5月13日、国際エネルギー機関(IEA)は、2008年の世界の原油需要の伸びが、従来予想を下回るとの見通しを示しました。IEAは5月の原油市場月報で、08年の世界の原油需要の伸びは、日量103万バレルになるとし、前回予想から同23万バレル下方修正するとともに、再度の下方修正の可能性も指摘しています。
原油の需要が下方修正された大きな理由は、原油価格の高騰と米国景気の減速です。5月12日のニューヨーク原油市場では、米国産WTI原油の先物価格が一時、1バレル=126.40ドルまで上昇し、6営業日連続で史上最高値を更新しています。一方、米国景気は、雇用者数の減少や住宅価格の低下などを背景に低成長が続くと見込まれています。こうした状況であれば、世界の原油需要が低下しても不思議ではありません。
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興味深いのは、世界の原油需要の伸びが下方修正される状況にもかかわらず、原油先物価格は史上最高値を更新し続けている点です。中国やインドといった新興国の原油需要の伸びは堅調に推移しているとはいえ、世界の経済大国でありエネルギー消費国でもある米国の景気が減速しているのであれば、原油価格が低下に転じてよさそうなものです。
原油価格が上昇する要因の1つとして指摘されているのが、投機資金の原油市場への流入です。他資産価格と比べ、原油価格は安定的に上昇を続けており、投資ファンドといった投機資金を運用する立場から考えれば、原油価格への投機は、それなりに合理的な行動といえます。
投機資金が原油価格を吊り上げている、と目にすると、多くの方々は、「投機資金を操る投資ファンドは、けしからん」と非難めいた考えをめぐらせるようです。ただ、投資ファンドは、投資家から預かった資金を合法的に運用しているだけであり、運用行為そのものを非難されるいわれはありません。
むしろ非難されるべきは、原油市場に投機資金が流れる状況を作った各国の金融当局者たちでしょう。米国の中央銀行であるFRBは、サブプライムローン問題をきっかけに政策金利を短期間で3%以上も引き下げ、日本銀行も先行き不透明感を理由に政策金利を0.50%という非常に低い水準に据え置いたままです。
米国の景気減速が指摘され、中国では大地震で相当の被害が発生するなど、世界経済の先行き不透明感は強まるばかりです。こうした状況で、すぐさま利上げを実施することは現実的とはいえないでしょう。ただ、景気の先行き不透明感を理由に、いわゆる低金利政策を続けることは、原油価格の歴史的な上昇といった多くの弊害ももたらすことを我々はよく理解しておくべきと思われます。
村田雅志(むらた・まさし)
●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●
5月13日、国際エネルギー機関(IEA)は、
2008年の世界の原油需要の伸びをどれくらいと予想した?
●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●
日量103万バレル
(前回予想から同23万バレル下方修正)