後期高齢者医療制度廃止へ医師が国会前集会

 「福田首相は『制度の説明が不十分』などと言っているが、内容が知られれば知られるほど、国民に怒りが広がっている」−。4月に始まった「後期高齢者(長寿)医療制度」の中止・撤回を求め、全国から集まった医師や歯科医師ら約80人が5月15日、衆院第二議員会館周辺で「白衣の国会前集会」を開いた。参加者は、同制度が始まってから医療現場で起きている問題などを訴え、同制度の廃止へ向けて、国民とともに活動していくことを確認した。

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 同制度については、4月になっても保険証が届かないなどの混乱が各地で続出。制度に伴う新たな診療報酬として設定された「後期高齢者診療料」が、高齢者に必要な医療の提供を損なう危険性が高いなどとして、各地の医師会が算定の自粛を呼び掛ける動きを進めている。また、制度に反対する署名は全国で550万人を超えたほか、570以上の地方議会が見直しの意見書を提出している。

 集会では、千葉県の内科医が「最近、診察室に入ってくる高齢者に元気がない。制度のことを気にしているからで、『医療を今まで通り受けられるのか』といった不安を抱えている。『必要なことは行うから安心して』と話しているが、4月以降、診察に掛かる前に、こんなやりとりが目立つようになった」と、現場で起きている問題を指摘した。
 大阪府の歯科医師も「『新しい入れ歯ができた』と患者に伝えると、『ちょっと待ってほしい』と言われたことがある。理由を尋ねると、保険料が年金から天引きされるため、医療費を払えないかもしれないと心配していたことが分かった。負担だけでなく、患者に不安を与える制度は決して認められない」と、廃止を強く訴えた。

 また、タレントの稲川淳二さんが「制度は現代の姥(うば)捨て山だ。まじめに生き働いてきた人が、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。国民は血の通った政治を期待している」というメッセージを寄せ、精神科医の香山リカさんも「多くの人の心と体と生活を傷つける制度は反対。好きで病んだり、好きで高齢になる人は、誰一人いない」と、集会にエールを送った。

 このほか、制度の廃止法案を国会に提出している民主、共産、社民、国民新各党の国会議員が駆け付け、制度の問題点などを示した上で、廃止に向けて野党が共闘していくことを誓った。

【後期高齢者診療料】
 
「主病」に対する一医療機関での管理、年間診療計画の作成、医師の4日間の研修を要件に、診療料を月6000円に設定。これには、医学管理、検査・処置、画像診断の費用が包括されている。同診療料の病名は、高血圧、糖尿病、不整脈、脳血管疾患などの老人性慢性疾患と認知症や便秘症が入り、すべての後期高齢者(75歳以上)が対象になる。


更新:2008/05/15 21:19     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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