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淫乱で…
作:死に逝く翼





 黒川には、何度も何度も抱かれているというのに、裸を晒すのも初めてではないというのに、それはやっぱり恥ずかしかった。一糸まとわぬ私の肌を、黒川の視線が舐めるたびに、私は肌があわ立つのを感じていた。
 身体が火照って、どうしようもない。
「相変わらず、キレイな身体だよな」
「…………」
 黒川は、素直に、本当に素直に私を誉めてくれる。それが余計に私の羞恥を煽って、私は顔を赤くしてうつむくのだ。
「よし。じゃあ始めようか。後ろを向いて、手は背中で組んでな」
 いよいよ、だ。
 私はゴクリとのどを鳴らして、唾を飲み込んだ。
 それから、言われたとおりに黒川に背を向けて、両手を背中で組み合わせる。
 緊張と興奮で、心臓がバクバクと大きな音を立てていた。
 背後に、黒川が立つのを感じた。


「ちゃんと、縛ってみて、欲しい」
 そう誘ったのは、やはり私の方からだった。
 黒川に抱かれるようになって、私の性欲はいよいよ底が抜けてしまっていた。遊び程度のソフトSMでも立派に感じるのだけれども、それでも私は、その先への興味を断ち切ることができなかった。
 黒川に、泣き叫ぶほどの快楽を刻まれたその日の晩にさえ、私は自室のパソコンでSM画像を見て回っていた。
 そして、縛られた女性たちの姿を自分に置き換え、私はオナニーをしていた。
 黒川に縛られ、嘲われ、いたぶられる姿を頭に描きながら、自慰に耽っていた。
 それは、今までにないほど私を興奮させ、快楽を与えてくれた。
 けれども、私は。
 私はもう、妄想だけでは我慢できなくなっていた。


「んっ……」
 背中で組んだ腕が、キュッと縛られた。
 これでもう、私はロクに抵抗ができない。万が一、黒川が私の嫌がるようなマネをしようとしても、私には、逃げることもできない…………。
「いい顔するよな、本当に」
 耳元で笑われて、私はハッと顔を上げた。嬉しそうな黒川と目が合ってしまい、今度は慌ててうつむいた。
「腕を縛られただけで、もう感じてるのか?」
「そ、そんなこと……」
 口では否定していたが、もちろん感じていた。これから始まることへ期待と興奮で、私は全身が熱くなっていた。
「まあ、安心しろよ。素質が十分なのは知ってるからな、必ず感じさせてやるから」
 揶揄するような黒川に、私は唇を噛み締める。
 そんな私に、黒川は手際よく縄をかけていく。二の腕に縄を巻きつけ、乳房を上下から縛り上げてしまう。
 どこでこんな技術を身に付けたのかと感心するほど、黒川は見事に私を緊縛してしまった。
「んっ……ふぅ……」
 最後に縄を引き絞られ、私は吐息を漏らした。
「どうだ? 苦しいか?」
「そんな……には……」
 全然苦しくないと言えば、嘘になった。けれども、思ったよりかは苦しくない。縛られて苦しいというより、縛られているという現実が、もう自分で自分の身体を思うように動かせないという事実が、私にとっては、私には…………。
「すっかり、その気になってきてるな」
「うぁっ!」
 上下から絞り上げられ、疼いていた乳房を鷲づかみにされ、私は思わずのけぞった。
「乳首だって、気持ちいいからこんなになってるんだろ?」
「んっ! んあぁっ!」
 固く尖った乳首を摘ままれると、それだけで全身がギクンと引きつるような電流が走った。
 けれども、そんな身体の反応を、肌に食い込む縄が、強引に押さえ込んでしまう。
「あっ……はぁっ、うぅ……」
 快楽の電流は外へ流れて行かず、私のうちに還流する。私は焦れったくて、もどかしくて、まだ自由に動ける足をすり合わせて、どうにか電流を流そうとしていた。
「胸だけでそんな感じてると、後が辛いかもな」
「え? あ……」
 胸を弄っていたはずの黒川の手には、別の縄があった。それが、私の腰に回されていく。それから……。
「さて。じゃあ行くぞ」
「んんっ、んくぅぅっ!!」
