11
「えっと。お先でした」
リビングで雑誌を読んでいた黒川に、声をかけた。顔を上げた黒川は、私を見て「お?」といったような顔をした。
「な、なによ?」
「いや、そういう格好もやっぱり、けっこうそそるな、と」
「馬、馬鹿」
私はバスタオルを巻いただけの身体を、黒川の視線をかわすよに捩じらせた。それなのに黒川が、余計に嬉しそうになってしまった。
こんな格好を黒川に見せるのは、何も初めてじゃない。けれどストレートに誉められ、何か嬉しそうに見つめられると、やっぱり恥ずかしいのは恥ずかしい。
しかもだ。
今日の私は、また一つ恥ずかしい世界に踏み込むつもりで来たのだ。それを思うと恥ずかしさは倍増だ。
「おいおい、何をそんなに赤くなってるんだよ。大丈夫か?」
よっぽど顔を赤くしてたんだろう。黒川が笑いを含んだ声で言った。私は悪態を付くこともできず、俯いたまま黒川の隣にちょこんと座った。もちろん、できるだけの距離を開けて。
隣に座ると、余計に緊張してきてしまう。この気恥ずかしさは、初体験の時以上だ。あの時は単に緊張してただけだけど、今日は死ぬほど恥ずかしい。
まあ、今日も初体験といえば初体験だから、当然なのかもしれないけれど。
「さてと。じゃあ今日はせっかくだし、オレもシャワーを使わせてもらおうかな」
「あ……ま、待って」
立ち上がった黒川を、つい呼び止めていた。黒川が私を振り向いたが、私はすぐに顔を伏せてしまった。おまけに、続ける言葉もなかった。それでも私には、黒川がシャワーを浴びてる間、このドキドキを我慢できるとも思えなかった。
呼び止めただけで、それ以上は何もできなくなったけれど、それでも黒川はソファに座りなおしてくれた。
「あ、あの……さ」
ようやく口にできたのが、その一言。けれどそれも俯いたままだったし、それだけ言ってまた言葉が切れてしまう。
チラリと黒川の様子を窺うと、ニヤッと笑われた。
きっと、黒川は気付いてる。
私が何を言おうとしてるのか。
どうして今日に限って、する前にシャワーを使ったのか。いつもはそのまま流れ込んで、シャワーは終わった後に使うのに。
その辺の事情を、きっと黒川は察している。
でも、何も言ってこない。私が言うのを待っている。
顔が、身体がカッと熱くなる。胸がキュッと苦しくなる。
その感覚が、イヤじゃなかった。ある意味、意地悪されてるのに。優しくされずに、恥ずかしいことをやらされようとしているのに。
このドキドキ感が、妙に心地いい。恥ずかしいのに、気持ちがいい。
その証拠に私の胸の奥は、アソコはもう熱くなっていた。
「だから……今日は、ね?」
私は、火照った顔を黒川に向けた。黒川は、面白そうに私を見ている。
心臓がバクバクいって苦しいくらい。それでも私は、黒川の目を見て言った。
「今日は……お尻を、教えて欲しい……かな、なんて」
私の言葉に、黒川はやっぱりなといった感じに笑ってみせた。そんなに見られるのがどうしようもなく居たたまれなくて、私は堪らず顔を伏せた。
耳まで熱くなってるのが分かる。
「珍しくシャワーが先だったと思えば、やっぱりそういうことだったのか」
私は間を置いてから、コクンと頷いた。
それから、しばらく沈黙が流れた。
黒川が何も言ってこないので、不安になってきてしまう。やっぱり、変な女だって思われてるんだろうか。黒川とは、SMだってしてるから大丈夫だと思ったんだけど、やっぱりお尻は別なんだろうか。黒川、イヤがってるんだろうか。
だったら、ちょっと何か…………泣きたいかもしれない。
「ちなみに、どこまでやりたい?」
「……え?」
「お尻を教えて欲しいって、どの段階まで?」
聞き逃した私に、黒川は言葉を変えて聞きなおしてきた。私はゆっくりと顔を上げて黒川を見た。黒川は、何だかとても楽しそうに見えた。
