10
「だっけど、まさか黒川とはねえ」
さも意外そうに言わると、私は何となく恥ずかしくなってしまって、照れ笑いしながら頭を掻いていた。それをまた、クラスメートたちにからかわれる。
そう。
今や私と黒川は、クラスでも公認の仲だった。
このことに関しては、私の思惑通りに運んだと言える。
もっとも、目的と手段がすり変わっているような気は、しなくもないのが今日この頃だけど。
「でさ、キッカケは何だったのよ、キッカケは」
「あ、そうそう。それ聞いてないよね」
ちなみに、今は体育の授業中だ。女子は体育館でバレー。男子はグラウンドでサッカーなんぞをやっている。で、今日は試合形式の授業だったんで、私たちは他のチームの試合の見学がてら、こうしておしゃべりに花を咲かせているというわけだ。
「ほら〜、教えなよ。どっちから声かけたのさ」
「ん〜、どっちってわけじゃないんだけどね」
せっつかれた私は、満更でもないといった感じで馴れ初めを話し出していた。
「前、学校に来る時にさ、痴漢に遭ったんだよね」
「あー、うんうん。多いもんねー」
「ホンット。あったま来るよね」
「ん。でさ、その時にたまたま黒川がいて……」
「助けてもらったとか?」
「まあ、ね」
私は曖昧に頷いた。まさかここで、本当のことは言えない。痴漢されて悦んでいるところを黒川に目撃されて、その視線でイってしまっただなんて。
けれどクラスメートたちは、私の適当な答えに十分満足したようで、わいわいと盛り上がっていた。私も、その話に適当に合わせていく。
「でもさ、アイツって改めて見たら、何かよくない?」
「そうそう。目立たないヤツだったのにね」
「あはは。そりゃ、私が磨いてやったからね」
「うわっ! 言ってくれるよ」
そしてまた、ひとしきり笑う。
そうやって一緒に笑いながら、ふと私は考えていた。
私と黒川の本当の関係を知ったら、みんなどんな顔をするんだろう。私たちがSMプレイまでしていて、何より私が、黒川に虐められることにこの上ない悦びを感じていると知ったら、みんなはどんな顔をするだろう。
そう思うだけで、私はジワッと濡れてきてしまっていた。
マズイ。
そう思ったときだった。
「危ないっ!!」
あいにく、言われてとっさによけられるだけの、立派な運動神経は持ち合わせていない。コート脇で見学していた私は、ボールを追いかけてきた子とモロに衝突してしまっていた。
「ッタ〜〜〜」
「うぁ〜、大丈夫?」
押し倒された私は、友達の手を借りて立ち上がろうとした。
「っ痛!」
足をつこうとした途端に、スゴイ痛みが走って、あえなく倒れてしまう。
「ちょっ。マジで大丈夫?」
「う〜〜〜」
心配そうな友達にも、私は足を押さえて呻くだけだった。
「ちょっと。大丈夫?」
体育教師が駆け寄ってきて、私の足に触った。
「痛いイタイ痛い! 先生、マジ痛いってば」
「あ〜、捻挫してるね。誰か、保健室まで連れてってあげて」
「はーい」
友達の一人が、サッと手を上げた。
持つべきものは友、と言ったところか。
ところが、その子は何を思ったか、テテテっとグラウンドに向けて開けられている出入り口に向かったのだ。
あれ? と思った時には、叫び声が聞こえていた。
「おーいっ! 黒川ーーっ!! ちょっと来てーっ!」
「ちょっ! 何をっ!」
慌てたのは私だけ。他のクラスメートたちはみんな、心得たようにニンマリしていた。
そうこうするうちに、黒川が顔を見せた。私を囲んだクラスメートたちに呼ばれるままに、体育館に上がりこんでくる。
私はなぜか恥ずかしくって、黒川から目をそらしていた。
「どうしたんだ?」
「今ちょっとぶつかってさ、捻挫しちゃったのよね」
私の代わりに、友達が答える。
「でさ、保健室に連れてかなきゃいけないんだけど」
「そういうのってやっぱ、彼氏の役目でしょ」
「ね〜〜?」
何が楽しいのか。みんなで顔を見合わせながら、最後の「ね〜」をハモったりする。まあ、私だって似たような状況にいたら、そうしただろうけど。
でも、当事者はご免だ。
黒川だって、敬遠したいことだろう。ちょっと気の毒なことをしたかも知れない。
けれど、黒川も相当な役者だった。
何も言わないまま、私の脇に屈み込むと、座り込んでいた私をヒョイと抱き上げたのだ。肩を貸すとか、背負うとかじゃなしに、抱きかかえたのだ。
まるで無造作に。軽々と。
「うっわーーっ! 大っっ胆!!」
「くぅ〜〜っ、見せつけてくれるねぇっ!」
「ヒューヒュー!」
クラスメートの喜ぶまいことか。まさか黒川がそこまでするとは思ってなかっただろうから、みんな大騒ぎだ。
当の私は、一瞬わけが分からなかったけど、状況が飲み込めると、黒川の腕の中から逃れようと暴れだした。
「ちょっ! アンタねえっ!」
「暴れんなよ。落ちるぞ」
そう言った黒川が、私の身体を抱えなおした。あくまで、淡々と。照れなど欠片もなく。
「う〜〜〜〜〜っ」
こうして、顔を真っ赤にした私は、クラスメートたちの声援を背に、体育館を後にしたのだった。
「よし。こんなもんだろ」
「……ありがと」
保健室には先生がいなかったけど、黒川が手馴れた手つきで手当てしてくれたので、かなり楽になった。
……包帯を巻く技術と、縄で縛る技術には繋がるものがあるんだろうか。
