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【Re:社会部】対中国 宗教界の「沈黙」
「中国に遠慮があるんじゃないですか?」
知り合いのカトリック幹部に尋ねたところ、答えは「やはりそう見えますか…」。
いつもは人権や宗教問題に積極的に発言するカトリックが、チベット問題には消極的です。ローマ法王は当初こそ事態憂慮を口にしましたが、その後は沈黙。
バチカンには中国との国交がありません。関係を改善し、念願の大陸布教に乗り出したいという思いが、消極姿勢の背景にあるという見方がもっぱらです。
日本の宗教界も、いくつかの宗派は抗議の声をあげたり、行動を起こしていますが、全体的には消極的といえそうです。
「同じ仏教者への弾圧」を理由に、聖火リレーの出発地を返上した善光寺の決断は、傑出かつ例外的。日頃、中国とのパイプを強調している宗派や教団ほど中国政府との関係を気遣い、無関係を装っています。いつも声高に叫んでいる不殺生、非暴力、対話といった精神は、チベットには関係ないのでしょうか。
遠藤周作の代表作に、宗教弾圧を描いた『沈黙』があります。神は沈黙を保ちながらも、弾圧を受けた宗教者とともに苦しんでおられました。
今回の宗教界の沈黙。遠藤作品とは異なり、利己的な沈黙に思えてしまうのです。(卓)