ヤられた、と瞬間的に思った。
最近の黒川は、相手をするのが本当に難しい。まるで私の心を読んでいるみたいに行動する。今だって、私を不安にするためにわざと黙り込んだに違いない。
「ア、アンタ――」
文句を言おうとしたら、キスをされてた。
身を乗り出して二人の隙間を埋めた黒川が、私の唇を奪う。開いた唇の合間から、すかさず舌を差し込まれてくる。罵倒しようとしていた舌を絡め取られ、悪口もそれを言おうとしていた心も溶かされていく。
卑怯だ、と痺れる頭で思った。
黒川のこういうやり口は絶対ズルイ思う。女心を弄ぶなんて、許せない。
でも……。
黒川の手の中で翻弄されるのは、実はちょっと、気持ちがいい。
本人に言ってはいないけど、私が黒川に惚れてしまってるからか。
こんなにされるのが、イヤじゃない。
私って実は都合のいい女なのかな、とか思いながら黒川のキスに応え……ようとしたら、唇を離された。
訂正。
やっぱり黒川は、最低なヤツだ。コイツの思い通りになるのはすごいイヤ。
私は思いっきり睨んでやった。なのに黒川は、まるでこたえた風もなく笑って言った。
「それで? どこまでやりたい?」
「ぁ……ぅ……」
怒りの矛先をアッサリそらされ、私は言葉に詰まってしまう。そんな私に、黒川が手を伸ばしてくる。髪に指を滑らせながら、問いを重ねてくる。
「どうしたい? お尻を、どんなふうにされたい?」
髪に触れられるだけで、頭が痺れるみたいになっていく。険しい顔も、戸惑った顔ももうできない。トロンとしてきて、このままでいいやって気分にしまう。
そんな私の頬を、黒川の指が撫でる。ちょっとくすぐったいけど、それも心地いい。
されるがままになっていると、指は首筋から胸元へ降りていき、身体の脇で留めてあったバスタオルの結び目を解いてしまう。さすがに手で押さえようとすると、その手を握られて身体の脇に下ろされる。
そして、バスタオルが剥ぎ取られた。
黒川の視線を浴びて、私の中でもスイッチが切り替わった。私が両手を伸ばすと、黒川は笑いながら私を抱き締めてくれた。けれど黒川は素直に抱き締めるだけじゃなくて、背中を指先で撫で下ろしたり、髪にキスしたりもする。
堪らず喘いだ私の耳元に、黒川が口を寄せる。
「それで、お尻をどうされたい? 指で触られたい? それとも、舌の方がいい?」
もう完全にその気になっている私は、耳元で囁かれるだけで感じてしまう。耳にキスをされ背中や脇腹を撫でられると、鼻にかかった声を上げてしまう。
そうしながら、頭の中ではお尻を愛撫されている自分を思い描いていた。お尻の穴を撫でられ、舐められて悶える自分。
そんな様子を想像して、ますます黒川の愛撫に反応していく。私の妄想は、いよいよ加速していく。
「……したい……」
「ん?」
私は、黒川の肩に額を擦りつけて呟いた。
「ちゃんと、お尻で……エッチ、したい」
言った途端に、また体温が上がったような気がした。頭の中に心臓があるみたいに、ドクドクと血液が脈打って流れていくのが分かる。
恥ずかしくて、堪らなく興奮している。私は口を開けてハアハアと喘いだ。
「ねえ、黒川……」
振り仰いだ黒川は、けれども笑いながら首を横に振った。
「もっと、ちゃんと言ってもらわないとな」
「ひぁっ!?」
お尻の穴を撫でられて、私は悲鳴を上げた。けれども黒川は指を離さない。ゆっくりと、その場所を撫でつづける。
「んっ……んぁ、あ、あはぁ……」
「ほら、具体的に言ってくれよ」
黒川の指が動きつづける。
かなり、くすぐったい。ついでに、本気で恥ずかしい。自分で望んでおいてアレだけど、そこを触られるのは何と言うか本当に、恥ずかしい。
けれどもやっぱり想像どおり、それ以上?
