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【主張】近畿・中部地震 国の機能分断にも備えよ
中国で起きた四川大地震の深刻な被災状況が連日、伝わってくる。
そうした中、近畿圏と中部圏でマグニチュード(M)7・6の直下型大地震が発生した場合に想定される経済被害について、政府の中央防災会議が推定額を発表した。
大阪を中心とする近畿圏では国家予算に迫る74兆円、名古屋を擁する中部圏では33兆円という被害額である。
近畿圏では最悪のケースで4万2000人という膨大な人命を奪うだけでなく、日本の社会経済システムにも致命的な打撃を与え得る。こうした大地震の破壊力を改めて見つめ直したい。
今回は、地震による避難者についても算出した。近畿で550万人、中部で250万人という数に上る。帰宅困難者は、近畿200万人、中部で96万人だ。
また、地震発生から1カ月後も避難所での生活を余儀なくされる人々は、それぞれ290万人と100万人と推定されている。
中国の惨状が決して、ひとごとではない数字である。
今回の検討で、細長い日本列島に特有のアキレス腱(けん)も見つかった。交通施設の被害による「人流・物流寸断」の影響だ。
近畿では、高速道路で10カ所、一般国道などで80カ所も高架や橋が崩落する。JR新幹線も20カ所で鉄道被害が発生する。
こうした交通機能の障害で復旧までの半年間、近畿では5300万人の人の流れと3700万トンもの物の流れが滞り、3・4兆円の損失がでる。中部の受ける影響は、人も物もこれより大きく3・9兆円になる見通しだ。
狭い国土に経済活動が集中しているのが、日本の社会の特徴である。大地震によって、国の機能が東西に分断される危険をはらんでいるわけだ。基幹路線の耐震強化を急ぎたい。
現在の日本列島では、次の発生周期の東南海・南海地震など海溝型の巨大地震が近づいている。
こうした時期には、内陸部で活断層が動きやすいので、中央防災会議がその被害想定を行っているところである。
近畿圏には大阪直下を走る上町(うえまち)断層帯があり、中部圏には名古屋東部を通る猿投(さなげ)・高浜断層帯がある。動けばともにM7・6だ。
地震はいつどこで起きても不思議はない。行政だけでなく家庭でも備えを進めたい。