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淫乱で…
作:死に逝く翼



番外編


「え……? 黒、川……?」
 ドアの向こうに立っていた男の姿に、思わず目を瞬かせる。もちろん、見間違いなわけがない。聞き返す必要も、もちろんない。
 私の家の玄関先に立っているのは間違いなく黒川で、ヤツはいつもの調子で軽く手を挙げて挨拶をしてきた。
「よう。何だ、もうけっこう具合良いのか?」
「え? あ、うん……」
 曖昧に頷いたところで、ようやく思考が現実に追いついてきた。
「うあああぁぁぁぁっっーーーー!!??」
 大声で叫ぶと同時に、私はドアを叩き付けるように閉めていた。その大きな音も、私の絶叫にかき消されていた。
「お〜い、せっかく見舞いに来たってのに、何だよ、それは」
 黒川がドアの向こうでぼやく。けれども、そんなことは耳に入らない。私は開けられないようにドアノブを握りしめて怒鳴った。
「ア、ア、ア、アンタっ、そんなとこで何してんのよぉっ!?」
「いや、だから見舞いだって。2日も休んだから、心配したんじゃないか」
「余計なお世話よっ!」
 私は半泣きになって喚き散らした。頭の中では「どうしよう」がグルグルグルグル渦を巻く。
 風邪で寝込んでいた私は、きっとヒドイ顔をしてるに違いない。髪だってボサボサだし、服だってくたびれたパジャマのままなのにっ!
「う〜〜あ〜〜……ちょっと、マジで勘弁してよ」
 ズルズルとその場に崩れ落ちて、私は呻いていた。何だか本気で泣きたくなってきた。
「あのな、何かタイミングが悪かったんなら、帰ろうか?」
「ちょっと待ったぁっ!」
 気を利かせたつもりか、帰ろうとする黒川を速攻で呼び止める。
 いや、こんな格好を見られるのも困るけど、帰られるのも困る。
 だって、黒川が私を心配して会いに来てくれたんだから。それを追い返すなんて、できるはずがない。
「ちょ、ちょっ、ちょ、ちょ〜っと待ってなさいよ? 私が『いい』って言うまで、そこ動いちゃダメだからね? 分かった?」
「はいはい」
 黒川が、呆れ半分だろうけど笑うように答えた。
 けれども、そこまではもう気にしてられない。とりあえず私はドアに鍵をかけると、廊下を走って洗面所に飛び込んだ。


「……うっわ、最っっ低〜〜」
 鏡に映った自分の顔に、ゲンナリとさせられる。
 風邪はほとんど治っているとはいえ、その影響でゲッソリしてて、全然肌にも張りが感じられない。目の周りなんか、もう確認したくもない。髪も服もヨレヨレで、この姿を黒川に見られたのかと思うと、本気で泣きたい。
「あ〜も〜〜誰か〜〜助けて〜〜〜〜」
 ヘラヘラと泣き笑い状態で顔を洗う。
 待たせるわけにもいかないので時間はかけられないけれど、最低限の手入れくらいはしておかないと、とてもじゃないけど会う気になれない。
 大急ぎで洗顔を済ませ、化粧水とローションで肌を整える。仕上げにとりあえずクリームを塗って、顔は終了。
 髪は、まさかドライヤーまで持ち出すわけにはいかないので、軽くブラッシングのみで断念。
 服も着替えたいところだが、病人がパジャマ以外を来てるのもおかしい。というか、さすがに時間が押している。別のパジャマに着替えることもできずに、裾を引っ張って最低限のシワを伸ばすだけで、不本意ながらも良しとしておく。
「よっし! ちったぁ見れるでしょ」
 鏡に映った自分の姿に、とりあえず合格を出す。
 それで逆に気が緩んだのか、急に寒気を感じてブルッと身体が震えていた。
「う〜〜、いかんいかん」
 オヤジくさく呟きながら、私はよれたパジャマを隠すのにも丁度いいやと、カーディガンを羽織に部屋に戻った。


「ふ〜〜ん」
