道路特定財源を10年間維持することを定めた道路財政特別措置法が、衆院で3分の2以上の多数により再可決され、成立した。2009年度から全額一般財源化するという福田康夫首相の方針との矛盾は明らかだ。法案を修正せずに、原案通り成立させたのは遺憾である。
今後は自民党の道路族議員らが一般財源化を骨抜きにする動きを強めることが予想される。首相は党内の抵抗を断固排して一般財源化を成し遂げる覚悟が要る。
再可決に先立ち、政府は13日の閣議で特別措置法の関連規定が「09年度からは適用されない」ことを明記した道路特定財源等に関する基本方針を閣議決定した。
一般財源化を検討するための閣僚会議の設置や、総額59兆円に上る道路整備中期計画の期間を10年から5年に短縮し、新たな計画をつくることなども盛り込んでいる。
自民党内ではいまだに一般財源化に反対する声がくすぶる。しかし一般財源化は首相の公約だ。これが頓挫すれば、支持率低迷にあえぐ福田内閣が行き詰まるのは目に見えている。それにとどまらず、自民党は次期衆院選で計り知れない打撃を受けることになるだろう。
政府・与党の今後の検討作業の焦点は一般財源化の中身である。ガソリン税を一般財源にするだけでは不十分だ。
一般財源化の意義は無駄な道路の建設をやめることにある。だが、道路族議員は「必要と判断される道路は着実に整備する」との閣議決定を盾に道路に従来通りの予算をつけるよう求める構えだ。こうした圧力に屈してはならない。
そのためには、新しい道路中期計画をどうつくるかが重要になる。費用に見合った効果があるのかという観点から、適正な需要推計に基づいて建設を厳しく絞り込むことが求められる。既存の計画は過大な需要推計に基づいているとの批判が多い。
道路建設を減らせば地方経済に悪影響が及ぶとの声もある。しかし地方のニーズがあるか定かでない道路に予算を付けるより、地方が自由に使えるおカネを増やすのが筋だ。
一方、ガソリン税を一般財源化する際には、ドライバーなど納税者に納得のいく説明をする必要もある。
ガソリンへの課税は二酸化炭素(CO2)の排出を抑制し、温暖化防止に役立つとの見方が多い。だが、ガソリンだけを対象にすべきなのか、税率はこれでいいのかなど様々な論点がある。首相の説明能力が問われることになろう。