ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン長野> 記事

エイズ題材に研修医が演劇 佐久

2008年05月15日

写真

勤務後、深夜のけいこに励む研修医たち=佐久総合病院研究棟

 佐久市の佐久総合病院で、初期研修中の研修医総勢32人が、劇のけいこに連日午前1時、2時まで励んでいる。17、18両日の病院祭で上演するためだ。劇を通して一般の人に健康について考えてもらう取り組みで、「農民とともに」を掲げて地域医療の充実を図ってきた病院の伝統。研修医による劇も伝統に倣い、3年前に始まった。今年の題材は意外に身近な「エイズ」だ。(伊東大治)

 午後9時半、病棟向かいの研究棟会議室。白衣に聴診器を下げた研修医たちが仕事を終え集まってきた。

 研修医の朝は早い。午前6時の採血から勤務が始まる。一日の終わりに患者の検査結果などを指導医に報告するが、不備があれば終業は午前0時を過ぎることもある。

 「さて、配役が欠けているところはパスして始めましょう」。会議室に、脚本を手掛けた研修医2年目の加藤琢真さん(26)の声が響いた。大学時代にアフリカでエイズの現状を見て帰国。05年暮れにエイズ孤児支援NGO「PLAS」を立ち上げた。研修医として佐久地域に赴任して驚いた。エイズ患者・HIV感染者が意外なほど多いからだ。劇でエイズを取り上げたいと発案したのは、そんな加藤さんだった。

 劇の想定はこうだ。主人公は、同地域に住む40代夫婦。エイズに関する知識はなく、無縁と思って見たテレビ番組で、HIV感染者が先進国の中で日本だけで増加していることを知り、検査を受けることに。結果は夫だけが陽性だった……。

 研修医2年目で夫役の安藤大史(ひろ・ふみ)さんも、4月に研修医になったばかりでテレビキャスター役を務める関根有沙さんも、研修でエイズ患者やHIV感染者と実際に接している。同病院の研修医にとってエイズは身近な問題なのだ。発症して初めて感染がわかる「いきなりエイズ」の可能性が高いとされる中高年者には、検査の必要性を切実に感じているという。

 演技指導にあたっているのは、1945年創部の同病院劇団部(30人)。医療問題や平和などを取り上げた脚本が50本ほどあるといい、医師らによる勉強会や地域の催しに出掛け、上演している。演出を手掛ける臨床検査科の羽毛田牧夫さんは「研修医を職員みんなで育てようという気概でやっている」と言う。

 劇を呼び掛けた北沢彰浩医師は「研修医は患者さんたちの体を診させてもらって経験を積む。劇はそのお返しでもある」と話した。

 研修医劇は、17日が午後0時40分から、18日が午後1時50分から、いずれも病院内で上演される。

ここから広告です
広告終わり

このページのトップに戻る