「……あんまりジロジロ見ないでよね」
 部屋に通した黒川をたしなめる。
 結局、ベッドの周りに置いていたマンガや雑誌を片づけたりで、あれから更に10分以上の時間がかかっていたのは秘密である。
「とりあえず、座っててよ。お茶くらいいれるから」
「ああ、いいからいいから、気にするな」
 クッションに座るように促した私に、黒川がヒラヒラと手を振る。
「もう大分いいみたいだけど、病み上がりなんだろ? 見舞いに来た相手に、気を遣うなって」
「いや、でも……」
「いいからいいから」
 黒川はそういうと、私の肩を押すようにして、私をベッドへと連れて行ってしまった。ベッドの前まで来てしまってから、私は肩越しにチラリと黒川を振り仰いだ。
「……いいの?」
「病人は大人しくしてるもんだって」
 何だかくすぐったい感じを受けながら、私はそのままベッドに上がり込んだ。私が脚だけ布団の中にいれて座ると、黒川もベッドの縁に腰を下ろした。
「それで? もう大丈夫なのか、ホントに?」
「……まあね」
 私が答えると、黒川はフッと口元を緩めた。そんな風に見られると、くすぐったいと言うか、何か少し恥ずかしい。
「ところで、親御さんは?」
「え? ああ、父さんはもちろん会社だし、母さんは今日はパート」
「ふ〜ん」
 黒川にとっては何気ない、当たり障りのない、そして当然の質問だったんだろうけど、私は答えた瞬間にピクッと引きつっていた。
 ……ちょっと待て?
 私は今、黒川と2人切り? 自分の家の、自分の部屋で?
 …………。
 うあ〜〜〜〜っ、ちょっと待ってよ。何よ、そのシチュエーションは? マジですか!?
「おい、どうした? やっぱり熱があるのか? 顔が赤いぞ」
「え? あ、あはははは〜、ちょっと動いたからかな?」
「おっと。そりゃ悪かったな」
 我ながら苦しい言い訳なのに、黒川は驚くくらいすんなりと受け入れてしまった。
 いつもなら私の嘘はすぐに見破るはずなのに。まさか本気で心配してくれている?
 ……贅沢だけど、それはちょっと止めて欲しかったり。そんなにされると、罪悪感が湧いてくるじゃないか。
「そうだな。じゃあまあ、横になってろよ。台所、ちょっと借りてくるから」
「え? 何?」
「ふふん。見舞いったらコレだろ?」
 黒川が取り出したのは、白桃の缶詰。
「……黒川って、けっこうベタな時はベタだよね」
「はっはっは。何事も基本は大事にしないとな。まあ、そういうわけだ。横になって待ってな」
 黒川につられて、私の顔にも笑みが浮かぶ。
 私は促されるままに、別にもう全然平気なんだけれども、素直にベッドの中に潜り込んだ。
 黒川が、肩まで布団を引っ張り上げてくれた。
「じゃ、食器とか適当に借りるから」
「……ん」
 私が頷くと、布団の上からポンポンと私の身体を叩いて、黒川は部屋を出ていった。
「……はふぅ」
 ドアが閉まると、ついつい声に出して息を漏らしていた。
 まさか、黒川が見舞いに来てくれるとは思わなかった。たかだが2日、学校を休んだだけなのに。
 おまけに、見舞いの品まで持って。しかもそれを、器に盛りつけるまでしてくれるなんて。
「どうしよう、どうしよう。黒川が優しいよ」
 慣れない事態に、ベッドの中で身悶えしてしまう。
 確かにヤツは意外にマメで、良く気が付くタイプだ。だけど、それを『優しい』という方向で発揮することは、ほとんどなかったように思う。
 それなのに。
「うぁ〜〜、病気っていいなぁ〜」
 ダルさに呻いていた昨日の自分を忘却して、悦に浸ってしまう。掛け布団を抱きしめて、ゴロゴロとベッドの上を転がり回る。
 ああ、これはでも夢じゃないだろうか。風邪で寝込んでいる私の妄想? 黒川に甘えたいっていう私の思いが、熱でもうろうとしてる私に幻を見せてるのか?
