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【主張】曲がり角決算 経営再点検のきっかけに
上場企業の平成20年3月期決算の発表がピークを迎えた。新光総合研究所の集計によれば、上場企業全体では6期連続の増益が今年3月期で終わり、21年3月期の業績予想は7年ぶりの減益となる見通しだ。
米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に伴う米景気の減速や原油・原材料価格の高騰、円高など収益を圧迫する外部要因が企業を直撃している。北米市場で好調な業績をあげてきたトヨタ自動車の渡辺捷昭社長も決算発表の席上、「昨年秋から潮目が変わった」との見方を示した。
この数年、明るい業績見通しが続いてきただけに経営環境の急変に戸惑う経営者も多いだろう。企業は、バブル崩壊後の長引く不況の中で、設備、雇用、債務の3つの過剰を削って経営改善を進めてきた。平成14年からの景気拡大は、そうした努力で体力を付けた企業が牽引(けんいん)した結果である。
経営者は今回の経営環境の変化に萎縮(いしゅく)することなく、経営戦略を再点検する好機としてほしい。
グローバル競争を生き抜くには素早い経営判断が最も重要だ。例えば東芝は、昨年暮れから半導体事業への大型投資、高画質DVDレコーダー(録画再生機)の「HD DVD」事業からの撤退などを矢継ぎ早に決断した。
その影響で今年3月期は3年ぶりの減益になったが、デジタル製品強化で来年3月期には「連結売上高10兆円を目指す」という。こうした「選択と集中」の徹底が大事なのである。
円高で必要以上に弱気になることもない。いまの円高はドルの独歩安の裏返しであって、円と主要な通貨との為替レートを貿易ウエートで加重平均した実質実効為替レートでみれば、それほど上昇してはいない。
確かに対米輸出は影響を受けるが、輸出相手国は中国やアジアの新興国などにも広がっている。以前に比べれば、円高に対する企業の“抵抗力”は強い。
円高で輸入品価格が下落し、原材料の購買力も高くなるわけだから、むしろ、内需拡大の側面に目を向けることも重要になる。
あまり目先の収益鈍化にとらわれず、内外の大きな経済潮流を中長期的にとらえ直して経営戦略を再構築する。それが今後の日本企業の収益を左右するカギになるのではないか。