「おい、どうした?」
「えっ!? あ、あはは、ごめん。何でもない」
つい馬鹿なことを考えていた私は、笑って誤魔化した。
それでも……。
頭の中に、今さっきまでの光景が蘇ってくる。
私の履いていた靴下を脱がせていく黒川の指。引出しから冷湿布を取り出し、適度な大きさにハサミで切り分けていく、その指。冷湿布を貼り、足首を包帯で固定していく手の動き。そうしながら、私を見上げて笑いかけるその顔。
私は手当てされている間ずっと、痛みなどではなく、頭の奥がジーンと痺れるような心地良さを感じていた。そして、その光景を反芻している今も。
そうしていたら、やっぱりと言うか案の定と言うか。身体の奥の方で、何かこう、キュッとなるような感覚が芽生えてしまった。
我ながら、はしたないと言うか何と言うか……。
「あの、さ。黒川」
「ん?」
授業中。誰もいない保健室。シチュエーションは完璧。それが余計に、私をそっちの方向へ押し流していた。
私は、後片付けをしていた黒川に、あまりためらいもしないで言葉をかけていた。
「今から、しない?」
一瞬、黒川の動きが止まった。けれどもスグにまた動き出して、黒川は道具を片付けにかかった。片付け終えてからロッカーを閉めると、そこにもたれるようにして、私に聞き返してきた。
「今からって、ここでか?」
「そ。丁度ベッドもあるし」
「ったってオマエ、授業中だぞ」
珍しく、黒川が渋った。あまりそういうのを気にするタイプじゃなかったと思っていたけど、けっこう真面目だったんだろうか?
まあ、だからと言って、今さら私が収まるはずもない。
「いいでしょ? だいたい、いつどこでするかは、私が決める約束だったじゃない」
私の言葉に、黒川は苦笑を浮かべた。
私も微笑みを返したが、すぐに顔を引き締めた。そして、これからSEXを楽しむとは思えないくらい真面目な声で、黒川に迫った。
「お願い、します。ご主人、様」
もう何度もこの言葉を口にしてると言うのに、やっぱり声が震えてしまう。それはもちろん屈辱のせいなんかじゃなくて、これから始まる行為への期待のせい。
ご主人様というその一言は、確実に、簡単に、私のスイッチを切り替えてしまう。単に気持ち良いことの好きな女子校生から、マゾの女の子へと。
……ひょっとしたら……。
そう、最近はつい考えてしまう。今の私こそが、本当の私なんじゃないかと。私は、気持ち良くなるためにSMプレイを選択しているんじゃなくて、正真正銘のマゾなんじゃないかと。
そもそも、この言葉を言う必要はないのだから。誘うだけ誘って、普通にSexを楽しむという選択も、あって当然なはずだ。
けれども、私は今日もまた、その一言を口にしていた。
私は、それこそ捨てられた子犬のような目で黒川を見上げていた。その視界の中心で、ロッカーにもたれていた黒川が、グッと身体を起こした。その顔には、どこか意地悪そうな笑みがあった。私は、興奮と緊張で肩を震わせながら、近付いてくる黒川を見つめていた。
私の前まで来た黒川が、私を見下ろす。ベッドに腰掛けた姿勢で見上げているからか、いつも以上に黒川が大きく見えてしまう。私は、ゴクリと唾を飲んでいた。
そんな私の頬を、黒川が指先でそっと撫でた。
「ん……」
つい、鼻にかかった声が出てしまう。黒川は、私のあごを指先で捉えてシッカリ上を向かせると、まっすぐに私の瞳を見つめてきた。
「ここでそう言うってことは、分かってるよな?」
「……はい」
もちろん、具体的には何のことだか分からない。けれども、今の私は黒川に絶対服従する立場なのだ。だから私は聞き返すこともしないで、肯定の答えを出していた。
「OK。それじゃ始めようか」
そう言うと黒川は、念のためなんだろう、ドアに内側から鍵をかけ、窓のカーテンを締め切った。それから、なぜかロッカーの方へ向かったのだった。
扉を開けて何かを取り出すのが分かった。そして戻ってきた黒川の手には、包帯の束があった。
「あの……」
戸惑う私に黒川は答えず、ただニヤッと笑って私の隣に腰を下ろした。そして私に横を向かせると、グルグルと包帯を巻き始めた。そう、私の目に。
「あ……」
薄く伸縮性のある包帯でも、何重にも巻かれると、たちまち視界を奪われてしまう。おまけに、その適度な圧迫感が、拘束されているという実感を与えてくれる。
「……んっく……」
私は、思わずブルッと身体を震わせていた。
ふふっと、黒川が小さく笑うのが聞こえた。早くも興奮しきっているのを悟られ、私は恥ずかしさに唇を噛んでうつむいた。
「よし。じゃあ次は腕だ」
「はい……」
私は、言われるまま従順に、背中で腕を組み合わせた。その腕もまた、包帯でグルグル巻きに固定されてしまう。
「……ふぅ……」
自由を奪われていく、この状況。黒川にすがるしかない、この事態。それが組みあがっていくにつれ、私の肌の下では何かがザワザワと蠢きだしていた。身体が熱くなっていくのが、今漏らしたため息にも表れていた。
もし誰か来たら、保健の先生が帰ってきたらと、思わなくはなかった。けれども、そんなことはもう、どうでも良くなっていた。
「さて、それじゃあっと」