「…………」
 一瞬、否定できない自分が悲しかった。
 そうだ。黒川はとことん嫌味なヤツだから、私に優しくするなんてあり得ない。
 ……いやいやいや、でもまさか幻なわけがない。
 だって、現にホラ。階段を上ってくる足音が聞こえてくる。そして……。
 コンコン。
 黒川は、その律儀な性格通りにノックをした。
「ん」
 私の返事を待って、黒川が部屋に入ってくる。私は目元まで布団を被って、黒川の様子を窺った。黒川は、お盆の上に白桃を切り分けたガラスの器を乗せていた。
「起きれるか?」
 ベッドの端に座った黒川に、小さく頷き返す。モゾモゾと起きあがると、黒川はさっき私が脱いだカーディガンを、すぐに掛けてくれた。
(どうしよう、どうしよう。黒川が優しいよ)
 ダメだ。本当に熱が出てきそう。
「はい、どうぞ」
 黒川の差し出す器を受け取ろうとして、私は手を止めた。
 ……今なら、黒川は甘えさせてくれないだろうか?
 ふと閃いたその考えは、試す価値があると思えた。というより、試さずにはいられなかった。その誘惑は、白桃よりも甘く私を惹き付けた。
「どうした?」
 私は答えなかった。
 代わりに、出しかけた手を布団の中に戻し、それから小さく口を開けた。
 黒川が、ククッと笑った。
「はい、あ〜ん」
 おいおいおいおいおいっ! 黒川くんっ、君はマジですかっ!? そこまでノリのいい人でしたかっ!?
 実際にやられると滅茶苦茶恥ずかしくって、ねだった自分を張り倒してやりたくなったけど、だけどっ、だけどっ! うあああぁぁぁぁっ!! ちくしょうーーーっっ!!
 そんな私の動揺をよそに、フォークに刺した白桃を黒川が私の口の前に持ってくる。
「やあねえ、黒川。調子に乗りすぎ」
 な〜んて言えるわけがないっ!
 私は恥ずかしさのあまりに目をきつく閉じて、代わりに口をもう少し大きく開けた。
 唇に、歯に、冷たい白桃が触れてきた。
「……ん」
 甘い。すっごく甘い。
 甘いんだけれども、実は味がもうよく分かっていない。
 頭の芯が、何かさっきからジ〜ンと痺れてる。ふわふわと心地よい。
 ……すごい、幸せな気分。
 あぁ。病気になって本当に良かった。
「美味しいか?」
 答える代わりに、私はまた口を開けた。黒川の差し出す白桃に、今度は自分からかじり付く。
「お。いい食いっぷりだな」
 モグモグと噛みながら、黒川から器を奪う。そして、身振りで黒川に意志を伝える。この器をお盆に戻して、それを脇にやってしまえ、と。
「何だ? 一つで十分なのか?」
 言いながらも、黒川は私の意図通りに動いてくれる。
 ……どうしよう。
 思い付いてやってるはいいけど、さすがにこれ以上は黒川も怒るかな?
 でも、いいよね? この際だし。
 覚悟を決めると、私はチョイチョイと手招きした。ポンポンと私のすぐ脇を叩くと、黒川はそこに招かれるままに腰を下ろした。
「どうした?」
 尋ねる黒川の首に両手を絡め、伸び上がるようにして唇を重ねる。
「んっ?」
 さすがに黒川が驚いたが、でも気にしない。舌を伸ばして、黒川の唇をこじ開けにかかる。
 あるいは半ば予想していたのか、黒川もすぐに口を開いて私の舌を受け入れた。
 私はそこへ、口に含んだままだった白桃を移し入れた。咀嚼した白桃が、スルリと黒川の口へと流れ込んでいく。
「んんっ?」
 黒川の喉が、ゴクリと鳴った。
 絡めた腕の力を緩め、そっと黒川の顔を撫でるようにしながら、両手で黒川の頬を挟み込んだ。
「……美味しい?」
 心臓は、バクバクどころかドドドドっといった感じで響きまくっていた。
 ………………やってしまった。
 怯え半分に、すがるような思いで黒川を見上げる。
 黒川が、しょうがないなあ、といったように笑った。
 私の手の上に、黒川の手が重ねられる。黒川は私の手を優しく握ると、頬から離させていく。代わりに、黒川の身体が私に覆い被さってくる。
 私は黒川の手を握り返しながら、ゆっくりと身体を倒していく。私の身体がベッドに触れた時、黒川の唇も私の唇に触れていた。

