だれもが矛盾があると認めている法案が結局、まかり通ってしまった。もちろん、13日の衆院本会議で与党などの3分の2以上の賛成多数で再可決され、成立した改正道路整備財源特例法である。
改めて指摘しておく。改正法は道路特定財源を今年度から10年間維持する内容だ。一方、これに先だち、政府が閣議決定したのは道路特定財源を09年度から廃止し、一般財源化する方針だ。矛盾とはそれだ。
これまでも閣議決定が後にほごにされたり、法案化の段階で骨抜きになった例はある。だからこそ、毎日新聞は一般財源化の道筋を確たるものにするためには改正法をきちんと国会で修正するのが筋だと再三主張してきたのだ。
衆院での再可決は福田政権では3度目となる。憲法の規定に基づくとはいえ、再可決は乱用すべきではないとも私たちは指摘してきた。ましてや、今回は矛盾を抱えたままでの再可決だ。これで納得しろという方が無理である。
なぜ、修正ができなかったのか。与党側は野党が反対し、成立させるには再度、60日間かかり、地方財政に影響するからだという。
確かに民主党の対応にも疑問は残る。与野党でまとまってしまうと衆院選の争点にならなくなると考えているのだろうか。一般財源化という点では一致しているにもかかわらず、協議に応じようとしなかった。
しかし、与党側も真剣に協議を呼びかけたわけでもない。これでは、いくら閣議決定したといっても、法案化に向けた本気度を疑われても仕方がなかろう。
今回の閣議決定でも「必要な道路は着実に整備」と明記されており、一般財源化の結果、社会保障や教育など本当に必要な分野に予算がどの程度回るのかは定かでない。ガソリン税率も今年の税制抜本改革時に検討するというだけだ。
国会審議で次々と明らかになった税金の無駄遣いをどうやってやめるのか、対策は不十分なままだ。実質的には議論は先送りされただけだともいえるのだ。
民主党など野党は福田康夫首相に対する参院での問責決議案提出は当面見送るという。国会審議を通じて政府・与党と対決していく姿勢はいいとしても、野党側も関心は後期高齢者医療制度の問題に移ってきているのが実情だ。
道路問題はこれで一段落との空気が政界全体に流れてはいないか。支持率低下にあえぐ福田首相が解散・総選挙を秋以降に先送りするとの見方が強まり、このままでは6月15日までの今国会は、消化試合になるとの声まで聞こえる。
一般財源化はようやくスタート台に立ったというべきである。これで幕引きなどになれば、これまでの議論は何だったのかということになる。
毎日新聞 2008年5月14日 東京朝刊