視界は塞がれていたけれど、立ち上がった黒川が、今度は私の足元にしゃがみ込んだのが分かった。黒川の顔は、丁度私の腰の辺りにあるに違いない。本当かどうかも分からないのに、そう思っただけで私は、ジワッと身体の奥から愛液がにじみ出てくるのを感じていた。
「ふぁっ!」
そこでタイミングよく黒川に腰を触られたため、私はつい大声を上げていた。
「おいおい、いきなりだなあ」
「あ……」
少し呆れたような黒川の声に、私は慌てて口を閉ざした。どうにも気恥ずかしくて、黒川から顔をそむける。
「まあ、その気になってるのはいいことだよ。それよりホラ、腰を上げなよ。下を脱がすから」
「あ、は、はい」
恥じ入っていた私は、急いでその指示に従った。腕は拘束されていたので、両足で踏ん張るようにして腰を浮かせた。その隙に黒川は、下着と一緒にパンツを下ろしてしまった。
私の恥ずかしい場所を隠すためのモノが、ズリ下ろされていく。私の揃えた太ももの上を、パンツが滑っていく。
けれども、そう。私が足を閉じているのは、少しでも黒川の目から逃れるためじゃない。その方が、黒川が脱がせやすいからだ。
従順という言葉がピッタリだと、我ながら思う。一旦脱がされだしてしまえば、そこから先は何も言われなくとも、黒川の動きに合わせて動いていた。私はただ大人しく、素直にパンツから足を引き抜いていた。
「……はぁ……ぁ……」
私は、どこか満足そうなため息を漏らしていた。
露出狂の気は、さすがにないと思う。
ただ、今のこの状況が、学校の保健室で腕を拘束され、目隠しをされ、そして下半身を丸裸にされているという、このどうしようもなく卑猥な状況が、私を狂おしいほどに掻き立てているのは間違いなかった。
その時、ツンと膝をつつかれた。
「あ……」
何も言われなくても、黒川が何をさせたいかが分かった。
私は、ゆっくりと、足を開いていった。
自分の一番淫らな場所を、男の前に披露した。
「あ、はぁ、は、はぁ……」
足を大きく開いて、胸を張るようにする。己のすべてを晒した私は、どうしようもなく息が荒くなっていた。目隠しの下で固く目をつむり、括られた手は固く握り締めていた。
身体の中で、熱い塊がどんどん膨らんでいっていた。
「大したもんだよな。脱いだだけで、そんなに感じるなんて」
「は、はい……」
もう、口先だけの抵抗もできはしない。私は、どこかあざけるような黒川の言葉を、羞恥に身を揉みながら受け入れていた。
こんなこと、慣れたわけでは全然ない。今だって、どうしようもなく恥ずかしい。でも、その恥ずかしさが、どうしようもないほど私の身体を熱くしてしまう。
「ふふ。でも本当は、脱ぐ前から、なんだよな?」
「え? ……あっ」
私の耳に、フンフンと鼻を鳴らすような音が聞こえてきた。その意味を察した私は、さすがに狼狽を隠せなかった。
「お、お願い、止めて……」
「止める? 何を?」
言葉に詰まった。
これが、いつもの言葉責めだというのは分かっている。分かっているけれども、いや、分かっているからこそ、なのだろうか。とにかく、さすがの私でも、黒川の行為を具体的な言葉で説明するのは、ためらわれてしまった。
「うーん。体育の途中で抜けてきたからかな。いつもより匂いがキツイか?」
「い、いやぁ……、言わないで」
私は、いやいやと頭を振った。けれども、そんな言葉では到底、黒川を押し留めることはできない。
「だから、何を言わないで欲しいんだ?」
「ぅ……ぁぁぁ……」
それでもまだ、言えなかった。言えないまま、私はただ呻いていた。そんな私を、黒川がさらに追い込んでくる。
「本当に、言わないでいいのか?」
黒川が、ギシッと音を立てて私の隣に座った。そして――。
「ひぅっ! あっ、あぁぁっ、あはぁっ!」
さらけ出された私のアソコを、黒川の指が撫でまわしてくる。軽いタッチにも、私は声を張り上げてしまう。そしてソコからは、クチュクチュとイヤらしい音が響きだしていた。
「ホラ。今日初めて触ったってのに、もうこんなだ」
私のアソコを弄りながら、黒川が耳元に囁きかけてくる。息が耳にかかっただけで、私は肩をすくませてしまう。そして、アソコからは新たな蜜を溢れさせてしまう。
「恥ずかしい思いをさせられると、感じるんだろ?」
「ぁ、ぁぁぁぁぁ……」
黒川の舌が、私の耳をなぞる。私はすすり泣くように、身悶えていた。
「恥ずかしいことを、言って欲しいんだろ?」
そのとおりだ。そんなことはとっくに分かっている。現に、今だってそうなのだから。
私は羞恥にすすり泣きながらも、アソコから湧き上がる快感を押し殺すこともできないで、愛液を溢れさせているのだから。
それでも私はまだ、黒川の言葉に頷くことができなかった。黒川の求めに応じて、言葉を紡ぐことができずにいた。
始めたばかりの今はまだ、理性の方が勝っていたから。
「ふふふ」
「ぁ……」
小さく笑った黒川が、私のソコから指を離した。それを察した私の声はとても残念そうで、それに気付いて私はますます恥ずかしくなってしまう。
「ホラ」
と、唇に何かが押し当てられた。
黒川の指だと、すぐに分かった。
今さっきまで、私のアソコを撫でまわしていた指。私の愛液にまみれた、黒川の指。
それが、私の口元に持ってこられていた。
私はオズオズと口を開くと、その指を口に含んだ。