 黒川のキスは、桃の味がした。



「ん……はぁっ、あ……」
 唇が離れた時、私はもう完全にスイッチが入ってしまっていた。下がっていたはずの熱が、急上昇していくのが本当に実感できてしまう。瞳が潤んでいくのも、丸分かりだ。
「黒川ぁ……」
 か細く、でも甘えを含んだ声で黒川を呼ぶ。
 ギュッと抱きしめてもらいたい。息が詰まるくらいに強く。黒川を感じたい。全身で。強く。
 黒川は、まず左手で私の髪を撫でてきた。広げた指が、私の頭をマッサージでもするみたいに軽く押し揉んでくる。
 そうしながら右手が、私の腰の下に回されてくる。その感触に、期待に、身体がゾクゾクしてくる。
 黒川は腕に力を入れながら、ゆっくりと身を屈めてきて……。
「ぁ……んんんっ」
 唇は呆気なく離されてしまう。短すぎるキスに、私は不満の声を上げる。
「病み上がりで、無茶はダメだろう」
「もう治ってるってば」
 黒川の首に腕を絡め、唇を奪おうとして、失敗していた。
 私の両手は、私を抱きかかえていたはずの黒川の手で押さえつけられていた。手首を握られ、顔のすぐ脇に固定されてしまう。
 見下ろす黒川の目が、“ニヤリ”と笑うのが見えた。
 ドクンと、心臓が音を立てた。
 ……あぁ、ダメだ。黒川は今、絶対に変なことを考えてる。私を虐めるようなことを。私に恥ずかしい思いをさせるようなことを。
 それなのに……私は、それを、期待してしまっている。
 キスで入れられたスイッチと、また別のスイッチが入ったのが分かった。体温がさらに上昇していく。呼吸が苦しくなっていく。
 下着が濡れるのが、分かった。
「したい?」
「……お願い」
 私の答えに黒川が口元を歪める。それを見ただけで、私はまた下着の染みを広げてしまっていた。
 私は、私を虐めようとする黒川に、たまらなく……興奮させられていた。これから虐められるんだって思うと、それだけで我慢できずに太ももをすり合わせてしまう。
「まあな。こういう展開になるかと思って、念のために準備はしてきてあるわけだ、これが」
「……じゅん、び?」
 その言葉が、ゾワゾワっと私の肌を這い上がってきた。期待がより確かな形になって、私の中で膨らんでいく。いったい何をされる、何をしてもらえるんだろう。
 そんな、期待と興奮で息を荒げる私の前に黒川が差し出したもの。それは、どこにでもある何の変哲もないものだった。
「体温……計?」
 肩すかしを食らった気分だ。熱がちょっとだけ冷める。
「そ。もし熱があったらぶり返すだろ?」
「いや、だからってさぁ……」
 何か本当に、流れを切られた感じがしてしまう。盛り上がってたのに、まったく……。

 だけど私は甘かった。黒川が、そんな普通のものを持ち出すはずがないのに。

「というわけで、だ。お尻出して」
「…………へ?」
 我ながら、間抜けな声で聞き返していた。
 黒川が、ニヤリと笑う。
 その笑みが、切れかかっていた私のスイッチを、また繋いでしまう。
「知らない? 直腸検温」
 ちょくちょーけんおん。その言葉が漢字に変換されて意味を成すまで、しばらくの間があった。
 意味を理解した瞬間、私は反射的に跳ね起きようとして、そして黒川に押さえ込まれてしまっていた。
「ひょっとして、イヤなのか?」
「だ、だってそんなっ……!」
 私の慌てる様を、黒川が面白そうに見下ろしてくる。意地の悪い、いじめっ子の顔だ。すごく、楽しそう。
 もう……ダメだ。逆らえない。
 黒川に何を言っても無駄、という意味じゃあない。逆だ。
「どうしてもイヤだって言うんなら、まあ止めてもい」
 ほら、いつだって黒川は私の『自主性』を重んじる。
 ……つくづく最低なヤツだ。私がイヤと言えるはずがないのを知っていて、そう聞くのだから。
 そう。イヤだなんて言えるはずがない。だった私の頭の中ではもう、お尻に体温計を入れられて、それを黒川にからかわれている自分の姿が思い描かれているのにっ!