そこは、気持ちいい。
周りを撫でさすられていると、ふっと力を抜いてしまいたくなる。それで、開いたところを触れられたりすると、ビクッとするほど感じてしまう。
黒川が上手いのか、私が感じやすいのか。そこをちゃんと触られるのは初めてなのに、私はシッカリ感じ始めていた。
そして私は黒川の、私の身体の求めるままに答えを口にした。
「そ、そこに……」
「そこってどこ?」
いきなり訂正を求められる。
「お……お尻の穴に、く、黒川の……黒川の、オ、オチンチンを、入れて……欲しい」
言いながら、頭の中でそうされている自分を想像した。
それだけで、キュンっとお腹の下の方が締め付けられる感じがした。
愛液が、奥から溢れてくる。
「教えて欲しいってのは、それだけなのか?」
「……え?」
「今日はもちろん、お尻は気持ちいいってのをちゃんと教えてやるよ。今日は無理でも、入れるのもちゃんとしてやる。でも、その先は? どこまで試してみたい?」
顔がすごく熱い。黒川を見上げた私の瞳は、きっと熱っぽく潤んでいるに違いない。
「全部……全部、教えて欲しい。痛いのも苦しいのも、全部……。お尻、叩いて欲しい……。か……浣腸だって、してみたい。だから……全部、全部教えて」
熱に冒されたように私は、とんでもないことを口走っていた。
でも、それが私の本心だった。黒川だけに見せる、本当の私。黒川だけが受け止めてくれる、私も知らない私の中の私。
「痛くて苦しくて恥ずかしいのに、それで気持ち良くなりたいわけだ」
「そう……そうなの。だから、だから教えて、私に……」
「分かった。じゃあタップリ、教えてやるよ」
黒川のキスはとても優しくて熱くて、そして甘く感じられた。
「ね、ねえ……早くしてよ。この格好、すごく恥ずかしいんだから」
「でも、バックの時は似たような格好するじゃないか」
「それでもなの。ねえ、黒川ぁ……」
枕を抱きかかえるようにした私は、私の後ろに陣取っている黒川に弱々しく訴えた。
私はベッドの上でうつ伏せになって、膝を立ててお尻だけを高く突き上げるようにしている。開いた足の間に黒川がいるので、私のアソコもお尻も、みんな丸見えになっているはずだ。
そりゃあ、見られたことどころか舐められたことだって何度もある。でもそれは、黒川にされたのだ。見られたのだ。
自分からそこを見せるのは、見られるのとは比べ物にならないくらい恥ずかしい。私はキュッと、お尻の穴を隠すように窄めていた。
「ははは。しかし改めて観察すると、お尻の穴ってのもけっこうイヤらしいな」
「い、言わないでよ、そんなに……恥ずかしいって言ってるでしょ」
「でも、見られるのは当然覚悟してたんだろう? だって石鹸の匂いがするからな。ちゃんとここも洗ったんだ」
「馬、馬鹿ぁ……ひぁっ!?」
息を吹きかけられただけで、思わず腰を引いてしまうほどゾクッときてしまった。
感じる、というのとはまだ少し違う。でもこれは、きっと気持ち良くなるに違いない。そんな確信に私は腰を震わせると、またおずおずと黒川にお尻を突き出した。
「よし。じゃあ始めようか」
「う、うん……」
黒川の手でお尻を撫でられながら、私は小さく頷いた。いよいよだと思うと、恥ずかしいのと興奮するのとで、のぼせたみたいになっていた。
「んっ……?」
ちょっとくすぐったかった。それに、それは指でも舌でもない感じがする。もっと細い何か。それで、お尻の穴の周りを撫でられてる。
「ね、ねえ……?」
