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医療事故:情報を共有、ネットで対策など報告--関係6団体

 病院間で情報を共有し医療死亡事故を減らそうというキャンペーンに、国内の主な医療団体が共同で今月から取り組む。2年間で1万人の命を救うことを目標に各病院が患者の死亡率や医療安全対策をインターネットで報告し、成功例を互いに取り入れる。全病院の約3分の1に当たる3000病院以上の参加を目指し、19日から登録受け付けを始める。主催するのは日本病院団体協議会、日本医師会、日本看護協会など6団体で発足させた医療安全共同行動推進会議(議長・高久史麿自治医大学長)。米国の医療界が04~06年に「10万人の救命」を掲げ、効果を上げたとされる取り組みを参考にする。

 参加する病院は(1)危険薬の誤投与防止(2)院内感染の予防(3)医療機器(輸液ポンプ、人工呼吸器)の安全な操作と管理--など8項目から取り組みたい項目を選び、推進会議が示す指針に沿って、実施状況を報告。併せて毎月の入院死亡者数や死亡率のデータも取る。

 また、成功例をネット上で参加病院に紹介するとともに、研修会や地域交流会でも報告する。キャンペーン終了時に、病院側には自己評価を求める。

 厚生労働省の研究班が03~05年に行った抽出調査では、入院患者に対する約4000件の医療行為のうち、6・4%で事故(有害事象)が起きていた。しかし死亡事故についての統計はなく、事故報告や分析の体制も十分ではないため、医療機関は学会などの情報を基に独自で事故防止策を取っているのが実態だ。推進会議は情報の共有化で、事故30万件、入院死亡者1万人の低減を目指す。

 キャンペーンを提案した「医療の質・安全学会」の上原鳴夫副理事長(東北大教授)は「患者側に協力してもらいたい取り組みもあり、地域の病院に参加を促すなどして、安全向上の試みをもり立ててほしい」と話す。

 17日には東京都内で「キックオフ・フォーラム」を開く。問い合わせは推進会議準備委員会(022・717・8197)。【清水健二】

毎日新聞 2008年5月16日 東京朝刊

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