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逃ぐる者道を選ばず

2008年05月14日

 世界の主要株式市場の動きに安堵(あんど)感が見える。欧米金融機関のサブプライム関連の損失2600億ドル(約26兆円)、邦銀の損失も伝えられるところでは1兆2千億円に達した国際金融危機が小康状態に入るとの期待が広がっているからだが、本当だろうか。

 4月末の政策金利引き下げで米連邦準備制度理事会(FRB)はこれまで7回、下げ幅は合計で3.25%に達する信用収縮回避策を講じた。また、日欧主要中央銀行と連携し、世界的に資金供給を拡大した。市場原理を重視する伝統を曲げて、大手証券のベアー・スターンズの救済に手を染めた。

 FRBとしては打つ手は打ったから、あとはドル安による輸出ドライブや緊急減税措置の効果など、ウォール街は、下半期の景気回復に期待をかける。

 しかし、焦点はドル相場の行方だ。信用収縮危機処理には効果的でも米金利の低下は、ドル安の流れを加速する。ドル安は高騰している原油や輸入品価格をさらに押し上げ、インフレ圧力となって米経済を直撃する。

 さらに、ドル安は輸出国にデフレ効果をもたらすだけではない。日、中、産油国などに蓄積された膨大な公的資産や世界にだぶつくドル建て投資資産は目減りする。早めにドルを使い穀物や原油などの投機に走れば、世界の商品相場を一段と押し上げ、インフレを世界に蔓延(まんえん)させる。ドルからユーロへの乗り換えも進み、国際通貨としてのドルの信認を揺るがす。

 ウォール街にも利下げも今回で打ち止めにしないと、と気をもむ友人もいる。「逃ぐる者道を選ばず」のような、世界的なドル離れに歯止めをかける方策を早急に立てるのがサミットを控えた主要国の急務だ。(昴)

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