SSH探究生物                     SUPER SIENCE HIGH SCHOOL TOYAMA
『甲殻類の分類系統学実習』

日時:平成17年11月5日 11時〜17時

場所:東京都立戸山高等学校 生物実験室および生物講義室
 
対象生徒・人数:1年生5名、2年生3名、3年生7名、教員など6名 計21名

実施内容:
<事前指導>
 前日の授業2時間を使って、人為分類と系統分類、分類の体系、種の定義、学名、界の区分、動物の体制と系統についての講義を行った。また、発展的内容として、節足動物の起源と体制についての概説、体節ごとに異なる遺伝子が発現することによって節足動物の体制が作られることの解説を行った。

<当日の概要>
 午前中は、シラス干しの中に混じっている甲殻類の幼生を観察することによって、個体発生と系統発生(進化)が密接に関係することを実感させた。カニのゾエア幼生、メガロパ幼生、シャコのアロマ幼生、アミ類、コペポーダ、ウキヒシガイ、稚魚など他種類の生物を観察でき、生物多様性を実感できた。
 午後は、まず甲殻類の分類体系と多様な甲殻類が共通の体制を持っていることを具体的に説明していただいた。
 次に、十脚類の基本体制を、エビの脚を一つ一つはずしながら確認し、さらに、一見体制の大きく異なるカニでも同様であることを学んだ。最後に、ミトコンドリアDNAによる系統樹と形態による分岐分類による系統樹の比較をしていただいた。

<生徒の反応>一見大きく異なるものが、基本構造を学ぶことで同じに見えて来るという体験をして興味関心が強く喚起された。

アンケートの結果:各項目の5段階評価の平均値

全体満足度 実習前後の説明は理解できたか 実習内容を理解できたか 進化や分類への興味関心高まり 生物学への視野は広がったか 生物学全体を積極的に学ぼうと思ったか 生物以外の教科をもっと学ぼうと思ったか
4.3 3.8 4.0 4.4 4.2 4.4 3.8

感想の例
・エビ・カニ・ヤドカリなどの甲殻類が、詳しくみると、構造が似ていて、全く別の“種”であっても、共通性をもっている。今までの生物の授業は“生物の性質”を中心に勉強してきたので、今回は“生物”そのものを扱った感じがして、生物に対する見方が多次元になったと思う。

・進化と分類に対して、今までちゃんと触れる機会がなくてよくわからなかったけど、話を聞いてとても興味がもてた。普段特に何も考えることなく、えびの足やら殻をむいて食べていたけれど、様々な足の構造や、その機能、進化の考え方を学べて良かったと思う。シラスの中に驚くほどいろいろな生物が混ざっていて驚いたし、同定するのも面白かった。様々な系統図を見たりして、英語を勉強しなくてはいけないと思った。

・分類の仕方や、同じ甲殻類でもいろんな相違点や類似点があってそれぞれがうまく自分の生活に適応していることがわかった。

当日の様子


シラス干しの中に混じっているカニの幼生などを探しているところ。 シャコのアロマ幼生。カニのメガロパ幼生同様頭部に突起があるが、すでに鎌状の脚を持っている。
カニのゾエア幼生。エビのように腹部が長く、エビとカニが共通の祖先から進化してきたことをうかがわせる。長い突起は、プランクトン生活をする上で、沈みにくくするための働きがあると考えられる。 カニのメガロパ幼生。ゾエア幼生の次の段階で、かなり成体に似てきたが、まだ腹部が胸部から離れている。

ウキヒシガイの子供。北海道の流氷の下に生活するクリオネに近い軟体動物。シラス干しの中の生物を調べることで、生物多様性を実感することができる。

深海魚を思わせる幼魚。種名は不明。

甲殻類の体は、各体節に付いた脚がいろいろな形に変形してできている。それを理解するために、エビの脚部をはずして並べているところ。

エビの脚をすべて並べたところ。エビのしっぽも触角も、根元から二つに分かれるという点で基本的な構造は同じだと言うことを確認できた。

エビに続いてカニの構造を調べて、同様の基本構造を持っていることを確かめた。
国立科学博物館の武田先生の説明を熱心に聞いている生徒たち。

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