「ああ、これ? 綿棒だよ。ローションを付けた綿棒ってのが、基本なんだけどな。いきなり舌の方が良かった?」
「そ、そうじゃない……けど、んっ……んぁ」
何か分からないから少し不安だったけど、答えが分かればそれでいい。私は抱えた枕に顔を埋めるようにして目を閉じると、綿棒の動きに集中した。
黒川は、お尻の穴の、その皺をなぞるように動かしてくる。一本一本、ゆっくり丁寧に、外から内へとなぞる。
「ん……ふぅ、ふぅ……ぁっ、んっく……」
緊張が解けてきて、感じるのもくすぐったさだけじゃなくなってくる。
「どんな感じ?」
「う、うん……」
気持ち良かった。
恥ずかしくて窄めていたお尻が、自然と開いていく。それで中の方を触られたりしたら、また慌てて窄めたりするんだけど、それは慣れない刺激への反射的なものだ。
だんだん、中の方を触られるのも気持ち良くなってくる。恥ずかしいところに気持ちいいのを重ねられて、わけが分からなくなってくる。お尻だけじゃなくて、アソコまで気持ち良くなってきてる。何だかちょっと、ムズムズするくらいに。
「よし。じゃあ入れるからな」
「え? あっ……あ、ん……」
すぐに入れられたのが分かった。綿棒程度の太さだと痛いとかは全然なくて、呆気ないほど簡単だった。
でも、確かに入ってる。
そこに刺さってるのが、ちゃんと分かる。
「けっこうシュールな絵だよな。お尻の穴に綿棒が刺さってるのって」
「い、いやぁっ……言わないでよ、そういうのはぁ」
枕に顔を埋めた私は、くぐもった声で泣いた。
言われるとつい自分でも、頭の中で想像してしまう。私のお尻に、綿棒が刺さっている様子を。
「……んぁっ」
それは、ものすごくイヤらしくて恥ずかしい姿だった。反射的にお尻に力を入れたら、綿棒がピクッと動くのが分かった。それがまた余計に恥ずかしくさせてくれる。
「痛くはないんだろ?」
「う、うん……。痛くも苦しくもない、けど……」
「よし。じゃあ、今からちゃんと気持ち良くしてやるよ」
そうして、綿棒が動かされ始めた。深くは入ってこない。入口辺りを、ゆっくり出入りする。
「ん……くぅ、あっ……あふっ、はっ……」
ちょ、ちょっと気持ちいい。くすぐったいのを、気持ちいいのが上回ってきてる。
ただ……気持ちいいんだけど、何かちょっと、初めての感覚というか……。私のまだ知らない気持ち良さに戸惑いがあって、私は枕をギュッと掴んでいた。
「あっ……んぁっ」
動きが変化したのを、私は敏感に感じ取った。
前後の出し入れから、円を描くようになった。閉じたその場所が、ゆっくりとほぐされていく。
「はぁ、はぁぁ……ふぅぅぅ…………」
不思議な感覚に、私は大きく息を吐いた。
本当に、そこを広げられていくような気がしてしまう。今、お尻を開発されてるんだと思うと、それだけで何だか興奮してきて、どんどん身体が熱くなっていく。綿棒の動きが、気持ちいいものになっていく。
「んっ、んんっ……んふぅ……ふくっ……くぅんっ」
「けっこう感じてきたみたいだな。じゃあ、もう一本いくぞ」
「え? あ……あんっ、んぁっ、あっ……」
綿棒がもう一本入って来たのが分かった。
だけど、まだ余裕はある。というか、逆に中途半端な感じがしなくもない。むず痒いような気がして、私はブルッと身体を震わせた。
「痛くはないみたいだな」
「う、うん……平気……」
「よし。じゃあ、もう一本な」
「あっ、あぅっ……!」
