西暦2037年、化石燃料は枯渇し、世界の3大勢力が軌道エレベーターと太陽光発電システムを独占し、戦いを続けていた。そこに「武力による戦争の根絶」を掲げる私設武装組織・ソレスタルビーイングが現れる。4機のガンダムによるすべての戦争への武力介入が始まったのだ。
「リアルロボット」の原点といわれるガンダムだが、過去のシリーズでは、現実の軍事力のあり方を再現したことは、一度もない。妙に現実味のある戦争がくり広げられるものの、水爆ミサイルを空中で斬り落としたり、昔ながらの「スーパーロボット」だった。
「00」でも、ガンダムは特別の存在に見える。だが、彼らは平凡なモビルスーツの大軍に圧倒されてしまう。現実でも世界最強の米軍が、無敵ではないように。つまり軍事力のあり方として現実的に描写されるようになったのだ。
4人のガンダムマイスター(パイロット)たちも、主人公の刹那は「聖戦」に利用された元少年兵で、青年ロックオンはテロに家族を殺された被害者。虐げられた弱者が、ガンダムという最強の軍事力を手に、理不尽な世界と戦うギャップにすごみがある。
「最強=万能」ではなくなった結果、前半はカタルシスに欠けた感があった。対して後半は、機密情報が漏れ、「ガンダム対ガンダム」が実現して、一見、派手な展開になったが、それさえも現実の「核兵器の拡散」を写しているととらえるのは深読みだろうか。
◇著者プロフィル
多根清史/フリーライター。著書に「宇宙世紀の政治経済学」(宝島社)、「プレステ3はなぜ失敗したのか?」(晋遊舎)など著作多数。
機動戦士ガンダム00 バンダイビジュアル 各6300円(1巻3990円)
2008年5月13日