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労役場留置:10年で2.8倍に 06年度7376件、モラル崩壊顕著に

 ◇軽微事件の罰金「払わなくていいや」

 交通違反などで命じられた罰金刑を支払わずに刑務所や拘置所で働く「労役場留置」の件数が急増している。法務省のまとめでは、97年度の2661件が06年度は7376件と10年間で2・8倍になった。罰金刑の件数(執行件数)そのものは同期間で約4割減少し、罰金刑に占める割合は4・5倍に跳ね上がった計算になる。専門家は、罰金高額化の流れの中で払えない経済的困窮者が増加したことに加え、「払わなくていい」というモラル崩壊で強制的に収容されるケースが多いと指摘している。(社会面に「ニッポン密着」)

 労役場留置は、罰金を払う代わりに刑務所などで袋を作ったり袋の底に敷く中敷きを数えたりする軽作業に従事する。実務上はほぼ「1日5000円」で換算される。

 罰金刑の執行件数は、97年度の104万8343件から06年度の64万3971件へと約4割減少。しかし、労役場留置件数の増加で、その割合は97年度の0・25%から06年度は1・15%に増えた。

 この間、飲酒運転など交通違反の罰金額の上限が引き上げられるなど罰金の高額化が進み、検察統計年報によると1件の平均額は97年度の約8万円から06年度の約15万円へ倍増。刑務所などの過剰収容問題に取り組む法務省の審議会に提出された資料によると、東京地検で昨年4~10月に執行された労役場留置88件のうち、60件が督促や呼び出しに応じなかったため強制収容したケースだった。

 弁護士らで作る「交通法科学研究会」の高山俊吉事務局長は「罰金高額化の影響は、経済的に困窮している人に特に表れている」とみる。交通ジャーナリストの今井亮一さんは「(罰金額引き上げの)道交法改正以降に私が受けた相談が、罰金を払わなくてすむ方法はないかといったものに変化してきた。社会全般のモラル低下が顕著に表れている」と指摘する。【伊藤絵理子】

毎日新聞 2008年5月11日 東京朝刊

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