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5 月 14 日 (水)  
5/14(水)20:00更新
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四川大地震 さらに被害拡大か
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中国内陸部の四川省を震源に起きた大地震は、これまでに1万5000人近くの死亡が確認されたほか、中国の国営メディアは、1万4000人余りが行方不明になっていると伝えており、死者や行方不明者の数はさらに拡大するおそれが出ています。
この大地震では、これまでにあわせて1万4866人が死亡し、このうち▽四川省では、1万4463人、隣接する▽甘粛省では、280人、▽陝西省では、106人の死亡が確認されています。
さらに中国の国営メディアは14日夜、行方不明者は1万4051人に上っていると伝えており、犠牲者の数は、さらに増えるおそれが出ています。
被災地のうち、深刻な被害が出ているとみられている震源地の*ブン川県には現地時間の14日、ようやく救援活動にあたる武装警察およそ800人が徒歩やヘリコプターで到着しました。
国営の新華社通信が配信した写真には、武装警察の救援部隊がヘリから救援物資を次々と運び出している様子や、大きなリュックサックを背負って被災地に徒歩で向かっている様子が写っており、救援活動が本格化しています。
*ブン川県ではかなりの割合の建物が損傷を受けているほか、川に架かっていた多くの橋が崩れ落ち、これまでに、500人の死亡が確認されたということです。
さらにこの*ブン川県に近い綿陽市の災害対策本部がこれまでに明らかにしたところによりますと、綿陽全体では、5430人の死亡が確認されたほか、さらに、1万8486人ががれきの下敷きになっているということです。
また、同じく震源地に近い徳陽市でも6049人が死亡し、6200人余りががれきの下敷きとなるなど、被害はさらに拡大するおそれが出ています。
一方、地震の発生直後から被災地に入って救援活動の指揮にあたっている温家宝首相は14日午前、綿陽市の北川県に到着し、救出活動が続いている学校の倒壊現場を視察しました。
この学校では、およそ1000人が崩れたがれきの下敷きになっているとみられています。
温家宝首相は被災した人たちに対して「皆さんの苦しみは、わたしたちの苦しみです。党と政府は、困った人たちを助けるために最大限の努力をします」と励ましていました。
そのうえで温家宝首相は、中国政府として人民解放軍や武装警察などからなる10万人の救援部隊を出して救援活動を本格化させることを明らかにしました。
*ブンは「さんずい」に「文」
綿陽市 街は異様な静けさ
今回の大地震で深刻な被害が出ている四川省北川県に近い綿陽市に、NHKの取材班が入りました。
市の中心部では時折、商店の壁がひび割れしたり、窓ガラスが割れたりしている様子が見られますが、今のところ建物が崩壊するなどの大きな被害は確認できていません。
市の中心部には、大きな商店街やショッピングモールが建ち並んでいますが、ほとんどの店が余震を恐れて店を閉めており、大通りは車通りも少なく、街は異様な静けさに包まれています。
一方、綿陽市でいちばん大きな病院である綿陽市中心病院には、周辺の地域からけが人が続々と運び込まれています。
病院には入りきらないけが人が、外に設けられたテントで治療を待つ様子が見られました。
これから北部の北川県などで救助活動が進み、さらに多くのけが人がこの病院に運び込まれてくる可能性もあるとして、この病院では、対応できなくなるおそれもあると心配する声も上がっています。
専門家 断層の長さ300キロ
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今回の地震について、国内の複数の専門家は、その後の余震の広がりなどから断層の長さがおよそ300キロに及ぶと分析しています。
これは13年前に起きた阪神・淡路大震災で地震を引き起こした断層のおよそ6倍の長さに当たります。
13日の大地震のあと、四川省の震源地とその周辺では余震とみられる地震が相次いでいます。
アメリカの地質調査所などの観測では、余震とみられる地震は、大地震の震源地から北東の方向に延びるおよそ300キロの帯状の範囲で起きていることがわかりました。
また国内の複数の専門家もこの帯状の範囲は大地震を引き起こした断層とほぼ重なり、断層の長さはおよそ300キロに及ぶと分析しています。
分析を行った専門家の1人、東京大学地震研究所の引間和人特任研究員は「日本の内陸の地震ではこれほど長い断層はない。断層が長いため、広い範囲が直下型地震の激しい揺れに襲われ、大きな被害につながったのではないか」と話しています。
共産党指導部 感動的な報道を
中国共産党の指導部は、国内のメディアに対して地震の被災者救出の特に感動的な様子を積極的に報道するよう求めていたことがわかりました。
これは、中国共産党指導部の1人で党の宣伝活動を担当する李長春常務委員が、12日に主宰した内部会議で出したものです。
これについて共産党機関誌「人民日報」は14日付けの1面で、李長春常務委員が国内メディア向けに「人民解放軍や武装警察の部隊が国民が災難の危機にあるときに苦難や犠牲を恐れず救援にあたる感動的な場面や、復旧に取り組む当局の活動を強力に宣伝しなければならない」と指示したと伝えています。
国営の中国中央テレビは、崩壊した学校でがれきの下に閉じ込められた子どもを救援部隊が助け出す様子を繰り返し放送しているほか、新華社通信も被災者を救出するニュースを写真なども交えて詳しく報道しています。
中国のメディアの関係者は、共産党の関係部門から被災地での独自取材を認めないという指示があったために、現地の様子を伝える記事はすべて新華社通信を引用していると話しています。
李長春常務委員の指示は、救助活動が震源地に近づき、被害の拡大が確実視されるなかで、災害対策に対する国民の不満や懸念が起こるのを抑え、団結を促すねらいがあるとみられます。
※このニュースは5月14日20時00分時点でのものです。
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