 妄想の中の私は、本気で泣きそうになっている。
 だけどそう考えるだけで、現実の私は……
「……あ」
「ん?」
 思わず上げた声に、黒川が首を傾げた。何でもないと、慌てて首を横に振る。
「ふ〜ん?」
 目をそらしても、その声で黒川にバレてしまったのが分かった。
 私はもう……溢れそうになっている。
「きゃぅっ!」
 いきなり股間を押し揉まれた。ジュワッと愛液が押し出されてしまう。けれども、黒川のねらいはソコじゃなかった。
 黒川の指が下着の、パジャマの上から的確に、私のお尻の穴を捕らえてきた。
「んっ……んんんっ」
 布地越しに、グリグリとこねられる。それだけで、ザワッと背中が震えてしまう。鳥肌が立つほどの、快感。
「相変わらず、反応良いよな。それに、もうこんなに濡らしてるし」
「だ、だって黒川がっ……あ、いや、やだぁぁっ」
 下着を巻き込みながら、黒川が指先を押し入れてきた。入り口のすぐ内側に、回転運動が与えられる。
 その振動は、私の子宮までもくすぐってしまう。黒川に望み、開発されきった私のお尻は、黒川の指に敏感すぎるほどの反応を見せる。
 身体の奥から、疼きが沸き上がってきてしまう。
「くふぅっ……ふっ、あぁ……ねえっ、黒川ぁ……」
「ん? どうする?」
 わざとらしく黒川が尋ねてくる。ご丁寧に、指の動きまで止めて。
 私は精一杯の気力を込めて黒川を睨んだ。
「……卑怯者」
「はっはっは」
 呆気なく笑い飛ばされる。どうやったって、勝ち目はない。
「…………して……」
 泣きそうになりながら、私は黒川にお願いしていた。
 対照的に、黒川が嬉しそうに笑う。
「いいよ。じゃあ脱いで」
「ぅぅぅぅぅ〜〜……」
 せめて脱がせてくれたっていいのに。
「ほら、早くしなって」
「ぐんっ!? ……あっっく、うぅっ、脱ぐ、脱ぐからぁっ……!」
 グズっていると、指を突き込まれた。布ごとねじ込まれる、強烈な異物感。それなのに、指を動かされるとその異物感すらも倒錯した快感に変わっていく。
 恥ずかしい、惨めだとという思いが、それを加速させてしまう。それ以上気持ち良くなるのが怖くて、私は慌ててパンツを脱ぎにかかった。
「はぁっ、あ、はぁ、はぁ……」
 横になったまま、ズボンとパンツをひとまとめにして脱ぎ下ろす。それを毛布の下に押し込もうとして、黒川に止められる。
「あぁ……ねえ、黒川ぁ……」
 私が泣く。黒川が笑う。
 脱いだ下着を差し出す以外、道はない。
「やっぱり濡れやすくなってるよなあ……ていうか、ちょっと汗くさいかな?」
「なっ!? いやぁっ、もうやぁっ!!」
 下着を広げられ、おまけに匂いまで嗅がれて。
 黒川から奪い返そうと飛びかかることもできず。変態となじることもできず。私はただ顔を覆って泣き叫んだ。
 本当に、恥ずかしさのあまり泣いてしまっていた。横になったまま、しゃくり上げる。
 だって、昨日はお風呂に入っていない。熱が出てダルかったから、そんな元気はなかった。ということは、下着だって変えてなくって……。
「やぁぁっ、もうっ、黒川ぁぁっ……」
 胸を掻きむしりたくなるほど恥ずかしい。その恥ずかしさが、どんどん身体を熱くさせていく。頭がグラグラ沸騰していく。
 それなのに、アソコが切ないくらいに疼いている。きゅぅっと引きつるような感覚が、込み上げてくる。
 また、溢れ出ていく感触があった。
「もう……許してよ、黒川……」
 恥ずかしいだけでは、もう我慢できなくて……。私は泣きながら黒川にお願いをする。見てるだけじゃなく、触ってくれと。
「そうだな。じゃ、膝を立てて」
「……うん……」
 顔を覆った指の隙間から様子を窺うと、黒川は私の足下に陣取っていた。私の目線に気付くと、早くとアゴをしゃくるようにして急かしてくる。
 今度は下着じゃなく、そこを直接見られてしまう。
 それはどんなに恥ずかしいんだろう……。
 そう考えると、身体が震え出しそうだ。
 期待に。
 私は唾を一つ飲み込むと、膝を立てて、足を開いた。
 クチっという音が、私にも聞こえた。
 これで、もう本当に、丸見え。
 でも……。
「入れにくいな。膝を抱えてくれるか?」
 黒川の要求は、止まらない。
 膝を抱える? そんなことをしたら、本当にっ……!
