2008 / 5 / 12
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東証がこの日引け後に発表した5月第1週(4月28日~5月2日)の投資主体別売買動向によると、外国人投資家はこの週、△4008億6500万円の買い越し(3市場1・2部)となった。週間ベースでは5週連続の買い越し、しかも4000億円を超す買い越しは07年7月第1週(△4767億円)以来の記録となる。
この4月28日~5月2日の週。週末2日に日経平均が1月11日以来の1万4000円回復となり、翌週月曜日7日には1万4102円の直近高値を記録するという重要な時期だった。いってみればこの高値形成の原動力が外国人投資家だったわけだ。
その他のセクターの動向をみると、年金基金の運用を受託しているとされる信託銀行が△633億円の買い越し(前週△1044億円)と買いが続いたものの幅は縮小、資金流入が細っている投資信託は▲153億円と売り越し転換(前週△149億円)、年度が替わったばかりで自社株買いが低調な事業法人も▲247億円と連続して売り越し。さらに、個人投資家は▲2653億円と大幅な売り越しとなっていた。要するに、かつての「外国人だけが買っている」というパターンに戻ってきた、ということ。
3月の安値形成過程では外国人は月間1兆2983億円という高水準の売り越しだったが、その後の4月月間と5月第1週で、ちょうど売り越した分を買い戻していることになる。そこらあたりから、市場には「ヘッジファンドなどが売り建てた玉を買い戻しているだけ」という声も少なくない。その根拠とされたのが、4月の4週連続買い越し過程では「買い付け」の絶対金額が膨らまず、単に「売却」金額が減少しての買い越しだったこと。しかし、この5月第1週は営業日数が前週に比べて1日少なかったにも関わらず、買いの金額は増加しており、「買い」そのものが膨らんできていることを窺わせている。
この日話題になっていたのがゴールドマンサックス証券による大手銀行株に対する「買い推奨」レポート。みずほFGは「サブプライムローン関連損失がなくなる09年3月期は大幅な増益になる」、三菱UFJは「柔軟な資本政策を取ることができ、変化に期待」とか。とはいえ、みずほFGなどは3月安値から6割近くも上昇している。「何もこの水準で新規の買いを薦めなくてもいいだろう」(市場関係者)という声が出るほど。
15日の決算発表のピークを通り過ぎないと、企業業績見通しの全体像はまだ掴みきれない。さらに、これまでの例では、ゴールデンウィークが明ける5月第2週以降外国人投資家が売り越しに転換、決算発表一巡後にはそれが鮮明になるケースが多かった。それだけに、ここで本当に強気になっていいのかどうか…。国内投資家の気迷い状態はまだ続きそうだ。
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ストックボイス 取締役副社長 メインキャスター
1951年東京都生まれ。中央大学法学部卒業。75年証券記者となり、以降、取材・報道を通じ、証券市場ウォッチャーとして市場の激動を見続ける。日本証券新聞取締役編集局長、立教大学非常勤講師などを経て、(株)ストックボイス副社長COO。
【主な著書】
「ケイタイ電話で始める株入門の入門」、「ネコでもわかる株の売買入門の入門」、「経済のことが面白いほどわかる本」(以上、中経出版)
【レギュラー執筆】
日経ホーム出版「日経マネー」、毎日新聞社週刊エコノミスト増刊「投資の達人」、角川SS「マネージャパン」、ほか多数