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ラブホテルから見える日本人の性

ラブホテルから見える日本人の性 第2回

利用者たちの嘘八百に驚いてしまう

金 益見(2008-05-13 17:10)
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 私は批評に弱い。

 『ラブホテル進化論』(文春新書)を出して約3カ月。あちらこちらで考察が足りないやら、海外との比較がないやら色々ご指摘を受ける。そう書かれたり言われたりする度、「すいません、これからがんばります」としか言いようがない。

 ……すいません、これからもがんばります。

 そんな中で、統計的な資料がないというご指摘もよくいただく。しかし、統計資料……ラブホテルにおいての数字的な資料は、実はものすごく信憑性が薄いので、使いたくなかったというのが本音だ。

 まずラブホテルの軒数の曖昧さは、あらゆる施設の中でダントツではないだろうか。正直、軒数が明確に書いてある資料をみると、もうその時点でろくに調べていない、何かの孫引き資料と判断してしまう。

 というのも、今全国には「(登録上)ラブホテルではない(実質)ラブホテル」という施設が蔓延しているのだ! したがって、ラブホテルの数を正式に把握するには、1軒1軒歩いて確認しながら判断するしかないというのが現状である。またその判断基準も、実は明確にはない。

 前回出したような、多少なりとも面識のある学生1人1人に聞き取り調査したものではない、全く面識のない利用者側からとったアンケートなども、嘘八百といっても過言ではない。

 ラブホテルには、会員カードを作る際に書いてもらうアンケートや、部屋を利用した時に書いてもらうアンケートがある。私も何度も見せてもらったことがあるが、パラパラとめくっていくうちに段々と疑わしくなってくる。

 まず、年齢欄に「20歳」と書いている人が多すぎるのだ!(笑)

 どう考えても中年のカップルが、帰り際フロントに出したアンケートに堂々と「20歳」と書いている。何度もたまげたが、ずっと調査しているうちに、大半の人が何かをごまかして書いているということがわかった(それは年齢だったり生年月日だったり、はたまた性別(!?)だったり……人によって異なる)。

 しかし、激しいサービス合戦が昼夜繰り広げられているラブホテル。次々と新しいサービスを提案していくために、客層とそのニーズを把握するのはとても大切なことである。

 例えば、若い学生カップルが多いホテルは「ウェルカムサービス(入店するだけで無料で何かもらえるサービス)」に、腹持ちのよい丼ぶり物なんかを入れるとリピート率が上がるし、不倫カップルが多いホテルは、匂いの残らない石鹸や選べるシャンプーがあると喜ばれる。

 夫婦は、無料貸し出しのエステ機器や枕を増やすと、ダイレクトに良い反応が返ってくるし、高齢者と風俗利用が多いホテルは、逆にサービスしないことがサービスである。

 ラブホテルにとって利用者の年齢や関係を把握することは、サービスの内容を考える上でとても重要なことなのだが、アンケート結果を鵜呑みにしてウケないサービスを次々と提案しては「なんでだろう??」と首をかしげているオーナーさんは多い。

 それでは、どうやったらお客さんの関係を把握できるのだろうか。

 ……それがモニターチェックである。

 ラブホテルには、入り口からパネル前、廊下などにカメラが設置されており、部屋に入るまでのお客さんの様子をバックヤードで確認できる。

 モニターでカップルを観察していく中で、私は独自の判断基準をあみ出した。

 まず恋人同士のカップルは、手をつないでいたり腕を組んでいたり、ホテル内での密着度が道端よりもかなり高い。横並びで仲良さそうに歩いてきて、目に見えないハートをふわんふわん漂わせながら部屋に入っていく(非常に羨ましい)。

 次に夫婦。夫婦は縦並びで入ってきて、縦並びで帰っていく。大体奥様が前で、旦那様が後ろ。百貨店の袋をぶら下げて、出来合いのおかずなんかを持ち込む人が多く、非常に小慣れた感じである。無料の貸し出しグッズを、部屋に入ってすぐに注文するのも大体が夫婦。とにかくラブホテルでいかに得するか! ということなのか……アメニティグッズも全部持って帰る人が多い。

 また、最近のモニターは音声が入るので、会話も重要なポイントになる。

 今ホテヘルやデリヘルという無店舗型の風俗が増えているが、そういうカップルであっても外で待ち合わせて入ってくるため、一見してもわからない。しかし、会話を聞くとすぐに風俗だなと判断できる。始終敬語か(とっても初対面な感じの)、もしくは全く喋らないカップルが多く、ホテルによっては同じ女の子が相手を変えて何度も来店するというところもあるので、よくビックリさせられる。
こんなカップルの利用も多いのです (イラスト 金 益見)

 高齢者同士のカップルは一見してすぐにわかるが、お爺ちゃんと若い女の子という組み合わせが、意外に多いということにも驚いた。そんなお爺さんも、アンケートには48歳とかいう微妙な数字を残していくため、やっぱりアンケートは信用できないなぁとため息をつく。

 そんなわけで、数字の扱いが非常に難しいラブホテル……。上記したのはあくまで独自であみ出した判断基準なので、ひょっとしたらどう見てもお爺さんに見える48歳の人もいるかも知れない。

 まだまだ課題が残されているラブホテル研究。道のりは長いのである……



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