◎輪島沖韓国船密漁 緩められないパトロール強化
輪島沖など日本海の、わが国の領海や排他的経済水域(EEZ)での韓国漁船の密漁が
〇三年ごろまでと比べて減少傾向にあるといわれているが、先ごろ、大和(やまと)堆(たい)のEEZ内で韓国漁船が仕掛けた密漁の刺し網が水産庁のパトロール船によって発見され、押収された。
今年初の密漁確認で、網にかかっていた一・五トンのベニズワイなどは資源保護から海
に戻された。
網が仕掛けられていたのが、日韓両国の漁船が操業できる日韓暫定水域に隣接する海域
であることから、暫定水域での漁に見せかけてEEZ内に入り込んだ、巧妙な密漁とみられている。
水産庁新潟漁業調整事務所によると、こうした密漁に対して、日本側が航空機と船舶に
よる取り締まりを強化したため、このところ年に一件ぐらいの割合で発見されるまでに減り、横ばいで推移しているそうだが、密漁が絶えない限りパトロールの強化を緩めてはなるまい。
ここ十年間の水揚げ量からすると、資源減少は明らかであり、その被害は石川県の漁業
であると推測される。すなわち、石川県の水揚げは一九九六年の十一万四百トンから下降カーブを描き、〇一年に八万二千トンに、〇七年には半減ともいえる六万二千七百トンにまで落ち込んだ。
富山県の水揚げは四万六千トン強で減りもせず増えてもいない。底引き網が主力の石川
県は大和堆の影響を大きく受けるのに比べ、富山県は富山湾での定置網を主力としているためである。
輪島市・舳倉島の北西約二百六十キロに位置する大和堆は海底が盛り上がった場所で、
プランクトンが多く発生することから、漁業者の間で「カニがわく場所」といわれるほどの好漁場である。ところがその45%が日韓暫定水域となっているため、韓国の漁船が日本側のすきをみてEEZまで入り込み、密漁するのだ。
韓国では魚介類の消費が伸び、そうしたことからも密漁が絶えないようだが、操業現場
を押さえるのが難しい。漁具を徹底的に押収し、外交ルートで韓国側に取り締まりの強化を求めていきたい。
◎五箇山誘客 「塩硝の道」も切り札に
東海北陸自動車道の全線開通により、世界遺産である南砺市五箇山の合掌造り集落を訪
れる観光客が、「ライバル」とも言える白川郷にとられるのではないかとの懸念が地元などでせり出してきた。これまで相倉集落で年一回程度だった夜間のライトアップを年六回に増やす方針だが、貴重な歴史遺産として、加賀藩時代に火薬の原料「塩硝」の一大産地があり、金沢へ塩硝を運んだ「塩硝の道」があったことをアピールするなど、白川郷との違いを際立たせる情報発信にも力を入れたい。
近年、地元を中心に、五箇山を塩硝産地という視点で見直す動きが出てきている。加賀
藩についても、文化振興に力を入れた雄藩という従来の見方に加え、全国一の塩硝産地である五箇山を抱えた「軍事大国」の側面があったことに注目し、新たな光を当てる研究が進んでいる。塩硝の道のルートとゆかりの地をたどるツアーも昨年行われ盛況だった。
ただ、こうした加賀藩秘史は、金沢や南砺以外では、まだまだ知られていないだけに、
五箇山のもう一つの魅力として広く発信する価値は十分にあろう。
現在は、同じ合掌造りでも、白川郷を訪れる観光客が年間約百四十万人なのに対して、
五箇山は約七十万人前後で推移しており、東海北陸道の全線開通に伴い、知名度の点から、白川郷に立ち寄っても、五箇山は通過しかねないと心配する声も出てきている。
合掌造りは外見では違いがないように見えるが、家屋の構造は集落によって多様であり
、塩硝を作るため床を高くする構造も見られる。五箇山独自の合掌造りという点を強調すれば、塩硝と相まって新たな魅力付けになるのではないか。
今年は七月に地元NPOが発案した初の「五箇山音楽祭」が開かれ、広域から多くの人
が訪れる見通しである。こうした場を利用して「塩硝の集落」としての顔もアピールしたい。さまざまな分野で広域連携する金沢市や南砺市もまた、塩硝の視点で五箇山を後押ししてもらいたい。