「ん……、んふ……ん、ちゅっ……」
両手を背中で縛られている私は、ゆっくりと頭を振りながら、黒川の指を舐めしゃぶった。指についた愛液を舐め清めるように、丁寧に舌を絡める。一通り舐め終わると、今度は唇で、舌で、歯で、黒川の指を愛撫する。
なぜだか、切ない感じがしてきてしまう。
自分のが付いた指を舐めるのが汚いとかは、全然思わなかった。それどころか私は、そう、黒川に奉仕できるのが嬉しくさえあった。できるなら、指ではなく……とまで思うくらいに。
「よし、いいぞ」
そう言って指を引き抜いた黒川は、ベッドに上がると私の背後に回りこんだ。後ろから私を抱きすくめるような体勢になった黒川は、振り向こうとした私を押し留めると、私の髪をそっと手に取った。
「ふぅっ……っく、んん……」
髪を梳かれ、首筋を撫でられ、私の意識と身体から緊張が解けていく。そんな無防備な私の心に、黒川の言葉が滑り込んでくる。
「さっきは、恥ずかしかった?」
「……は、はい……」
私は、ここでは素直に頷いていた。
「何が、そんなに恥ずかしかったんだ?」
「そ……れは……」
しかしやはりまた、そこで答えをためらってしまった。
けれど――。
「んぁ…………、ん……んん……」
髪に、キスをされた。
それだけで、私の頭は麻酔がかかったように痺れてしまった。ジーンと、心地良い痺れが私の意識を麻痺させていく。
そうして真っ白になった私の心に、黒川の言葉が書き込まれていく。
「さっきは、恥ずかしかった?」
「……は、はい……」
私は、素直に頷いていた。
「何が、そんなに恥ずかしかったんだ?」
「匂……い、を……」
私は、切れ切れに答えていた。
黒川が、重ねて問いかけてくる。
「匂いを?」
「匂いを……嗅がれ、て……」
「何の?」
黒川は一歩一歩着実に、私を追い詰めていく。私はもう、抵抗などできはなしかった。
「し、下着の……、匂いを、嗅がれて……」
「どんな、下着だったんだ?」
黒川の手が、私の体操服を捲り上げていた。グイッと力強く捲り上げ、とうとうブラの上にまでたくし上げてしまった。
黒川の手が、私のお腹を優しく撫でてくる。
その感触にウットリとしながら、私は答えていた。
「濡れた……下着、です。……愛液に、濡れた、下着」
何にと問われる前に、私はキチンと答えていた。
すると、黒川のかすかな笑い声が耳元で聞こえた。それがくすぐったくって、そして嬉しくって、私は微笑んでいた。
いつの間にか、ブラをズリ下げられていた。
胸が、固く尖りきった乳首が、さらけ出されてしまっていた。
黒川の指が、私の乳首を捉えた。両方の乳首を、指先で擦り合わせるようにされると、途端にキュンっとした感じがして、その感覚は直接アソコへも伝わっていた。
「ふぁっ、あっ、んはぁっ!」
思わず私は、背筋を伸ばすようにして身悶えていた。視界を閉ざされ、自由を奪われた私の身体の中で、快楽の渦が出口を求めて暴れ始めていた。
「はぁぁ、あっ、あぁぁっ……!」
肉体のもたらす快楽が、精神へとフィードバックしてくる。さっきの黒川の誘導のせいもあってか、私の心はもうすっかり、官能の色に染まりきっていた。
目隠しをされたその下で、私の瞳は確かな像を結んでいた。
黒川が、脱がせた私の下着の匂いをかいでいた。愛液の染みができたその部分に、鼻を埋めるようにしながら。
「やぁぁ、あ、ああ、あ、う、ぅぅぅぅ……」
恥ずかしさに身悶える私を尻目に、黒川はさらなる行為に出た。舌を伸ばして、汚れたその部分を舐めたのだ。
「ひんっ!」
それは完全な妄想だったのに、私はまるで、アソコを直接舐められたような刺激に悲鳴をあげていた。
「はっ、は、は、はっ……」
首を伸ばし、天井を睨みつけるような形で、私は妄想の生み出した快感を飲み下そうとした。その時、まるでタイミングを計ったかのように、現実が割り込んできた。
黒川が、私の耳に囁きかけてくる。
「さっきは、恥ずかしかった?」
「……は、はい……」
何度目かの、同じ質問。
「何が、そんなに恥ずかしかったんだ?」
「濡れ……た、愛液に、濡れた、下着の匂いを、嗅がれて、それが、恥ずかしかった……です」
私は、途切れながらも一気に答えていた。
すべてを口にした瞬間、アソコからドロッと蜜が溢れ出てる感覚があって、私は身震いしていた。
そんな私を、黒川が背後から抱きしめてくる。左手で私の胸をゆっくりと揉みながら、右手では私の恥毛の辺りを撫でさする。
そうしながら、囁いてくるのだ。
「でも、気持ち良かっただろう?」
その言葉を否定する要素は、どこを捜しても見つからなかった。そもそも、否定する理由などなかった。だから私は、ごく自然な気持ちで答えていた。
「はい……」
そう答えるのと同時に、ドクンと、身体が脈打つような感じがあった。体温が一気に上昇していくようで、身体がどうしようもなく熱かった。
ハァハァと、犬のように荒い息を繰り返す私の耳元に、黒川が新たな言葉を送り込んでくる。
「それなら、もう、説明できるよな? 自分がどんな人間か」
黒川の指が、クンっと私の恥毛を引っ張った。それを合図に、私は言葉を紡ぎ出していた。心の中に包み隠していた、淫らな本性を吐露していた。
「わた……、私、私……は」
