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初音ミクにローゼンメイデン…合成音声に期待
パソコン上で自由に音声を合成できる技術を利用した商品やサービスの開発が相次いでいる。ユーザーが作成した歌詞や楽曲を仮想アイドルに歌わせるソフトや、人気アニメのキャラクターに自由にせりふを話させるサービスが登場。ネットの動画投稿サイトで話題を呼び、爆発的な人気を集めている。音声合成技術の高度化やパソコンの処理性能向上が可能にしたサービスで、新たなビジネスにつながると業界の期待も高い。
<開始10日で9000人が参加>
クリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)が平成19年8月に発売した「初音ミク」は、同名のキャラクターに、ユーザーが作曲・作詞した歌を自由に歌わせることができるソフトウエア。もともとの声は実存する声優のものだが、ヤマハが開発した独自技術を使い、声優の声を合成し自在に楽曲を歌わせることができる。
合成された音声のなめらかさや、初音ミクのキャラクター人気が後押しし、「ニコニコ動画」や「ユーチューブ」などネットの動画投稿サイトで作成された楽曲などが公開され、爆発的な人気を呼んだ。クリプトンでは昨年12月に、2人組ユニットが楽曲を歌うソフトも発売。市場拡大に意欲を見せる。
NECビッグローブも同12月に、TBSの深夜テレビアニメ「ローゼンメイデン」に登場する人気キャラクター「真紅」に、自由にせりふを話させることができる実験サイト「アリス・プロジェクト」を開設した。
ローゼンメイデンは、麻生太郎前外相がファンだったといわれ話題を集めたアニメで、放映終了後1年半も経ているにもかかわらず、開始10日あまりで約9000人ものユーザーが登録した。
アリス・プロジェクトは、NECビッグローブの杉浦淳パーソナル事業部マネージャーが考案。社内の新規プロジェクト支援プログラムに承認され、昨年6月からサイトの開設準備を始めていた。
サイトにはNEC中央研究所が開発した音声合成技術を利用。NECはこれまでも音声合成技術を駅の案内などに提供していたが、「単語やイントネーションなどの表現が高度化しており、エンターテインメント分野での展開が可能かと考えた」(杉浦氏)という。
<動画共有サイトでブレーク>
両社のサービスに共通しているのが、ユーチューブ、ニコニコ動画といった動画投稿サイトで人気に火がついたという点だ。
初音ミク関連の投稿動画数は、同12月末時点でニコニコ動画で約1万2000、ユーチューブでも約4000にのぼる。
アリス・プロジェクトでも動画投稿サイトでの紹介のほか、ネット上の掲示板でさまざまな音声合成ができる“裏技”が公開されたり、複数のユーザー同士が参加を呼びかけ、一つのストーリーを作るような遊びがはやりつつあるという。
高度な作品の作成が簡単になっただけでなく、動画投稿サイトの登場で作品を公開し自慢できる場ができたことで、利用者の楽しみが増幅しているというわけだ。
<新規ビジネスへの期待>
音声合成技術を活用したサービスの人気の高まりで、新規ビジネスへの可能性がでてきた。初音ミクはすでにソフトとして爆発的な人気を得ているが、ビッグローブの方は現時点では無料サービス。収益化について同社では「携帯電話の着信音やネット上のキャラクターへの音声提供、放映中のアニメのプロモーションなどにも活用できるのでは」(杉浦氏)と期待を示す。
これまで音声合成技術は駅や電話応答への利用など、企業のコスト削減のための使われ方が主流だったが、利用者が参加しコンテンツを生み出す「ウェブ2・0」の新たなサービスツールとして、開発企業側が考えもしなかったような活用方法が誕生するかもしれない。