国連が食糧価格高騰を受けて設けた「グローバル食糧危機作業部会」の初会合が開かれた。六月初旬には全加盟国を対象に緊急の食糧サミットがローマで開かれ、国際社会として対応策が検討される。作業部会は対策などを明記した行動計画の原案をそれまでにまとめ、サミットに提出することになった。
食糧価格の高騰で国連は新たに一億人の飢餓人口が生み出されるとする。世界各地で抗議の暴動も起きている。価格沈静化のために効果的な対処策をまとめてもらいたい。
国際穀物相場は昨年半ばから今年にかけて急騰した。小麦は今年二月時点で二年前の三倍を超え、これを受けて日本でも四月から輸入小麦の価格が30%上がった。最近はコメの国際相場も上昇している。
要因としては新興国の消費拡大、燃料高に伴う輸送費などの増大、穀物を原料とするバイオ燃料の増加などが挙げられる。加えて、金融市場の混乱で株式市場から逃避した投機資金が原油市場などに続いて穀物市場に流れ込んでいることがある。
食糧需給の逼迫(ひっぱく)を受け、中国やインド、アルゼンチンなどが相次いで小麦や大豆、コメなどの輸出規制に乗り出すといった動きも出ている。
国連の作業部会の行動計画には、価格高騰で食糧支援が難しくなる恐れがある世界食糧計画(WFP)の資金繰りなど短期的対応のほか、食糧輸出規制の緩和策や穀物の作付面積拡大など、中長期的な取り組みが盛り込まれる方向だ。
ただ、要因からすれば食糧価格高騰の根は深く、ぶつかり合う各国間の利害を調整して解決策を導き出すのは容易ではあるまい。基本的に自由であるべき貿易や資金の流れをコントロールしようというのだから、摩擦が出て当然でもある。先ごろも米大統領がインドの消費増加が穀物価格高騰の一因と言及したことにインドの閣僚や国会議員が激しく反発した。
しかし、現在のグローバル経済の下では、各国ごとの対応や既存の組織の努力では限界があることも事実だ。そこに、新たに国連として問題解決に動く必然性があるといえよう。
食糧サミットなどとは別に国連人権理事会は食糧危機に関する特別会合を今月下旬に開催することを決めた。飢餓を重大な人権侵害と位置付け、こちらでも解決策を探るという。
食糧価格の高騰は貧しい国では直接人の命を脅かす問題であり、紛争の火ダネにもなりかねない。環境問題と並ぶ大きなテーマだ。
三菱東京UFJ銀行で、旧東京三菱銀行の店舗が発行したキャッシュカードの一部が、提携先のセブン銀行の現金自動預払機(ATM)で利用できなくなる障害が起きた。五時間にわたり現金引き出しや残高照会ができず、約二万件の取引が成立しなかった。
旧東京三菱銀のATMを利用し、ゆうちょ銀行など六つの金融機関の口座への入金ができない障害も発生し、約二百六十件の取引もできなかった。
併存していた旧東京三菱銀と旧UFJ銀の二つのシステムを統合するビッグ・プロジェクトとして注目されたが、早くもつまずいてしまった。
原因は、旧東京三菱銀で更新された新システムのプログラムミスで、顧客向け情報がセブン側のATMで認識されなくなったためだ。ゆうちょ銀の場合は、データに誤りがあった。事前の点検が不十分だったようだ。
預金口座数が約四千万という世界でも例を見ないシステム統合のため一時は六千人の技術者が携わって慎重に準備を進めてきたはずだ。総投資額は三千三百億円に上っている。それでもプログラムの「穴」を見つけられなかった。
情報技術(IT)の進歩によって銀行や証券業界では、オンライン取引やインターネット決済が増え便利になった半面、システム障害の規模も拡大する傾向にある。発生すれば企業の社会的信用を損なう。
金融庁も今回のシステム障害を重く見て銀行法に基づく報告を求める方針だ。新システム開発のどこに問題があったのか、徹底した検証が必要だ。
システム統合は、今後旧UFJ銀でも行われる予定だが、失敗を繰り返さないよう万全の体制で安全なシステムとしなければならない。
(2008年5月15日掲載)