 でも、逆らえない。言い返すこともできない。
「はぁっ、あぁっ、黒川ぁっ……!」
 視線が刺さってくる。熱い。見られてる。黒川に、アソコを……。
 ダメ。恥ずかしい。恥ずかしいのにっ……!
「うっ……うぅぅぅっ……」
 私は、見られる快感にすすり泣きながら、膝を抱え上げた。お尻に、空気がヒヤリと触れてきた。反射的に、キュッとお尻の穴がすぼまる。
 黒川の目は、そんな姿まで捉えている。
「あはぁぁっ……!」
 耐えられずに、身体に力を入れる。爪先がキュッと折り曲がる。アソコから愛液が、またコポッと溢れ出ていく。
「くろ……か、わ……」
「そうだな。じゃあ入れてみよっか」
「くぅぅっ」
 言葉と同時に、お尻に入ってきた。冷たく、細い感触。
 体温計。
「……ぅ……ぁ……」
 正直に言えば、物足りなかった。さっき先っぽだけ入れられた黒川の指に比べて、それはあまりに細くて、頼りなかったから。
 だけど。
 カシャッ。
「えっ? な、何っ?」
「ほら、見てみな」
 驚く私の脇に、黒川が寝転がってきた。そうして差し出されたのは、デジタルカメラ。ソコに写っていたのは、裸のお尻。赤く充血して、愛液に濡れたアソコ。
 そして、お尻の穴に、体……温、計
 それは笑ってしまうくらいシュールで、恥知らずな映像だった。
「やっ、いやぁっ!」
「ほらほら、暴れんなって」
 思わず放してしまった私の膝を、黒川が抱え込む。
「さっ、ちゃんと持って」
「うぅっ、やだぁぁっ……」
 いざ目にすると、想像以上の卑猥さがあった。
 黒川は、アレを、見たんだ……。
 そんな、最低だ……信じられない……私、何て格好をっ……!
「ほら、早くしなって」
「はぁっ、あぁっ、はぁぁぁっ……はぁぁ……」
 黒川が急かす。私は大きく息を吐いて、膝を抱え直す。そうしながら、思考はグルグル羞恥の渦を描く。
 見られた。見られてる。私の、すごくすごくすごく恥ずかしい格好をっ!
