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【社説】

中国大地震 災害救済に協力したい

2008年5月14日

 中国四川省で起きた大地震は死者が一万人以上に達する悲劇となった。多くの地震に見舞われる隣国として、被災者の救援はもちろん地震への対策や対応の知恵を伝え、復旧を支援していきたい。

 十二日午後、四川省中部を震源に強い地震が起き、周辺に壊滅的な打撃を与えた。陝西、雲南など七省と重慶市で大量の死者を出し、なお大勢の人々ががれきの下で生き埋めになっているという。

 揺れは遠く離れた首都・北京や上海のほか、台湾やタイでも感じた。中国では四川、雲南省などで、よく地震があるが、他の地域では地震を体験したことがない人も多い。

 さぞ、大きな衝撃を受けたことだろう。犠牲者への哀悼の意を表すとともに、被災者に心からお見舞いを申し上げたい。

 中国政府は人民解放軍の部隊を大量動員し救援に全力を挙げ、温家宝首相も現地入りして活動を陣頭指揮している。外国の助けなど必要ないと言うかもしれない。

 しかし、日本をはじめ数多くの地震災害に見舞われた国々は救援活動の経験が豊富で医薬品や機材の準備も整っている。国際支援を受け入れ、一刻も早く被災者を救援してほしい。

 大地震で中国の地震対策や社会基盤整備の問題点が明らかになったことも指摘せざるを得ない。

 例えば、今春からデジタル地震観測ネットワークが稼働したのに地震の一報は米国の地質調査所の発表に先を越された。大都市を中心に建物の耐震設計を進めているが、多くの公共施設が倒壊した。

 学校校舎が崩れ、大勢の子供たちが亡くなったのは痛ましい限りだ。農村学校教育の公費負担実現が遅れ、村や農民に負担を求めてきたことと関係はないのか。

 世界の大地震の二割以上が起きている日本は多くの地震災害に見舞われ、対策に苦労してきた。

 地震観測から耐震設計、避難の方法まで日本が中国に協力できることは多い。地震対策の協力こそ、先日の胡錦濤国家主席の来日で合意した「戦略的互恵関係」の具体化ではないか。

 中国は一九七六年の河北省・唐山の地震で二十四万人の犠牲を出しながら公表が遅れ国際社会の救援が及ばなかった体験を持つ。

 被災者救援の遅れは地震対策への不満と結びついて社会の動揺を招きかねない。八月の北京五輪を控え重要な時期に国際社会と手を携え困難を乗り越えることは五輪の成功にもつながるはずだ。

 

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