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2008年5月14日

◎JRが文化講習会 企業市民実践の第一歩になる

 JR西日本金沢支社が駅員を対象として初めて開催する加賀百万石文化の講習会は、「 ふるさと教育」の企業版とも言うべき取り組みであり、単なるサービス向上以外の効果も期待できそうだ。講習会への参加を重ねて自分の働く地域の文化や歴史を知れば知るほどに、地域への愛着は深まろう。そうなれば、地域の「玄関口」である駅で観光客らにいい第一印象を植え付け、地域イメージを向上させたいという意識も当然、強くなるだろう。

 JR西日本金沢支社は、金沢経済同友会が提唱した「企業市民宣言の会」に参加してい る。「企業市民宣言」の三つの指針の第一番目が「地域を学ぼう」であり、講習会は、文字通り企業市民活動の実践の第一歩と言えよう。

 講習会では、金沢市の観光ボランティアガイド「まいどさん」やひがし茶屋街のおかみ らが講師を務めるが、多様化する観光客らのニーズに応えるためには、知識はいくらあってもよいはずだ。北陸新幹線の金沢開業を見据え、講習会をきっかけにして、自らプラスアルファを学ぶ空気を根付かせていく必要もあろう。さらに深く地域のことを知ろうと努力する駅員の一つの目標として、たとえば金沢検定を活用するという発想もあっていい。

 駅に加えて、空港やインターチェンジなども地域の「玄関口」であり、それらと観光地 を結ぶバス路線などもまた、広い意味では「玄関口」の一部と言えなくもない。それらにかかわる企業も、JR西日本金沢支社の取り組みを参考にしてもらいたい。

 駅は鉄道、空港は航空機、インターチェンジはマイカーや高速バスなどの「玄関口」で あり、価格やスピードを武器に日々競争している。ただ、競うべき点はそれだけではあるまい。もてなしの質を高め、地域のイメージアップにつなげる工夫でも大いに競い合ってほしい。直接その恩恵を受けるのは主に外部の人間かもしれないが、「ふるさと愛」を強く持ち、自社の利益ばかりではなく地域の発展も考えながら働いている社員が多い企業は、地元住民にも支持されるはずである。

◎道路財源一般化 閣議決定の重みを肝に

 道路特定財源を〇九年度から一般財源化する福田内閣の方針が閣議決定された。戦後税 制を大きく転換するものであり、政府・与党は閣議決定の重みを肝に銘じてもらいたい。道路整備費財源特例法改正案を衆院で再可決するための、単なる「方便」だったなどと言われないようにしなければならない。

 来年度からの一般財源化を閣議決定する一方で、道路特定財源を今年度から十年間維持 する道路財源特例法を再可決するのは理屈に合わない、ちぐはぐな対応であるが、今年度の予算執行を可能にするための緊急避難的な措置ということもできる。これにより、自治体が待ち望む地方道路整備交付金が配分されることになった。

 道路特定財源を一般財源化するという閣議決定は画期的である。閣議は政府の最高意思 決定の場であり、そこでの決定事項は全閣僚と行政組織を拘束する。内閣が政策実行を国民に保証する重いものである。もっとも、閣議決定に反したからといって、法令違反になるわけではなく、閣議決定で一般財源化が確実に担保されたと言い切ることもできない。

 閣議決定は「必要と判断される道路は着実に整備する」ことを明記するなど、いわゆる 道路族議員に配慮する内容になっている。今後の協議いかんで、一般財源化が事実上、骨抜きにされるのではないかとの懸念もぬぐえない。

 四月の政府・与党合意では、道路特定財源制度を今年度限りとし、〇九年度から一般財 源化するために必要な法案を年内にまとめることになっている。この法整備がなって初めて一般財源化が実現する。閣議決定の効力につきまとう一抹の不安を払しょくできるかどうかは福田首相の力次第であり、道路族という「内なる敵」を説き伏せる必要がある。

 また、一般財源化となれば、道路整備を目的にした現在の揮発油税などの意義を根本的 に見直し、再定義しなければならない。暫定税率の在り方を考え直す必要もある。財源の奪い合いにうつつをぬかすようなことなく、税制論議をしっかりやってもらいたい。


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