中心市に周辺も利用できる都市機能を 地方の人口減対策2008年05月16日01時09分 地方の人口減少への対策を検討してきた総務省の「定住自立圏構想研究会」(座長・佐々木毅学習院大教授)は15日、報告書をまとめ、増田総務相に提出した。地域の中心市に、暮らしに必要な都市機能を重点的に整備し、周辺市町村の住民はこの機能を利用する方向を打ち出した。自治体の規模にかかわらず支援し、発展することをめざす従来の政府の考え方の転換を促す内容だ。 報告書は、05年は約6400万人だった地方圏の人口が35年には約5200万人に減るという予測や、高齢化が進むことに触れ、「小さな市町村の区域だけでサービスを完結することは、より割高かつ困難になりつつあり、中心市の都市機能を周辺地域の住民が活用するなど圏域として考えることが必要」と指摘。そのうえで「中心市が周辺地域の住民の分も含め、圏域全体の暮らしに必要な都市機能を集約的に整備」するとした。
具体的には、人口5万人以上で昼の人口が夜を上回る市を中心市と位置付け、周辺の市町村と協定を結ぶ。周辺市町村から出てくる若者などが圏域にとどまれるよう共同で中心市に住宅を確保したり、介護施設や高齢者向け住宅を整備したりする。一方、道路やバスなどの交通機関を整備して、周辺市町村の住民が、中心市の病院やショッピングセンターなどを利用しやすくする。高速通信回線を、不採算地域では公的支援で整え、遠隔医療などにも役立てる。 中心市に対しては、圏域全体のサービスを担えるよう地方交付税などで財源を充実させる。また、中心市が圏域全体を見通して行政運営をできるよう、広域の都市計画の原案作成の権限、圏域全体の教職員の人事や給与に関する権限などを国や都道府県から移譲する。従来の行政組織の枠組みを超え、連携を促す内容といえる。都道府県を超えた圏域づくりも想定している。 ただ、圏域づくりは国や都道府県の指示ではなく、自治体の自主的な判断に委ねられており、促進のための具体策も明記されていない。また、定住に不可欠な雇用の確保については「地域を支える基幹産業が重要」などと指摘するにとどまっている。構想を具体化するには、政府全体の方針に格上げして各省が一体的に取り組む必要があるため、増田総務相は6月に策定される骨太の方針にこの内容を盛り込みたい考えだ。 定住自立圏構想は、福田首相が昨年11月に「都市への人口流出を防ぐため、地域で定住できる政策を提起してほしい」と増田氏に指示し、検討が始まった。報告書を受け取った増田氏は「財政措置は限りある中で考えていかなければならない。バラマキではなく、ぐっと絞ることが大事だ。地域をちゃんと残し、しかし一方でバラマキではないやり方を両立させることが大変重要だ」と述べた。(今村尚徳)
PR情報政治
|
ここから広告です 広告終わり どらく
鮮明フル画面
一覧企画特集
特集
朝日新聞社から |