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【さらば革命的世代】(3)秋田明大「まだ何もしていない」 (3/4ページ)
■花火のようなもの
昭和44年末、拘置所から出た後の秋田さんは曲折を繰り返しながら、徐々に政治から離れた。路上で自作詩集を売ったり、映画に出演したこともあった。故郷に戻ったのは「疲れて行くところもなかったから」。
しばらくは、自分の中で、あの時代に区切りをつけることはできなかったという。「フラッシュバックのようによみがえって気分が落ち着かんかった。そうしたことがなくなったんは再婚してからかもしれん」と話し、さらにこう続けた。
「一生のうちで何かを成し遂げたいと思って、ずっと探してきた。でも結局は何もやってない。全共闘はその瞬間の自分を賭けたということではあったけど、一生を賭けるもんにはならんかった。全力でマラソンしてヘド吐いて倒れたようなもんだと思っている。ただ、あの一瞬は何か、すごいものを見ていたんじゃろうね。花火みたいな…。きれいだったですよ」
修理工場には工具や書類が散乱し、窓の向こうからは瀬戸内の波の音が静かに聞こえていた。「ちょっとパートの女房を迎えにいってくるけん」。そう言って軽トラックを動かし、再び現れた秋田さんの横には、地味な服装の小柄な女性が立っていた。
「前の女房は取材受けたら離婚と言っとったけど、こいつは、当時を知らんので関心ない。活動家だったこともようわからんようじゃ。息子もようしゃべるようになって『パパ、掃除しなさい』とかうるさい。結局はワシがアンパンマンのおもちゃまで片付けてるんじゃけどな」
「伝説の闘士」はごま塩頭をさわりながら、照れ笑いし、最後にこう述べた。
「何かしたいとは思うけど、何をしたいか見つからない。でも最近はそれでもいいかとも思っとる。嫁がいて、息子がいて…。最期に『わしは何もできんかったのう』と死んでいければ、それはそれでいい人生かもしれん」
(連載は毎週掲載します)