 股間に、縄が食い込む。それは、突き上げるような快感となって、私に襲いかかってきた。私は逃れるように、縛られた身体を弓なりにそらせ、背伸びまでしていた。
 黒川は、そんな私を追いかけるように、グイグイと縄を引き絞っていく。
「あ、は、あ、あ……」
 私が口をパクパクと喘がせてるうちに、黒川は私を縛り終えていた。股間に通された縄は、私の腕を縛る縄と結ばれたらしく、私が少し動いただけでも、その衝撃が股間を割り開くように伝わってくるのだ。
「はぁ、あ、あぁぁ……、こんな……」
 私は涙に濡れた瞳で、背後に立つ黒川を振り仰いだ。
「だいぶ、具合が良さそうだな」
 黒川がニヤリと笑ってそう言った。
 私は唇を噛み締めて、うつむいてしまった。その私の耳元に、黒川が囁きかけてきた。
「いいじゃないか、素直に悦べば」
「…………」
「ふふふ。ホラ」
「ぐぅっ!」
 黒川が、痛いほどにしこった私の乳首を、両方いっぺんに、指先でねじり上げた。
 鋭い電流が駆け抜け、私は縛られた身体をよじらせた。
 そして……。
「あ、ああああぁぁっ……!!」
 私は自分で自分の股間を締め上げ、絶頂へと押し上げられていた。
「おっと」
 崩れそうになった身体を、黒川が抱きとめてくれた。そしてそのまま、床に寝転がされてしまう。
「はぁ……、あ……、はぁ……」
 ロクに身動きできない熱い身体を、冷たいフローリングに横たえる。そんな私に、黒川はさらに縄をかけ始めた。両足を、足首の辺りと膝の上の辺りとで括ってしまったのだ。これでもう、足を開くこともできない。
 けれど私は、ただボンヤリと、どこか遠くに、縛られるのを肌で感じているだけだった。
「さて。お望みどおり、これで完成だ」
「え? あ……」
 黒川の声が、霞みがかった私の意識を急速に覚醒させた。
 そして私は、全身に縄を纏った自分を発見した。後ろ手に縛り上げられ、胸を搾り出され、股間を割り裂かれ、両足は巻き締められている。まるで思うように動かせない、緊縛された身体。
 ブルッと、思わず身震いした。そのわずかな動きすら、縄が私の自由を奪っていることを、強く意識させられた。
「あぁ……、私……」
 そうだ。
 私は、この感覚が欲しかったんだ。
 縛られて初めて、私はそう実感していた。
「はは。いい顔してくれるよ、ホントに」
 恍惚となる私を、黒川が見下ろしていた。私は、なぜか急に恥ずかしくなって、黒川から目をそむけていた。
「なあ。自分が今、どんな格好をしてるか分かるか?」
「…………」
 私は黙ったまま、小さく頷いた。
「そうか。でも、それがどんなに色っぽいかは、見てみないことには分からないだろ?」
「……え?」
 また、鏡でも持って来てくれるのかと思って、黒川に目を向けた。
「やっ、ちょっ!? それはっ!」
 私はさすがに慌てた。
 黒川は、いつの間にかカメラを構えていたのだ。
「いやっ、撮らないでっ!」
 黒川は、無常にもシャッターを切った。
 フラッシュが、私の視界を白く染める。
「あ、あぁぁぁぁ……」
 私はすすり泣いた。
 こんな、こんな姿を撮られるなんて。
 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい…………。
 そんな私の耳に、再びシャッターの下ろされる音が届き、同時にまた、フラッシュが瞬いた。
「いや、いやぁ……」
 私はカメラから逃れようとしたが、縛られた身体ではロクに寝返りさえできなかった。横向きになった身体を丸め込むのが精一杯だ。けれどもその動きは、股から腕に繋がれた縄によって阻まれてしまう。
 私はどうすることもできず、ただ裸身をさらけ出していた。
 そんな私に、またフラッシュの光が浴びせられる。
「うぅ、うふ、うぅぅぅ……」
 シャッターが切られるたびに、私は身体を震わせる。
「さすがだな。どんどん溢れてくるよ」
「…………え?」
 何を言われたのか、本気で分からなかった。
 戸惑う私に、フラッシュが襲う。
「あぁっ」
 また1枚、恥ずかしい写真を撮られた。
 私は絶望に泣き声を上げる……。
 絶望に……?