一言、口にするごとに、私の頭の中ではバチッと火花が散った。恥ずかしい告白を強いられるという状況に、私は酔いしれていた。言いようのない快感を覚えていた。
そのあまりの快楽に言葉を途切らせながらも、私はさらなる快感を得ようと、告白を続けていた。
「私、私は、は、恥ずかしい……、恥ずかしいこと、を……。恥ずかしいことを、され……て、感じる……」
チリチリと、肌があわ立つような感じがした。
私はその瞬間を求めて、最後の一言を口にした。
「か、感じる……、変態、です……っ!」
瞬間、シパッと頭が真っ白になって、フッと身体が沈み込むような感覚に囚われていた。
私は、触れもしない、触れられもしない、ただ言葉だけのオナニーで、イってしまっていた。
絶頂から覚めたものの、まだ脱力状態にある私を抱えていた黒川が、私の身体をベッドに横たえた。汗で額に張りついた私の髪を整えながら、なぜだか笑いを含んだ声で話し掛けてきた。
「さてと、オレはいいかげん授業に戻らないとな」
「……あ……」
すっかり忘れていた。
今は授業中で、ここは学校の保健室なんだった。
ここに来て、どれくらい経ったんだろう。
「じゃあ、後で迎えに来てやるから。それまで大人しく待ってろよ」
「え? あ、うん」
そう言われて、てっきり私は、今日のプレイは終わったものだと思ってしまった。
でも、そう。後になって考えてみれば、この時の黒川の言葉使いは、確かにプレイの時の力強さがあった。
黒川は、戒めを解かれると思い込んでいた私を、逆にキツク縛りなおそうとしたのだ。
「えっ!? あっ、ちょっ!?」
さすがに私も慌ててしまった。わけが分からず、とっさに逃れよともがいた。けれど。
「大人しくしろ」
その一言が、私のスイッチを入れてしまった。
私と黒川の立場を、改めて明確にする。
私は、マゾの奴隷。
黒川は、その主人。
だから、私は、「はい」と答えて、暴れるのを止めた。
「よしよし。良い子だな」
普段なら、馬鹿にしてるのかと噛み付くようなその言葉も、今の私には額面どおりの誉め言葉だった。私は黒川の言葉に、くすぐったいような嬉しさを感じてしまっていた。
そんな私を、黒川は手早く縛り上げていく。緩んだ結び目を締めなおし、それからさらに別の包帯で、今度は足まで縛りにかかる。
ベッドに仰向けになった状態で、膝を曲げさせられた。膝が、胸に付くくらいに。そして踵が、太ももに付くくらいに。
そうしておいて、その曲げた膝が伸ばせないように、膝のすぐ下の部分と、足首と足の付け根の辺りと、上下2箇所を縛られてしまった。
もちろん、腕は背中で括られたままだ。肩が少し痛むけれど、それはもう慣れっこだし、気になるほどじゃない。
それよりも問題は、この姿勢だと思う。目隠しもされたままだから確認のしようなんてないけれど、それでも自分がどんな姿をしているかは分かる。
私は、アソコを丸出しにしてしまっているに違いない。
今まで何度も見られてきたし、見せてきたところではあるけれど、でもやっぱり……。
こんな、こんな恥ずかしい格好で、ソコを見られるというのは、どうしようもなく……。
「早速、感じてるみたいだな」
「……んっ……」
黒川の言葉に、思わず身体が震えてしまう。はずみで、アソコからトロッと零れ落ちていくのが、自分でも分かった。
「さっき、オレに何て言った? もう一度、言ってみな」
「あ、あぁぁ……」
胸の中に、ついさっきの自分の姿が蘇る。その時に感じた快楽が、私の頭を痺れさせる。
「私は……」
黒川の命令と言うよりも、私はむしろ内なる欲求に突き動かされて、口を開いていた。
「私は、恥ずかしい、格好で……、あ、んぁっ!」
黒川が、固く尖った乳首を指先で弾いた。痛いほどの鋭い刺激にも、私は喘ぎ声を漏らしていた。
「恥ずかしい格好で?」
「あ、あぁ……、は、恥ずかしい、格好で……」
黒川が、私の胸を揉みながら先を促す。私は、胸元から全身に広がっていく疼きに耐えながら、どうにか言葉を続けた。
「恥ずかしい、場所を……、んぅっ! あ、ば、場所を、見られて、き、気持ち良く、なって、ます……っ」
言い切った私は、全力疾走の後のように、ガクッと力が抜けてしまった。
汗をかき、荒い息を吐く私の頭の中では、自分の言った言葉が木霊し続けていた。
気持ち良い気持ち良い気持ち良い気持ち良い…………。
「あっ、あっ、あぁぁぁっ!」
私は堪らず叫んでいた。
もっと、もっともっと気持ち良くなりたい。
私は身体を揺すって、黒川に懇願していた。
「お願い、お願いですっ、私……っ」
「分かった分かった。ちゃんと言えたんだからな。今、褒美をやるよ」
次の瞬間、私のアソコに何かが突き立てられていた。
「くぅぅっ!」
思わず、腰が踊った。
今まで刺激を求め続けながら、放置され続けてきたその場所。そこに埋め込まれたモノが、鈍い振動を送り込んでくる。
最初の衝撃が収まって、ようやく私は、それが指ではないことに気が付いた。指と違って、もっと硬く、無機質な感じがする。それが、微弱なバイブレーションを続けている。
「あ、あの……、んっく。こ、これって……」
頭に浮かんだのは、ローターだった。けれども、それであるはずがない。だとしたら、いったい……?
