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【社説】

Jパワー株 外資の疑念をぬぐえ

2008年5月15日

 政府が外資にJパワー株買い増しをやめるよう命じた。外為法による初の中止命令だ。電気の安定供給や原子力政策への影響回避が理由だが、外資全体の対日直接投資を先細りさせてはならない。

 持ち株比率を現在の9・9%から20%に引き上げる。筆頭株主の英投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)が外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく中止勧告を拒んだため、政府は中止命令に踏み切った。

 TCIがJパワー(電源開発)の株式を追加取得して株主権限を行使し利益優先に転じて設備投資を削減すれば、原子力発電所の建設計画などに影響を及ぼす恐れがある。命令の主たる理由だ。米国はじめ各国ともに国防産業などの買収規制があり、国際標準を大きく踏み外しているわけではない。

 経済産業省は所管する特殊法人、Jパワーを民営化する際、高株価実現のために英国などにも売却先を広げた。株式比率はTCIを含む外資が約四割を占める。同省にとり株買い増しは想定外だったようで対応を一転させた。外資の目には同省が態度を豹変(ひょうへん)し、経営陣に異論を唱える株主を排除するのではと映ったようだ。

 そうでないなら、今回の命令が合理性の伴う規制であり、もの言う株主であるがゆえの排除ではないことを説明する必要がある。政府は透明性の高いルール整備を急ぎ、国内ファンドとの関連も含め誤解を取り除かねばならない。

 Jパワーには取締役として複数の経産省OBが在籍している。省益確保のための外資規制という疑念を抱かせてはいけない。天下りを自粛する覚悟も必要だ。

 少子高齢化が進む日本は外国からの投資受け入れで経済を元気づける政策が欠かせない。「日本は鎖国的」との印象を与え外資の投資意欲を萎(な)えさせてはなるまい。

 TCIはJパワーに配当金の増額、社外取締役導入などの株主提案を行い、受け入れなければ六月の株主総会で中垣喜彦社長の取締役再任に反対すると迫った。昨年の総会ではTCIの増配提案に30%以上の株主が賛同している。

 競争を促して海外に比べ割高の電気料金を引き下げる。経産省は電力各社に電気を卸売りするJパワー民営化に当たり、その役割を同社に期待した経緯がある。そうした新経営方針を打ち出し、一般株主の理解を得る気概を示さないと容易に総会は乗り切れまい。

 

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