一気に三本目が入ってきた。でも、やっぱりまだ痛い感じはしない。むしろ二本だった時よりも、何かちょっと気持ちいい感じがする。
でも……。
「ね、ねえ」
「ん? ちょっとキツイか?」
「そ、そうじゃなく、その……えっと……。も、もうちょっと……欲しい」
そう言って私は、お尻を振った。黒川が小さく笑ったのが聞こえて、言ったのを後悔するくらい恥ずかしかった。
でも私のお尻は、もっとシッカリした手応えが欲しいと疼いていた。お尻もアソコも、熱くなっている。欲を言えば、両方して欲しいくらい。
「分かったよ。じゃあ、痛かったら言えよ」
「う、うん……んっ、んふぅっ! ん、くぅぅっ……」
三本目と四本目。その差は一本分しかないのに、けっこう差があるような気がする。さっきよりも確実に広がっているはず。
少しずつお尻の穴が広げられる。それは腰骨が震えて、溶け出してしまいそうな気持ち良さだった。
「もう一本くらい、いっとくか?」
「う、うん」
私は即答していた。
まだ、まだ大丈夫。まだ痛くない。もう一本入れられると痛いかもしれないけど、きっと充足感の方が強いはず。私はもっと、入っているという感覚が欲しい。
くっと、黒川に向けてお尻を突き出した。
「じゃあ入れるからな」
「んっ、んぁっくっ、くっ、くふぅぅぅっ……」
とうとう五本目も入ってしまった。さすがに、もういっぱいな感じがする。
けど、そんなに痛くはない。やっぱり入ってる、入れられてるという満足感の方が大きい。
キュッとお尻を締めてみると、そこが広げられてるのがより強く実感できた。そして、私の奥からジュンッと蜜が溢れてくるのも。
私はその感触を噛み締めるように、何度も大きな呼吸を繰り返した。
「よしよし。じゃあそのまま大きく息をして」
「ふ、ふぅ……ふぅぅ…………すぅぅ……はぁぁ……あっ、あくぅぅっ……」
呼吸に合わせて、ズルッと刺し込まれた。奥まで入ってるという実感はないけど、奥まで入れられた感覚は強くあった。今も、刺さってるのはハッキリ分かる。
お尻に、奥まで入れられた。
その事実が、私の中に刻まれる。その背徳的な気持ちが、私の興奮を煽っていく。
「んっ、あっ……あぁぁぁぁっ!」
ゆっくりと引き抜かれて、私は喘いだ。
今までは何となく気持ち良かったけど、これは違う。本当に気持ちがいい。お尻の穴を擦るように滑り出て行く綿棒が、こんなに気持ちいいなんて思いもしなかった。
「んぁっ!」
最後に綿棒の頭の部分も引き抜かれ、私は大きな声を出していた。
快感というより、爽快感だろうか。アレな話だけど、我慢していた大きい方を出したような感じに近い。でも、それは確かに快感そのものだった。
「もう一回いくぞ」
喘いでいた私は、黒川の言葉にすぐ頷いていた。黒川は私のお尻を撫でながら、五本に束ねた綿棒を刺し入れてきた。
「くぅっ、う、あぁぁぁっ……」
ズズズズッと、入れるべきでない場所に入れられる。今度はその感触さえも気持ち良かった。奥に進んでくるのに合わせて、ゾクゾクするような快感が背中を走る。
「はぁ、あ、あぁぁっ! んっ、んんんんんっ!」
奥まで刺し込まれると、また引き抜かれていく。私は自分の喘ぎ声の大きさに驚いて、枕を噛んでいた。それほどに気持ちがいい。引き出されていくこの感じは、泣きたくなるほどの快感だ。
今度は最後まで引き抜かれずに、先端部分で入口を掻き回されると、また奥まで刺し込まれた。
「ふぅっ、うんんんんんっ……」