不安になる私に与えられた答えは、意外なものだった。
「いいだろ? さっき見つけたんだ。電動歯ブラシ」
「で……? あ、あぁぁ、電動……っ」
「ああ。どうして保健室にあるのかは知らないけどな。でも、丁度良さそうだったからさ」
「くふぅっ! あっ、あぁぁっ、あっ、やはぁっ! うんっ、あぁっ!」
黒川が、その歯ブラシで私の中を掻き回した。
快感が鋭い電流となって、私の背中を駆け抜ける。
クチュクチュと掻き乱された愛液が溢れ出て、シーツを濡らしていた。
「よしよし、大丈夫みたいだな。それじゃあっと」
「うんっ!」
電動歯ブラシが、グッと奥の方にまで差し込まれてきた。けれどもその振動はあまりに弱く、もどかしさが募る一方だった。
「ふふふ……」
私が腰を揺するのを見て、黒川が笑った。そんな風に笑われても、私は腰の動きを止めることができなかった。もっと、もっと強い刺激が欲しかった。もっと乱暴にして欲しかった。
「あ……。え?」
私が、淫らなお願いをしようとした時だった。
私の身体に、毛布がかけられた。肩までスッポリと。
「あ、あの……」
「じゃあ、オレは授業に戻るから」
戸惑う私に、黒川は平然と言ってのけた。私がその言葉の意味を理解するのには、数秒の間が必要だった。
「あ、ま、待って!」
黒川の離れる気配を感じた私は、呼び止めようと必死に叫んだ。と突然、力強い腕でベッドに押さえ込まれてしまった。
黒川が、噛んで含めるようにゆっくりと話し掛けてきた。
「授業が終わったら、迎えに来る。それまで大人しく、待ってるんだぞ」
「で、でも……」
そう言われても、私の不安が消えるわけはなかった。
けれども、今の私に反論は許されない。私は黒川の命令には従うしかないのだから。ただ、その中でできる最大限の意思表示、慈悲を乞おうと私は口を開いたが、黒川は無視して言葉を続けた。
「今、オマエを縛ってるのは包帯だからな。無理に動けば簡単に解けるはずだ」
「…………」
私は、唾と共に自分の言葉を飲み込むしかなくなってしまった。
「脱がせた下着なんかも、毛布の中に入れておいた」
「…………」
そう言われても、私に言葉はなかった。
私はどうしたらいいのか。黒川は、私に何をさせたいのか。それだけを考えていた。全神経を、黒川の言葉に集中させていた。
けれども黒川は、明確な指示は出してくれなかった。
「授業が終わったら、迎えに来る。それまで大人しく、待ってるんだぞ」
最初と同じ言葉を繰り返し、私の頭を撫でた。
そして、黒川は、保健室出て行った。
間仕切り用のカーテンが引かれる音。遠ざかる足音。ドアが開いて、そして閉ざされる音を、私は何もできないまま、どこか遠くに聞いていた。
「……はぁ……はぁ……はぁ、ぁ……」
一人取り残された保健室に、私の荒い息だけが響いていた。
パニックを起こしても不思議じゃないこの状況で、そうはならなかったのはやはり、私が黒川に縛られていたからだ。
肉体的にもだけれども、何よりもそう、精神的に。
迎えに来るから、大人しく待っていろという、まるで他愛のないその言葉が、私のすがるよるべだった。
あるいはそれは、強迫観念だったのかもしれない。命令された以上、守らなくてはいけない、という。
もちろん、最初は不安で仕方がなかった。黒川は出て行くフリをしただけじゃないかという想いに一縷の望みを託して、じっと息をこらえて様子を窺ったりもしてみた。
けれども黒川は本当に出て行ってしまっていて、それを察した時には、さすがに泣きそうになってしまった。
いや、怖くて本当に泣いてしまった。目隠しをされ、縛られ、一人で放っておかれているのは、とてもとても怖かった。外を通る車の音にさえ、私はビクッと身をすくめていた。
私は嗚咽を漏らしながら、ただただ黒川が帰ってくるのを待っていた。包帯を解こうという考えは、まるで頭に浮かんでこず、ただ黒川の帰りを待っていた。
そんな時、その音が耳に入ってきた。
かすかな、かすかなモーターの音。低く唸る機械音。
そこで私は、ハッと気が付いた。
今、自分がどのような姿でいるのかを。
私が恐れるべきものは、一人きりということではなくて、誰かに見られるかもしれない、ということに。
そう。私は今、とても他人には見せられないような、破廉恥極まりない格好をしているのだ。
包帯で、両目に目隠しをされている。
両腕を、背中で括られている。
体操服もブラも捲り上げられ、胸が露わになっている。
両足も、曲げた状態で縛られている。
そしてアソコには、電動歯ブラシがささっている。
どこからどう見ても、立派な変態に違いない。
