外国からの介護職受け入れ「日本に問題」

 介護保険の利用者と家族・事業者・労働者らが共同で制度の改善を国や自治体に要請することを確認した「介護フォーラム2008」(同フォーラム実行委員会主催。3月15日、東京都内で開催)−。今回のフォーラムでは、外国人介護労働者の受け入れ問題も示された。講師を務めた健和会・看護介護政策研究所の宮崎和加子所長は、介護職が不足しながらも日本の受け入れ基準は他国と比べて厳しい現状にあると指摘。加えて、介護職の報酬が一般労働者の約7割といわれる中、「(外国人介護労働者は)他の国と比較して日本に魅力を感じるだろうか」と、労働条件の整備の重要性を強調した。

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 外国人介護労働者の受け入れに関しては、締約国間で経済取引の円滑化や経済制度の調和、サービス、投資など多様な経済領域で連携強化を促進する「EPA(経済連携協定)」に基づいて進められている。宮崎所長は、フィリピンからの介護職の受け入れについて説明した。

 フィリピンでは、1年間に約100万人の国民が他国で出稼ぎ。その30%が看護師で、最近では介護職の資格を取って外国へ働きに出るケースが増えているという。既にフィリピンからは介護職として24か国に派遣されている。
 フィリピンからの介護職の受け入れをめぐっては、日本は4年制大学を卒業した後にTESDA(介護の学校)の終了証を取得するか、または看護大学卒業という資格を設けているが、宮崎所長は昨年11月にフィリピンを訪問した経験から「フィリピンでは日本の受け入れ基準が厳しすぎて行けない」という雰囲気もあると語った。

 加えて、日本入国後に6か月間の日本語研修も必要となっており、宮崎所長は「6か月間の研修中の生活保障を誰が負担するのか。受け入れる事業者と国が負担することになっているが、研修中には報酬が出ない。6か月後しか給料が保障されないのでは、来日の希望者は少ない可能性がある」と指摘。さらに「実際のケアを行っても、日本の国家資格を取得するまでは『研修』という位置付けになり、無資格扱い≠ニして極端に低額にしか支払われないかもしれない。日本の介護職でも一般の労働者の約7割といわれる中、他の国と比較して日本に魅力を感じるだろうか」という疑問を示した。

 そのうえで、「(高齢化の進展で)介護力の問題は、先進国共通の問題になっている。福祉先進国といわれる北欧諸国でも介護職を他国に頼っている。フィリピンは、介護力を提供する最先端の国で、単にEPAという経済の問題として条件を厳しくしていると、日本は介護力でどんどん困る状況になるのではないか」と危惧。「介護職が足りなくて介護保険はつぶれそうになっている。介護職が不足していることに対し、日本の政府は政策がなさ過ぎる。日本人で介護をやりたいと思っているなら、まず日本人の介護職の待遇をきちんと上げて、みんなが生き生きと働けるようにしなければならない。それで介護職が(日本人で)足りるのか足りないのかを考える。それでも足りないなら、どこかの国に頼まなければならず、受け入れ側として、送り手となる国や受け入れる人たちのことをもっと知る必要がある」と、労働環境の整備の重要性を強調した。


更新:2008/03/17 19:19     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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