引き出されるのも入れられるのも、どちらも堪らなく気持ちいい。私は初めてで、お尻の快楽に取り憑かれていた。
「ずいぶんと気に入ったみたいだな」
「んぁぁっ……だって、だってぇっ!」
奥まで入れられた綿棒をグリグリと動かされただけで、背中を反らせて悶えてしまう。
お尻がこんなにいいなんて、想像以上だった。しかも、今はまだ細い細い綿棒でしかない。それが、指やアレやらになったら、いったいどれだけ気持ちいいんだろう。
そう思うだけで、私はお尻が熱くなるのを感じた。そうして無意識のうちに、綿棒を締め付けていた。
「はぁ、はぁ、はぁぁ……」
刺さってるのが恥ずかしいのに、すごく感じてしまう。閉じてる場所を押し広げられてるのが、辛いはずなのに気持ちいい。
それに、アソコだって。
触られてるのはお尻なのに、前の方だって熱くなってるのが分かる。綿棒の動きに合わせて、アソコがキュンっとなってしまう。熱く疼いて、気持ち良くて。お尻と一緒にこっちも触って欲しいって思ってしまう。
「だけどホント、いやらしいよな。綿棒を咥えたお尻がヒクヒクしてるぞ」
「ひぁぁっ!」
黒川は綿棒を弾いて、私に大声を上げさせる。そのままグリグリと穴を広げるように押し回してくる。私はお尻から広がった痛みを伴う気持ち良さに、目をきつく瞑って身悶えた。
「分かるか? 綿棒に合わせて、お尻の穴の皺もピンと伸びたり元に戻ったりするのがさ」
「うっく、んっ、んあぁぁっ!」
「ん? どうした、そんな大声出して?」
黒川は綿棒で円を描きながら、わざとらしく私に聞いてくる。
「ほら、どうしたって聞いてるんだけど?」
「あぅっ……んっ、あぁっ……だ、だって黒川が、奥にまで入れてくる、からぁ……」
「痛かったのか?」
そんなわけないのは、黒川だって分かりきってるはず。それを承知で、私に答えさせたいんだ。
「んぁっ、あぁぁっ!」
答えに詰まったのは、ほんのちょっと。でも黒川はそれを許してくれなかった。奥にまで刺し込んだ綿棒を、素早く小刻みに出し入れさせる。
「どうだ? これも痛いのか?」
「ち、ちが……気持ち、気持ちいいのぉっ! お尻が、お尻が気持ち良くて……あぅっ、んっ、んぁぁっ! いいっ、いいよぉっ……お尻、奥まで入れられて、震えて、すごく、いひぃぃっ!」
グルっと大きく回されて、私は悲鳴を上げる。
無理に広げられてるのを、元に戻ろうと綿棒を食い締める私のお尻。それをもっと広げられて痛かったのに、肌が粟立つほどの快感だった。
顔を埋めた枕には、涎の染みが大きく広がっていた。きっとシーツには、愛液が同じように染みを広げているに違いない。
「お尻の奥まで入れられるのが、気持ちいいんだな?」
「そ、そうっ……いい、のっ」
「ふーん。じゃあ、これは?」
「くぁぁっ!」
ズルズルッと引き抜かれて、私は身体を伸び上がらせた。本来の方向にお尻を擦られると、お尻からブワッと一気に爽快感が広がっていく。私はあまりの気持ち良さに、シーツを掻き毟るように握り締めた。
「ほらほら、質問には答えような」
「んあっ、あっ、あふぁっ……そ、それっ……いいっ、気持ちいいっ!」
私は、喉をしぼりたてるようにして喘いでいた。黒川が綿棒でピストン運動を始めたのだ。
奥まで刺し込まれ、そしてゆっくり引き抜かれていく。入口で遊ばされたかと思うと、また奥に潜ってくる。その動きを繰り返しながら、黒川が尋ねてくる。
「だからさ、それってどれ?」
