中国・四川大地震による犠牲者は1万2000人を超え、被害が拡大している。被災者の一刻も早い救出と災害復旧に向け、中国政府は国際的な人的支援もためらわずに受け入れ、試練を乗り切ってほしい。
12日に起きた直下型大地震の震源は、四川省の省都・成都から北西約150キロのアバ・チベット族チャン族自治州ブン川県だ。被害は同省だけでなく重慶市や陝西、甘粛、雲南各省など広範囲に及ぶ。2万3000人以上が生き埋めとの情報もある。
成都ではトヨタ自動車の合弁工場が生産停止するなど、日本企業にも影響が出た。死者24万人と20世紀最大の地震被害となった1976年の唐山大地震以来、中国の地震では最悪の事態になりそうだ。
福田康夫首相は「必要であればできるだけの支援を行う用意がある」と表明、日本政府は5億円相当の緊急支援を決めたほか、医療チームの派遣などを検討する構えだ。米国をはじめ周辺のロシアや台湾など国際社会は救援を申し出ている。
唐山地震当時、中国は文革中だったこともあり、「自力更生」を理由に国際的な援助を断った。今月、大型サイクロンに直撃されたミャンマーの軍事政権も外国救援チームの入国をかたくなに拒み続けている。
中国外務省スポークスマンは13日の定例記者会見で、各国からの救援について「衷心からの感謝と歓迎の意を表明する」と述べた。現場で陣頭指揮している温家宝首相が「1秒早ければ1人の人命を救える」と救援隊員に指示したように、中国政府は速やかに国際的な救援チームなど人的支援も要請すべきだ。
今回の被災地は3月のチベット騒乱が波及したチベット族が多い地域と重なる。チベット問題を解決するためにも、中国政府は救援・復旧作業と並行してダライ・ラマ14世側との対話を継続するよう望む。
8月の北京五輪を控え、中国は今年、半世紀ぶりの大雪、そして大地震と2度の自然災害に見舞われた。
くしくも地震発生当日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇と高水準だった。今回の地震がインフレを加速する懸念もあり、中国指導部は細心の経済運営も迫られる。