「療養病床削減は救急医療を圧迫」

 療養病床削減問題の解決を目指す自民党の「療養病床問題を考える国会議員の会」(会長・中山太郎衆院議員)は5月14日、衆院第一議員会館で会合を開き、国が進める療養病床削減政策について厚生労働省の担当者などと意見交換した。この中で、議員や現場の医師は「療養病床がなくなると、患者の受け入れ先がないために、救急病院と救急車が患者でいっぱいになってしまう」などと訴え、療養病床削減が受け入れ不能などで疲弊している救急医療をさらに圧迫することへの懸念を示した。

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 意見交換では、東京で介護療養型病床などを運営する信愛病院の桑名斉院長が、救急医療の受け入れ不能が発生する要因として、急性期治療を終えた患者の受け入れ先がなくなっていることを挙げた。桑名院長は「救急では、運び込まれた高齢者が次に行くところがなければ受けられない。次に行くところは一般病院で、その次は老健(介護老人保健施設)か療養型の病院。そこも減らされて再編が進み、受け皿がない」と指摘。在宅の受け皿を整備しないまま進めている療養病床削減が、救急医療の混乱に拍車を掛けていると主張した。その上で、「療養病床問題の中で大きく占めている問題だ。救急医療と療養病床問題が大きくリンクしているということを認識して解決に持っていかなければ」と述べた。

 松島みどり衆院議員は、療養病床がなくなることで、在宅からの救急搬送が増加することへの懸念を表明。「医療費を削減しないといけないのは分かる。だが、療養病床をなくすことによって、もっとコストが掛かる救急病院が満員となり、救急車もいっぱいになる。そうすると交通事故や労災という、若い人たちを運び込む余地がなくなる。言い方は悪いが、損得ずくで言っても、救急病院と救急車がいっぱいになることを考えれば、介護療養型の方が安上がりだ」と述べた。また、「都会の議員への陳情は、道路でも港でも何でもない。『うちのじいちゃんを何とか、何か月か入れてくれる病院を探してくれ』と、そればかり。これがみんなあふれたら大変。世の中の人はまだ知らないが、明るみに出てきたら大変なことになる」と強調。後期高齢者医療制度のような失敗を繰り返さないよう対処してほしいと主張した。

 福岡県で療養病床や回復期リハビリテーション病棟などを運営する原土井病院の原寛理事長は、療養病床から転換する介護療養型老健を創設しても、救急医療の需要は「確実に増える」と懸念した。また、「医師や看護師がおらず、いたとしてもオンコールだというので、当てにならない。救急病院でみとることになる。そうすると、今の5倍、10倍というコストが掛かり、かえって医療費が上がる」と述べた。

 厚労省側は介護療養型老健についての説明などをするにとどまり、療養病床削減が救急医療に及ぼす影響などに関しては一切触れなかった。


更新:2008/05/14 21:34     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。