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【社説】

直下型地震 おびえず地道な対策を

2008年5月16日

 中国・四川大地震の衝撃を追うように、中央防災会議が中部、近畿の直下型地震の被害想定を発表した。すでに首都圏の被害も想定済みだ。数字の大きさに驚かず、日常の防災対策を充実しよう。

 経済被害は中部圏三十三兆円、近畿圏七十四兆円、死者は中部一万一千人、近畿四万二千人と試算された。発表済みの首都圏直下型地震では経済被害は百兆円超、死者一万三千人の想定だ。隣国の地震も「対岸の火事」ではない。

 中国と条件が違うのは、わが国では早くから地震に対する警告が叫ばれ、観測網や情報システム、避難態勢が曲がりなりにも整備されつつあることだ。この事実を踏まえ、冷静に対処したい。

 もっとも地震に対する警告は、海溝型の東海、東南海・南海地震が中心だった。しかし、阪神・淡路大震災をはじめ、日本列島で近年発生した地震はすべて直下型だ。直下型地震には、緊急地震速報もまず間に合わない。

 極論すれば、いつ、どこで起きるかもしれない直下型に備えるには、これまで提案された対策を、列島全体で着実に推進する以外に手だてはない。

 死者をできるだけ減らすには、阪神の最大の教訓である住宅などの倒壊、家具類の転倒による圧死を防ぐのが第一である。

 そのための家屋の耐震診断、耐震改修の住民負担の軽減策は阪神の直後、横浜市に始まり、東海地震などの被災が予想される静岡、愛知県で進んだ。しかし、新潟県中越、中越沖、能登半島地震などの続発を見れば、活断層で直下型地震の恐れがあるすべての地域で急ぐべきである。

 高規格道路は災害時、救援や復旧のための人員や資材を運ぶ要路となる。今回の想定では、高速道路や新幹線の不通で、人の移動や物流が止まる可能性も挙げている。すでに重要な道路は橋を中心に、阪神クラスの揺れに耐えられるよう補強工事が進んでいる。できれば予定を前倒ししたい。

 地震で職場などからの帰宅困難者が中部九十六万人、近畿二百万人、首都圏で六百五十万人になるのも混乱を大きくする。

 災害の発生と経過、被害の規模や救援活動の状況など、総合的に情報を集めて必要な機関に提供したり、救急医療の施設、要員や資材の確保、緊急の度合いに応じたライフラインの復旧など、大災害時の危機管理にはまだ多くの課題も残る。対応を急ぎたい。

 

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