 息が詰まりそうな私に、黒川がちゃんと栓をするように、体温計を奥まで差し込み直した。そんなわずかな動きも、視線を感じ取ろうと敏感になっている私のお尻は、克明に捉えてしまう。
「はっ、はっ、はぁっ、あぁっ……」
「3分間だからな」
 喘ぐ私に、黒川が告げる。
 3分。
 そんなにも(たったそれだけ?)黒川に見られてしまう。そう思うと、さらに身体が疼きだしてくる。肌がざわめき始める。
「で。途中で動くと危ないからな」
 右手で左手首を握っていたのを、それぞれの肘を握るように指示を出される。それに従った時、黒川が私の手首を取った。
「……え?」
 最初、何か分からなかった。ふっと何かが触れたと思ったら、ギュッと絞られて……。
 いや、違う。縛られて、だ。
「やっ……そんなっ……」
 不安と、期待に声が上擦る。
 そんな私をよそに、黒川は私の手首を縛り上げていく。
 肌に布が触れるたび、ギュゥッと絞られるたびに、鋭い電流のような快感が身体を駆けめぐる。
「はぁ、はぁ……あぁ、私っ……」
「動けないだろ?」
「う、うん……」
 試しに腕を剥がそうとしてみたけれど、本当に動かない。ガッチリ、縛り上げられている。自分の身体が自分の自由にならない、束縛感。
 身体を搾られるような感覚がして、それが快感へと変わる。口からは熱い息が漏れる。子宮が、熱く震え出す。
「あんまり溢れさせたら、滑り落ちたりして」
 黒川の、からかうような声にハッとさせられた。
 私のアソコは、もう本当にどうしようもないほど濡れていて、それがお尻にまで垂れている。慌てて引き窄めると、その動きがまた溢れ出させてしまう。
「ははは。まあ奥まで刺してるから、大丈夫だろうけどな」
 黒川が笑う。どっと羞恥が押し寄せる。それがまた、快感に変換される。終わりのない循環。
「じゃ、仕上げだ」
 その声は、顔のすぐ傍からした。慌ててそちらを向くと、顔に……いや、目に何かを押し当てられる。驚いた時には、もう視界は奪われていた。
 厚い布が、私の目を塞いでしまう。外せないように、布が引き締められ、結ばれてしまう。
 何も、見えない。
「じゃあ残り時間も、大人しくしてろよ」
 言い捨てて、黒川がまた私の足下へ戻っていく。目が見えない私は、それを気配で感じ取る。
 ベッドのきしみ、衣擦れの音。息づかい。
「ふぁぁっ!?」
 それは、想像以上に私のすぐそこにあった。黒川の息が、私の股間を撫でる。
「くぅぅっ!」
 ビクンと跳ねた腰が、そのまま溶けだしてしまいそう。拘束され、目隠しされた私は、必要以上に敏感になっていた。
 黒川が、私の股間を覗き込んでいる。
 頭の中で、さっき見せられたデジカメの絵と、股間を覗き込んでいる黒川の姿が合成される。
 黒川が、笑っている。私の恥ずかしい姿を見て。ニヤニヤと。
「やっ、やはっ、はっ……見ないでっ、黒川っ、いやっ……!」
 口とは裏腹に、身体は私の制御を離れていく。見られてると思うだけで、アソコはどんどん熱く濡れていく。
 そこへ、黒川の息がかかる。
「やだぁっ! やっ、やはぁっ、あ、あぁぁっ!」
 黒川は何も言わない。ただ、そこにいるだけ。
 けれど私の頭の中では、黒川は笑っている。私に言葉を投げてくる。
『ホント、縛られるのが好きになったよなあ。完璧マゾに目覚めてるな』
「あぁぁ……違う、黒川、違うからっ……!」
 黒川は何も言わない。ただ息がかかるだけ。
 吐息を浴びて、アソコが勝手にヒクヒクと動く。体中が熱いのに、ぞわっと全身が鳥肌立つ。頭の奥が、痺れ始める。
『学校では、真面目なのにな。いや、学校でもやったんだっけ。じゃあ、いつなら真面目なんだ?』
「あはっ、はっ、あはっ、はあぁっ……!」
 黒川の言葉は妄想なのか本当なのか、それすらも分からない。
 でも私は、どうしようもなく感じてしまっていた。
 黒川の言葉に、視線に、身体が沸騰していく。嘲笑われて、下品な言葉を投げられて、それに快感を覚えてしまう。
 漏れ出る声も、快感のそれだ。
「黒っ……川、ごめっ……私、もうっ……!」
『何だ。もうイクのか?』
「だ、だって……こんなっ、私……私っ!」
 見られるだけで、イクはずがない。だけでもう、我慢できない。お腹が、アソコがたまらなく熱い。
 黒川の視線が私の身体に熱を注ぎ、腕を縛る布が、目隠しが、その熱を漏らさないようにしてしまう。おかげで、身体はどんどん熱を溜め込んでしまう。
 ダメだっ。このままだと、もう、本当にっ……!
「いやっ、ねえっ、黒川っ、あ、いやっ……」

 ピピピピピピピピピピピピピピっ!!

「っクぅぅぅっ……!!」

 突然響きだした電子音。
 その音を合図にするように、私は呆気ないほどあっさりと、イってしまっていた。







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