ねじれ国会で政府・与党が出した結論は民意とねじれている。一般財源化と言いながら、道路財源を維持する改正特例法が衆院で再可決された。国民は納得しないだろう。信を問う時ではないか。
政府は道路特定財源の使い道を幅広くするため、来年度からの一般財源化を午前に閣議決定した。が、午後に与党はその信憑(しんぴょう)性を疑わせる特例法を、参院での否決を翻す衆院再可決で成立させた。
閣議決定は来年度から特例法を適用させないとしており矛盾はない、と政府はいう。伊吹文明自民党幹事長は「再可決は国政、国民を守っていくためだ」と語った。閣議決定とそぐわない法律を国権の最高機関である国会が追認する。これはいかがなものか。
今国会では、国土交通省による道路財源のでたらめな使途や、採算度外視の道路整備が浮き彫りになった。事業費の積算根拠に古いデータを使う杜撰(ずさん)さも判明した。世論の批判に押される形で福田康夫首相が明言せざるを得なくなったのが一般財源化の約束だった。
閣議決定では、ガソリン税などの暫定税率について「環境問題への国際的取り組み、地方の道路整備の必要性などを踏まえ、今年の税制抜本改革時に検討する」とした。道路整備中期計画の十年から五年への短縮なども盛り込んだ。
今秋に本格化する税制改正論議では、基礎年金国庫負担の引き上げへ消費税率アップが焦点となる。これには近づく衆院選を前に与党で慎重論も根強い。消費税の扱いとともに一般財源化がうやむやになる可能性は少なくない。
一般財源化が実現しても、財布のひもを握るのが国交省から財務省に移るだけでは、無駄遣いが続く実態はさほど変わるまい。政府は週内に関係閣僚会議を開く。「生活者財源」を掲げる首相は道路族の圧力をはね返して、政策の優先順位を提示できるかどうか。
「約束をたがえることがあれば、自民党に明日はない」と語った首相である。発言の真偽が近々問われよう。
与党内には今回の再可決で今国会は終わったとの雰囲気も漂う。低支持率の逆風に今は身をすくめるしかないとして、衆院解散は来年のサミット後という声が強い。
再可決について国民の声をぜひ聞いてみたい。民意を置き去りにしたままでは、与党はいずれ大きな代償を支払うことになる。
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