2008年05月14日
中国は四川大地震をどう報じたか?
――新華社独占報道の功罪
おそらく過去の報道で、ここまで人道的な中国の姿はなかなか見れなかったはずである。埃まみれになったジャージ姿の温家宝の指揮のもと、救出作業にあたる中国の姿は演技ではないので、必然と世界中の同情を買う。いままでにも災害は敵同士が仲直りする契機になっており、例えば、スマトラの津波を振り返っても、ジャカルタ政府とアチェ独立運動家たちははまず停戦した。今回の四川大地震では、ダライ・ラマとのつながりを指摘されバッシングを浴びているカルフールもすぐさま200万元の募金をすると発表している。
とはいえ、今回の地震を通じて改めて浮き彫りになったのは、中国の報道メディア、情報ネットワークインフラの弱さだ。
中国人が地震に関する情報を得るには、まず中央テレビや国営の新華社に頼らなくてはならないが、地震発生からしばらくはテレビにも現地の映像は映らず、現地の携帯がつながらないらしくレポーターも公衆電話から報道していた。中央テレビ局では地震発生からそうとう時間を経た深夜から朝にかけて、ようやく映像がお茶の間にも流れるようになった。
なにより問題なのは、中国地震局のサイトが13日未明まで開けなかったということだ。地震でまずアクセスできなくなったサイトが、地震局のサイトだった、という現実に対してネット上で批判の声が上がっている。地震局の局長は外遊で不在のなか、地震局のサイトも開けないとなると、大衆の怒りも当然だろう。
これには二つの解釈があって、まずサーバーが何らかの理由でダウンして閉鎖されているという可能性。次に、中国政府はこの非常事態に敏感な情報を交錯させたくはないので、独自の見解を発表する恐れのある中国地震局をひとまず新華社の配信ルートの下流においてしまった、ということだ。どちらにせよ、情報の流れが一方通行のために起きる問題だ。
大地震を事前警告した
中国人研究者のブログ
そんな中、脚光を浴びているのがネット上のユーザー参加型の新しいメディアである。中国のネット上の口コミメディアは地震発生直後の状況を成都から伝えていたと言われ、中国に住む者にとっては情報選択に幅をもたせるための貴重なツールとなっているのだ。
第2回 | 中国は四川大地震をどう報じたか? ――新華社独占報道の功罪 (2008年05月14日) |
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第1回 | 情報セキュリティのコストが高すぎることはない (2008年04月14日) |
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