「おっ、お尻……出したり、入れたりが、あぁっ、いいっ! どっちも、どっちも気持ちいいから、私っ……!」
黒川の動かす綿棒に操られるように、私はお尻を動かしていた。自分でももう、どうしようもない。ただただ気持ち良くなりたくて、腰が勝手に動いていた。
「じゃあさ、お尻のどこが?」
黒川の言葉責めに、もう抵抗できない。
というより、むしろ私はそれを悦んでいた。恥ずかしい言葉を言わされると思うと、胸が熱くなる。お尻がキュッと締まって、より強く綿棒を感じてしまう。
「お、お尻……お尻の穴が、いいっ、気持ちいいっ……お尻の穴、気持ちいいのっ」
恥ずかしいのに、恥ずかしいのが気持ちいい。だから私は、叫ぶように答えていた。そうして耳に届く自分のはしたない声が、私に羞恥と快楽を味あわせてくれる。
「なるほどな。でも気持ちいいのは、お尻の穴だけじゃないだろ? さっきから前の方も、ヒクついてるぞ」
「あぁぁ、だって……だってぇっ!」
「だってじゃないだろ?」
「あっ、あぁぁぁぁっ!」
黒川が、綿棒の動きを加速させた。お尻が、お尻が燃えそうなくらい熱くなっていく。あまり速く動かされると粘膜が擦れて痛いのに、でも痛みは熱になって、そして快感になっていく。
それにつられて、アソコの奥の方もカッとなる。熱い愛液が、どんどん湧き出てくるのが分かる。
「ほら、どうなってるか言ってみなよ」
「はぁっ、あ、あぁぁっ……! オ、オマ×コ、オマ×コいいぃっ! お尻、お尻もオマ×コも、すごく熱くて、もうっ、もう私ぃっ!」
髪を振り乱して、私は恥ずかしい言葉を繰り返す。そんな風に言えば言うほど、私の身体は熱くなっていく。
けれども今の私には、もう羞恥の熱も快楽の熱も同義だった。どちらも同じに、気持ちいい。恥ずかしい言葉を言うたびに、お尻の穴とアソコとが、ドクドク脈打つみたいに熱く疼く。
「だったら、前の方は自分でできるよな?」
「はぁっ、あっ、あぁぁっ」
「ほら、やってみな」
黒川にオナニーを見られる。
そんな考えが、頭に浮かんだ。見られたことはあっても、見せるのは初めて。それはどんなに恥ずかしくて、そして気持ちいいんだろう。
私は興奮に震える手を身体の前から伸ばしていき、アソコに指を突き立てた。
「あぁぁっ!」
ドロドロに濡れていたそこは、簡単に私の指を呑み込んだ。熱い襞々が、痛いくらいに指を締め付けてくる。
その中で指を動かすと、燻っていた快感が一気に燃え上がった。
「あっ、あぁぁぁぁぁっ! いっ、いぃぃっ……気持ち、気持ちいいぃっ! アソコが、アソコが溶けちゃいそうっ!」
私は夢中で指を動かした。グチャグチャと、すごくイヤらしい音が響く。
この音を黒川に聞かれ、この指使いを黒川に見られている。
そう思うと、指はますます激しく動いてしまう。肩と頬で上体を支えてもう片方の腕を自由にすると、その手でアソコを開いていた。もちろん、黒川に良く見えるように。
そして、奥から愛液を掻き出すように忙しく指を出し入れさせる。
「ねっ、ねえっ! お願いっ!」
愛液を撒き散らしながら、私は黒川にねだっていた。早くしてもらわないと、このままイってしまいそう。
でも私は、お尻でイきたかった。今、私のお尻を広げているこの綿棒で、昇り詰めたい。無意識のうちにクリトリスを避けてるのも、そのせいなのだ。
「もっと、もっと激しく、お尻でイかせてぇっ!」
「了ー解」
黒川が、綿棒全体を使って私のお尻を抉り出した。多分、私の中指よりも太くて長い綿棒の束が、私のお尻を何度も何度も激しく擦り上げてくる。
