「お好み焼き、押さえる? 押さえない?」
キャベツの甘みが足りなかった大学生は、いずれもお好み焼きを焼くときにへらで押さえていました。一方、達人はお好み焼きをひっくり返してから8分間押さえず、最後だけ軽く押さえていました。また、高得点だったAさんもまったく押さえていませんでした。押さえる・押さえないが両者の最大の違いだったのです!
キャベツの加熱時間だけを見ると
- テキパキしたBさん: 69点 3分55秒
- 慎重なCさん: 70点 6分33秒
- モタモタしたAさん: 80点 8分28秒
- 達人: 8分02秒
調理中は押さえないほうが、お好み焼きの内部の温度が早く上がる
押さえて調理したお好み焼きと、押さえないで調理したお好み焼きの内部温度を比較したところ、意外にも、押さえないほうがキャベツの温度(中心部)が早く上昇することがわかりました。
- 押さえた場合: 3分56秒で84℃まで上昇。
- 押さえなかった場合: 3分35秒で100℃まで上昇。その後は100℃で安定。
なぜ、お好み焼きを押さえないとキャベツの温度が早く上がるのか?
お好み焼きを押さえなかった場合、内部では以下のような現象が起きていると考えられます。
加熱することでキャベツから水蒸気が出ますが、お好み焼きの上部には小麦粉でできたクレープ状の生地があり、これがフタの役割をするため、逃げ場を失った水蒸気がお好み焼きの内部で充満します。いわば、キャベツは蒸されている状態です。水蒸気の温度はおよそ100℃なので、それに触れているキャベツの温度も100℃に近づいて安定します。
これに対して、お好み焼きを押さえた場合には水蒸気が逃げてしまうので、思っているほど温度が上がりません。広島風お好み焼きはいわば「お好み蒸し」の状態にすることで、キャベツに効率的に熱を加えることができていたのです。
なぜ、キャベツを蒸すと甘く感じられるようになるのか?
キャベツの千切りを、[1]蒸す [2]ゆでる [3]生 の3パターンで調理し、食べ比べたところ、蒸したキャベツが圧倒的に甘く感じられました。その理由は次の通りです。
- キャベツを蒸すと、細胞壁が緩やかに壊れる。これによって細胞に元々含まれていた旨みのもとであるアミノ酸や甘みのもとである糖が出やすい状態になる。こうしたキャベツを口に入れると、細胞壁が緩んでいる効果で瞬間的に旨みや甘みを感じることができる。
- 一方、ゆでたキャベツは細胞壁が激しく損傷するため糖やアミノ酸がゆで汁の中に流れ出てしまう。蒸した物に比べ、甘みを感じないだけでなく、食感もクタクタになる。
- 更に生のキャベツはしっかり噛まないと、糖やアミノ酸が出てこないので蒸したものと比較すると、甘みを感じにくい。
広島風お好み焼きの最大の長所は、キャベツを甘くおいしく、しかも大量に食べられることだったのです。
キャベツを甘く調理する極意
太めの千切りにしたキャベツ200グラムを、220℃で8分間蒸し焼きにします。これ以上蒸し焼きにすると、焦げる可能性が高くなるので要注意!
|