目隠しされた顔以外は、確かに毛布の下に隠されている。けれども、横になっているにしては、その姿勢が不自然すぎるのが一目瞭然だ。
万が一、入ってきた誰かがカーテンを開けて、私の姿を見つけたりしたら、私は何て答えれば良いんだろう。
万が一、毛布を剥ぎ取られたりしたら……。
「……んっく」
私は、音を立てて唾を飲み込んでいた。
こんな、恥ずかしい姿を、誰かに、見られ、たら……。
そう思った時だった。
ブ……ブブ……ン……。
「ひんっ!」
私の中に埋め込まれたモーターの音が、なぜか大音響となって私の耳に響いてきた。ささやかなはずの振動が、激震となって私を揺さぶった。
「あっ、ああっ! っくぅぅっ!」
反射的に、私は縛られた身体に力を込めるようにしていた。すると、アソコもギュッと締まったからだと思うけど、モーターの音が止まってしまった。
「……あ? ……はぁ……。あぅっ!」
ホッとした私が緊張を解くと、すぐにまたモーターの音が響きだし、私を責め苛んできた。そしてまた条件反射のように身体に力が入ると、モーターは止まってしまう。
本当は、その程度の弱い動きしかしていない、ということだったわけだ。
「はぁ、はぁ……、は……」
私は、アソコにだけ力を込めるようにしておいて、身体からは力を抜いていった。
ふぅと息をついた私は、実は問題は何も解決していないことに、改めて気が付いた。
「……ぅ……ぅぅ……」
もし、誰かに見られたら。
その思いが甦ってきて、私の心臓をキュッと鷲掴みにした。
「ぁ……ぅ……」
息が苦しい。
私はいつの間にか、全身に汗をビッショリとかいていた。
こんな、姿を……。
もし、もしも誰かに、見られたり、したら……。
『恥ずかしい思いをさせられると、感じるんだろ?』
「ふぐっ!」
不意に、頭の中に黒川の声が響きだし、私は息を呑んだ。
頭の中で、黒川が私を見て笑っていた。
『本当は、誰かに見て欲しいんじゃないのか?』
「そ……んな……、違……」
妄想の言葉に、私は一所懸命に反論を試みていた。
『でも、恥ずかしいのが気持ち良いんだろ?』
「ぅ、ぅぅぅ……、っくふぅ……」
『本当は、友達にも見て欲しいんだろう? どうなんだ?』
「いぁぁ……、ぁ、うぁぁぁ……っ」
私は呻きながら、首を小さく横に振っていた。それはきっと、否定の意を表すというよりも、快感に翻弄されている姿に見えたに違いない。
『ホラ、見ろよ。お友達を呼んできてやったぞ』
「……え……?」
妄想の中に、新たな映像が加わる。
さっき、体育館で私とおしゃべりに興じていた友人たちの姿。
彼女たちが、私を見ていた。指差しながら、笑っていた。
『うっわ〜〜っ! 良くやるよねえ』
『恥ずかし〜〜。信じらんない。マジ、変態入ってる?』
『怪しいとは思ってたけど、まさかここまでとはねえ』
「いやっ、いやぁっ!」
思わず叫んだ私は、激しく頭を振っていた。羞恥の極みに、私は身を捩じらせて悶えていた。
そして、その度に、私の秘所は蜜を溢れさせていた。
妄想の中の友人たちの視線が、私の肌を刺す。私のアソコを射抜く。
それが強烈な快感となって、私はベッドの上を転がった。
私は気付いていなかったが、包帯での拘束など、とっくに緩んでしまっていた。にもかかわらず私は、己の秘所をさらけ出す恥ずかしい姿勢を崩していなかった。
膝を曲げ、足を開き、両手は後ろ手組んだ恥ずかしい姿を、妄想の中の友人たちに見せつけていた。
そうしておきながら、私は友人たちに泣きながら頼んでいた。
「お願い、見ないで……」
そう言ってすすり泣く。泣きながら私は、ますますアソコを熱くさせていた。
そんな時、妄想の中の黒川が、私に追い討ちをかけてくる。
『本当に、見なくて良いのか?』
「あ、あぁぁ、だって……、でも……」
私の顔を覗き込んでくる黒川に、私は涙ながらに訴えていた。
『本当は、この歯ブラシも動かして欲しいんだろう?』
「ひぁぁっ!」
妄想の中で、黒川の手が歯ブラシを揺さぶる。
私は、それを現実のことと錯覚して悲鳴を上げていた。
ふと、黒川の表情がほころんだ。私の身体の下に、黒川の手が潜り込んできて、背中で括られている私の手を握った。
『言えるだろう?』
「ぁ……あぁ……、わ、たし……」
私は、求められるままに、恥ずかしい言葉を紡ぎ始めた。
丁度、その時だった。
ガラッ。
「…………っ!?」
妄想の中に溺れていた私の理性が、どうにかその音を聞きつけ、私の意識を一気に覚醒させた。
まさか、まさか本当に誰かが入ってくるなんて。
頭は冴えたが、身体は凍りついていた。いや、頭が冴えたという言い方もおかしい。だって私は、こんな状況になっても、毛布の下では黒川に取らされた姿勢を保っていたのだから。