「はっ、はぁっ、はっ、ひぁぁぁぁぁっ!」
歓喜が悲鳴となって口をついて出た。頭の中でフラッシュが焚かれた。黒川の操る綿棒にガクガクと身体を揺さぶられながら、それでも私は自分を慰める指を止めなかった。止められなかった。
絶頂は、もうスグそこまで来ていた。
「ひぃっ……ひっ、ひぁっ、あ、あぁぁぁぁっ……! お尻、お尻いぃぃっ!」
自分でももう何を言ってるのか分からない。ただ、とにかく気持ちがいい。感じるのはもうそれだけで、フッと意識が溶けていってしまいそうになる。
「もうイきそうなのか? 尻を弄られて、初めてなのに、尻でイクのか?」
「うんっ、んっ! お尻で、お尻でイクぅっ!」
「いいぞ。なら、イきなよ」
「ひぎぃぃぃぃっ!」
クリトリスに、電撃を打ち込まれた。黒川が、アソコを弄りつづける私の手の隙間から指を差し込み、クリトリスを爪弾いたのだ。
身体中を、強烈過ぎる会館が駆け巡る。
絶息しそうになる私に、黒川はクリトリスを摘まむように揉みながら、お尻を抉りたてる。
「いっ、いあっ、い、イクっ……イクイクイクっ、イっちゃうぅぅっ……!!」
瞬間、私の身体はフワッと浮き上がり、ベッドに投げ出されていた。
全身が、お尻がピクピクと痙攣する。そうすると刺さったままの綿棒が、ヒクヒクと動いた。絶頂の熱が引ききらない私に、また快感を流し込んでくる。
「うっ……あ……あはぁっ!」
綿棒を引き抜かれ、脱力しきっていた身体がビクンと跳ねた。黒川が、私の顔を覗き込んできた。
「どうだった、初めてのアナルは?」
「う、うん……。すごく、良かった……」
私の答えに黒川は笑うと、頭を撫でてくれた。その手がくすぐったくて首をすくめると、黒川は頭から首、そして背中へと撫で下ろしていった。
ゾクッと、身体が震えた。
黒川の指は、私の尾骨の辺りで動きを止めた。もう少し進めば、お尻の穴があるのに。
「で、どうする? 今日はもう満足したか?」
グリグリと指を動かしながら、相変わらず答えの分かりきった質問をしてくる。
イきはしたけど、満足にはまだ届かない。それに、仮に満足していたにしても、こんな風にされたらまたして欲しくなるのが普通だ。
でも何となく悔しい感じがしたので、素直には答えないことにした。
「黒川は? 今日は、私を触るだけで、満足したの?」
「まあね。女の子の身体って、触ってるだけでも気持ちいいもんだし」
とぼけた答え。でも、それは織り込み済み。私は黒川の手から逃れるように身体を起こすと、ベッドの上に足を崩して座り込んだ。同じように座っている黒川を正面から見つめ、唇を舌でひと舐めする。
「それで、ホントに十分? 気持ち良く、なりたくない?」
「なりたいって言ったら、何かしてくれるのか?」
黒川が話に乗ってきた。
私は、つっと視線を外した。これは演技ではなく、純粋に恥ずかしかったから。だから、声も聞き取れないくらい小さくなっていた。
「い……痛くても、我慢するから……」
「ん?」
唾を一つ飲み込んだ私は、黒川に顔を向けた。
「お……お尻、入れてくれて、いい……から」
黒川が白い歯を見せて笑い、私は涙を零した。
それから、どちらからともなくキスをした。
恋人同士みたいに抱き締めあい、互いをいたわる、そんなキスを。
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