの柔らか肉に変身していたのです。
鶏肉の筋せんいは、加熱すると収縮するため、食べると硬く感じます。一度筋せんいが収縮すると、その状態から元に戻ることはありません。にもかかわらず、達人の肉がホロホロだったのはなぜなのでしょうか?
コラーゲンが肉を軟らかくする!?
肉がやわらかくなった理由は、筋せんいを覆っている膜の主成分である「コラーゲン」が溶けたからです。
コラーゲンは、水中で長時間、高い温度で加熱されると、分子の一部が水に溶ける性質を持っています。このため、コラーゲン分子が分解し、筋せんいを覆っていた膜に穴が開きます。すると、膜は破れやすくなり、筋せんいが簡単にほぐれるようになります。その結果、肉がやわらかくなるのです。
※3分程度の加熱で肉の角が丸くなるのを目安にしていた「旧ガッテン流」は、プリプリ感があってジューシーな鶏肉を楽しむための目安です。長時間加熱の新ガッテン流は、しっとりホロホロのとろけるような鶏肉を目指しました。どちらも美味しい鶏肉を食べることができますが、鶏肉の食感や味が全く違う状態になります。
なお、達人の鍋の温度変化を調べてみると、家庭で使う土鍋よりも保温効果が高いことがわかりました。そのため、火を止めた後も、鶏肉は煮こまれているのに近い状態となっていたと考えられます。
コラーゲンを効率よく溶かす方法
コラーゲンは、加熱温度が高いほど、また、加熱時間が長いほど、溶ける効果が高くなります。専門家によれば、特に80℃以上で溶ける量が多くなると考えられています。
注意していただきたいのは、水中でないとコラーゲンは溶けない、ということです。
また、鶏肉だけでなく、牛や豚でも同じようにやわらかくなります。本来かたい「スジ肉」でも煮込むとやわらかくなるのは、スジがコラーゲンを非常に多く含んでいるためです。
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