【大紀元日本5月13日】 「2010年資本主義大爆裂」「チベットの核 チベットにおける中国の核兵器」などの著作で知られる、桐蔭横浜大学のぺマ・ギャルポ教授は12日午後、都内永田町の参議院議員会館内で「チベット問題から学ぶ中国の覇権主義」という講演を行い、チベット問題の専門家という立場から、チベットに対する中共の同化政策やその文化的収奪、現在置かれている苦境と解放軍進駐後の血塗られた歴史的経緯について語り、さらに延長した問題としてその根本的な解決の鍵が中国国内の民主化と信仰の自由にあると指摘した。
ぺマ教授は始めに「チベットの雪山獅子旗は、1910年代に日本の学者・青木文教先生が日章旗を元に発案したものであり、その軍備と訓練も日本人の矢島保次郎先生がなされた。ゆえに日本人は、このチベット問題に浅からぬ因縁がある」と指摘、極東の民主国家として日本人に覚醒を促すとともに「先の長野でのトーチ・リレーで抗議をしたチベット人がテロリストとして現在も日本の警察当局に拘束されているのは、明らかに中共側の圧力によるもので、これこそが覇権だ」と批判した。
さらに「今年の3月14日のラサ暴動は、表面的な現象で、その根は1959年3月10日のラサ蜂起にまで遡る。当時、チベットにはすでに中共軍が進駐していたが、軍内で余興をやるという名目で、ダライラマ法王を警護なしで招聘した。これは、チベットの元首に対する非礼であり拘束の狙いがあったので、チベットの住民らが蜂起して結果としてダライラマ法王がインドに亡命したのがそもそものきっかけだ」と述べた。
さらに1950年の中共軍40万人のラサ進駐の名目について、北京政府はチベットの解放だとしているが、「農奴の解放といってもチベット人の7割は遊牧民であるし…帝国主義からの解放といっても、当時チベットに居留していた白人は5人しかいなかったのだし…一体何の解放なのか」と北京政府の「解放」に疑問符を投げ掛け、「中国の五星紅旗は、中国人、モンゴル人、ウィグル人、チベット人、満州人の五族統一を謳っており、その実、中国人以外の民族がもっていた元々の領土はその63%にも及んでいた」として、中国人自体の膨張する人口、他民族の広大な領土と豊富な地下資源の奪取が根底にある問題だとの考えを示した。
「…50年代後半からは、中共は、チベット密教らの関係者を人民を騙し、迷信に陥らせる非生産的な集団であると位置付け、僧侶を逮捕し寺院を破壊し、文化的な収奪を始めた。さらには、2006年に西蔵鉄道が開通してからは、経済的な搾取が始まり大量の漢民族が移民するに至っては、移民自体を自発的に申し出れば中共政府は、罪状を許し刑務所から所出させ、さらには融資までしている。胡錦濤は、チベットの第一書記のときに4年間で9カ月しかチベットにいなかったが、志願する中国の学生らは愛国心に燃え、中央のインセンティブをもらってやってくる」と人の津波に困惑した様子だ。
「…北京政府は、2001年に五輪を招致しようとした際に、国内の自由化・民主化の促進を約束したはずだったのに、五輪が近づいた今年になって、中央政府に異論を唱える文筆家や言論人を続々と逮捕している。これでは約束が違う」と糾弾、「チベットの聖地であるヒマラヤにトーチをはしらせ、チベットカモシカとパンダを五輪のシンボルマークにするとは、既成事実を作ろうとしているのか…日本の総理は、パンダが人命よりも大事に思ったのか、あのパンダはチベットのものなのであって、中国のものではない」とチベットのお株を奪われたことに立腹だ。
「…中共軍のラサ進駐から49年、その間にチベット人120万人が不慮の死を遂げた。その内訳には、戦死、強制収容所での獄死、自殺、餓死など色々であるが、完全なチベット人の家族というものがない。私自身の家族では、兄二人と祖母を失っている。上の兄は銃殺であったが…彼はある意味幸せであった。下の兄は飢え死にしたが、人からきいた話だが、死の直前に自分の排せつ物を食べて命を繋いでいた」と無念を滲ませて言葉を詰まらせた。
現在、チベットの天然資源には豊かなものがあり、パンダやカモシカなどの野生動物は元より、漢方薬として有名な冬虫夏草、日本人が好む松茸、更には携帯に使用するリチウムなどは世界の半分の埋蔵量が発見されており、「…もし北京政府が、完全な自治を許すなら、経済的には十分に自立でき、極東のスイスとしてやっていける」と自信を覗かせた。
「…先の長野トーチ・リレーでは、中国人留学生が大量に動員されて自己を解放していたが、彼らにとってはいい経験になった。なぜなら、中国国内で集会をすれば当局に取り締まられるからだ。これら若い中国人留学生の自由への憧れが、やがては中国を(民主的な方向へと)変えていくだろう」との希望的観測を示すと同時に、「…しかし、中国全土のわずか37%にしかすぎない中国人12億人をいかに養っていくかは、地球全体の大問題だ」との認識を示した。
「北京政府の常々唱えているチベットの解放は、実は北京政府が独自に発案した歴史の捏造なのであり、その真の犠牲者はマインドコントロールされている中国の一般大衆だ」とし、報道統制によりチベット問題自体が存在するのかどうか知らない中国民衆も数多くいると指摘、現在中原で行われている法輪功の弾圧もチベットのそれと全く同じものであり、中国自身の信仰の自由の問題だとの認識を示した。
「チベットの僧侶は、瞑想をすると健康に悪いと中共から指導されたが、これは共産主義思想以外は許可しないということである」と述べ、「世界の独裁国家であるスーダン、ミャンマー、北朝鮮などの裏には、必ず中共政府がついている…しかしその死に体の中国経済に点滴を打っているのは、米国、日本、韓国、台湾といった環太平洋の民主国家だ」と指摘、「悪者をほう助することもまた罪だ」との考えを示し、「胡総書記は来日した仏閣で(悪人として)罪を償えば良かった…」と述べた。
ぺマ教授は、「異なる宗教を信じる人が混在できる信仰の自由がある社会、自分の運命を自分で決められる選挙のある社会は素晴らしい」とし、中国も国民一人一人が世論を武器にこれらを目指す「人民解放軍」となってもらいたいと表明、今回の日中会談で日本の福田総理がチベット問題を取り上げたのは評価できるが、チベット自体の情報が十分に日本に伝わっていないのは、「チベット人自体にも問題がある」と自らを訓戒した。
(記者・青嵐)
(08/05/13 05:50)
|