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【暮らし】

診療報酬2年ぶり改定 戸惑いの医療現場

2008年5月15日

 病院で治療を受けたり薬を処方してもらったりする時にかかる診療報酬が四月から二年ぶりに改定された。患者の負担増や医療機関の減収につながる場合もあり、医療現場からはさまざまな戸惑いや不信の声が聞かれる。 (佐橋大、野村由美子)

 今回の報酬改定で医療機関の戸惑いが大きいのは、患者に対し問診や療養の注意をする際の「外来管理加算」で、「おおむね五分以上の診察」という要件が新設されたことだ。

 これまでは、病床二百床未満の病院や診療所は、診察と投薬のみの再診患者に、診察の長さに関係なく一回五百二十円の外来管理加算を請求できた。それが「外来管理加算は丁寧な説明への報酬」(厚生労働省)という理由で、「診察時間がおおむね五分以上」(同)の場合にしか請求できなくなった。

 「漫然と聴診器を当てて薬を出すだけの医療を改善するには、いいこと」と医師、患者双方から評価する声もあるが、愛知県春日井市の竹内医院(内科・小児科)の竹内達生院長はこう反論する。

 「患者には、事細かく療養上の注意をしてほしい人もいれば、嫌う人もいる。患者が注意を受け入れてくれるように、説明の時間を調節するのも必要。時間のかかる医療の方が良い医療といえるだろうか。予約患者のカルテに前日に目を通し、診察時間を減らしている努力も考慮されないのは不合理」

 愛知県保険医協会が県内の医療機関を対象に三月に実施した調査では、これまで外来管理加算を請求してきた約36%が対象外となり「医療機関の採算が悪化し、医療崩壊が進む」と懸念する。

 また、神奈川県保険医協会が同時期に県内の小児科診療所に限って行った調査では、75%の外来管理加算が算定できなくなる。「外来加算のために診察時間を長くすれば、待ち時間も長くなり、患者が医療機関で別の感染症にかかるリスクが高まる。五分以上のために、待ち時間が長くなったという影響も実際に聞いている」と、同協会の担当者は指摘する。

     ◇

 深夜・早朝、休日の「時間外」の診療報酬の算定も変わった。

 名古屋市内の男性会社員(59)は、四月に入って、かかりつけの医院に午後六時十五分ごろ受診したところ、時間外の本人負担分(三割)として百五十円が加算されていた。受付で午後六時以降は割り増しになったと説明され「たった十五分遅いだけで…」と憤る。

 今回の改定により、診療所では、開業時間内でも土曜日を含む平日の朝(午前六−八時)、夜(午後六−十時)などの診療に、五百円を加算できる。調剤薬局でも平日の夜(午後七時以降)などが新たに時間外になった。

 背景には、病院の勤務医不足の問題がある。夜間も開く診療所が増えれば、軽症の患者を受け入れることで、救急を手掛ける病院の負担も軽くなるからだ。しかし、名古屋や京阪神などの都市部では、時間外加算なしで夜間診療をしてきた診療所も多く、患者には違和感が強い。このため「今まで通ってきた人に急に請求できない」(開業医)という声もある。

 調剤薬局では「今日でなくていい薬なら明日午後七時前に来てください」とアドバイスするところも。

 名古屋市天白区で午後八時から十時までの夜間救急システムを実施する「小児科医ネットワークなごや」のメンバーで朽名昌彦・平針原クリニック院長は「もともと午後七時、八時まで診療してきたのに、患者さんに時間外加算について説明するのは心苦しい。患者さんが安心してかかれる医療の体制づくりを国は考えてほしい」と話す。

 このほか、後発医薬品(ジェネリック医薬品)については四月から、医師が「使用不可」と処方せんに署名しない限り原則使用できることになったが、薬局では「ジェネリックを求められても何千種もある薬から、すぐに出せなかったり、取り寄せが必要だったりする」と戸惑いを隠せない。

 

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