「………………」
私は必死に息を殺し、侵入者に気付かれまいとした。
もし、もし万が一、こんな姿を見られたら……。
私は全身を縮こまらせて、恐怖に震えていた。
「ん?」
怪訝そうな声が聞こえた。
その声に、思わず叫んでしまいそうになるほど、私は驚いてしまった。
どうか、どうか私に気付いたんじゃありませんように。
そんな私の願いも虚しく、足音が私の方に近付いてきた。
私は泣き出しそうになるのをどうにか堪えて、いよいよベッドの上で小さくなっていた。
そして――。
シャッ。
勢い良く、カーテンが開けられた。
続いて、口笛を吹くような音が私の耳に届いた。
「……っあっ! ……あぁぁぁぁぁっ……!!」
限界に達した私は、ついに失禁までしてしまっていた。
けれど、それを認識することなく、私の意識は闇の中に吸い込まれていった。
「……ぅ……、ぅぅぅ……ぁ……?」
「よう、気が付いたか?」
眩しさに呻き声を上げると、聞きなれた声が聞こえた。目を瞬かせていると、見なれた男の姿が徐々に像を結んできた。
「……黒、川?」
私が呼びかけると、黒川はかすかに口元をほころばせた。
「だけどまあ、相変わらず見事に順応してくれるよな。まさかここまで放置プレイに反応してくるなんて、思いもしなかったよ」
「放、置……? ……はっ」
私は慌てて跳ね起きた。
そこですぐに、違和感を持った。
身体が、動く。
「……あれ?」
服にも、乱れはなかった。
恐る恐る股間に手を伸ばしてみたけれど、濡れた様子はまるでなかった。
まさか、全部夢だった?
いや、でも黒川は、確かに『放置プレイ』と……。
「ね、ねえ……、黒川?」
「ああ、うん。でもさすがに、刺激が強すぎたみたいだな。後始末してやってる間も、全然起きなかったし」
…………と、いうことは。
やっぱり夢オチなどということはなく、私は……。
「あの、さ……。後始末、って……」
「大丈夫だって。オレ、先生とはちょっと知り合いだし。漏らしたことだって、ちゃんと処理しとくって」
「…………漏らし、た……」
「ああ」
黒川は簡単に頷いた。
「…………」
「覚えてないのか?」
覚えてるに決まっている。ただ私の身体は固まってしまっていて、答えるどころか首を振ることさえできないだけだ。
そんな私に、黒川はとうとうと説明してくれた。
「言っとくけど、オレが保健室から出てたのは、ほんの数分だぞ。その間も、ドアの前に立ってたんだし」
「…………」
「で、中に入ってカーテンを開けると、まあそうなったと」
「……………………」
「さすがにアレだったんで、タオルで身体を拭いてやって、隣のベッドに移して、服を調えて寝かせたんだよ」
……なるほど。私が夢かと疑ったのは、私が気絶してる間に、そんなことになっていたからか。
だけど、だけど……。
「黒川、さ。アソコも、拭いたん……だよ、ね?」
「ん?」
「だから、その、私が……」
「ああ、うん。そうだよ?」
「………………っっ!?」
私は悲鳴を上げることもできなかった。代わりに毛布を頭から被ると、ベッドの上で小さくなった。
「おいおい、今さらそんな恥ずかしがるようなことか?」
デリカシーのない黒川が、呆れたように言った。
恥ずかしいに決まってる。
それとこれとは、まったく別の話なんだから。
例え、そこを何度も見られてようが、何度も舐められたことがあろうが、それはそれ、だ。
そんな、そんなことまで、されてたら、私は……。
恥ずかしくて死にそうだった。
顔が、火を吹くように熱い。
「ぅぅ……、ぅぅぅぅぅ…………」
その様子を想像してしまい、私はすすり泣いた。
おもらしをして、気絶した私。
グッタリとした私の身体を、黒川がタオルで拭いていく。
……に濡れた、アソコも、丁寧に。
「……うぅぅ、ぅぅぅぅぅ……」
私は、本当にどうしようもない変態になってしまっていた。
身体が、熱い。
恥ずかしい、というだけではなく。
黒川に拭き清められる、気絶した自分の姿を想像しただけで、私は濡れてきてしまっていた。
「おい、ホントに大丈夫か?」
答える代わりに、私はガバッと跳ね起きた。
チラリと時計を見ると、驚くくらいに時間は経っていなかった。
授業が終わるまで、十分な時間があった。
私は、涙をにじませた瞳で、黒川を睨みつけた。
私につられて時計に視線を向けていた黒川も、私に向き直った。
黒川は私の目線を受け止めると、フッと笑った。
黒川の顔が、スッと近付いてくる。
私は、目を閉じた。
私の震える唇に、黒川の唇が重ねられた。
|