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【ゆうゆうLife】虐待のその後で 不足する施設とサポート(中)児童養護施設 (3/4ページ)
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厚生労働省は平成12年以来、グループホーム設置を推進するなどで家庭的な環境づくりに努めている。グループホームの職員は、子供6人に対して2人。6人に1人の従来型施設よりも、子供の心は安定するとの考えからだ。
しかし、「数の問題ではない」というのが、施設を巣立った“子供”たちの共通認識だ。広瀬さゆりさん(24)は小学6年生から高校卒業まで神奈川県内のグループホームで育った。「家庭の雰囲気を味わえたし、職員もちゃんと育ててくれたと思います。でも、『見捨てられた私は1人で生きていかなくてはならない』という感覚はぬぐえませんでした」という。今は、同じような経験をもつ者同士が話し合う場「日向ぼっこ」を運営する。「私たちに必要なのは、親の代わりに一緒に生きてくれる大人。職員数が増えても、目の前の子供の悩みに耳を傾け、一緒に解決策を考えながら背中を押してくれる人が少なければ、何も変わらない」という。
今別府誠さん(25)は都内の児童養護施設で育った。職員数は少なかったし、規則は厳しく、プライバシーもなかった。ストレスはたまったが、生活全般には、いい印象が残っているという。「育児放棄のような形で僕を施設に預けた親を思うと、さびしかった時期もありました。でも、その欠如感は、3歳から高校卒業まで、親身に支えてくれた1人の職員が埋めてくれた。感謝の気持ちでいっぱいです」という。
職員の質がバラつく理由には、研修の不十分さが挙げられる。国の委託で施設職員の研修を行う「子供の虹情報研修センター」によると、主任クラスを対象にしたプログラムは年に4日間、受講者は約100人。センター自ら「子供と愛着関係を築ける職員を増やすには不十分」という。