「縛られるのが、そんなにいいのか? それとも、カメラか? 両方?」
 そう言いながら、黒川が再びシャッターを切る。
 閃光。
 震える身体。
 嗚咽。
「どっちかって言うと、カメラかな? シャッターに合わせて、ドクッて湧いてきたもんな」
「う、うそ……」
 呟く私に、再びシャッターが切られる。
「あぁっ」
 叫んだ私は、慌てて口をつぐんだ。
 今の声は、どう聞いても…………。
「股縄の上からでも、ひくついてるのが分かるぞ、ホラ」
「ひっ!」
 股間から、顔の方に向かって、カメラのフラッシュが走った。
 ……その時、私は確かに、自分の身体が脈打つのを感じ取った。
「写真を撮られて、感じてるんだろう?」
「そ、そんなこと……ふぁっ!」
 否定の言葉の途中で、再びフラッシュ。
 私は思わず、喘ぎ声を上げていた。
「あ、あぁぁぁぁ。こんな、私……、嘘……」
「分かるだろう? 自分でも、濡れてるのがさ」
「ひっ!」
 シャッターの音に、私はビクッと身体を震わせる。
 その拍子に、アソコから溢れ出るのが、自分でも分かった。
「大したもんだよ。まさかカメラにも、こんなに反応するなんてな」
「違……、私……」
 それでも否定する私に、再びフラッシュが浴びせられる。
 その強烈な光に、私は身をくねらせていた。
「感じるんだろ? 興奮するんだろ? 写真を撮られて」
「あぁぁ……」
 私がどれだけ淫乱で、エッチが大好きで、SMにも興味があったとしても、それでも素直に頷けなかった。頷いてはいけないような気がしていた。
 けれども、そんなちっぽけなプライドだか理性だかは、黒川の前ではまるで無力だった。
「Yesでないなら、Noなのか?」
「ぅ……ぁ……?」
 黒川が、私の顔の脇にしゃがみ込んできた。私は、首を動かして黒川を見上げた。
「まあ、今日は縛りを入れてくれって話だったし。それはもう終わったもんな」
「…………」
「確かに、カメラを持ち出したのは、オレの悪ノリだよ。悪かったな。今日はもう終わりにしよう」
「……え……?」
「終わりだよ、終わり。ちゃんと縛ってやったんだし、もう満足しただろ?」
「そ、そ……れは、でも……あぁぁっ!」
 戸惑う私に、フラッシュが襲い掛かった。ビクンと、反射的に私は身体を震わせていた。
「あぁ、あぁぁぁぁぁ……」
「恥ずかしい姿を撮られて、感じてるんだろう?」
 すすり泣く私の耳元で、黒川が囁いた。
 その言葉は、ストンと私の胸の奥に滑り込んでいった。
「写真を撮られるのって、気持ちいいだろう?」
「…………」
 私は、コクンと頷いていた。
「だったら、どうするんだ?」
 私は、促されるままに口を開いていた。
「……わ、私の、写真……」
「写真? 何の写真だ?」
「私の、恥ずかしい写真を……」
「写真を?」
「いっぱい、撮って、ください」
「ふふふ」
 黒川に頭を撫でられ、私は甘えたように鼻をすすった。





「はあっ! あぁぁぁっ!」
 私は、カメラに犯されていた。
 足の拘束を解かれた私は、自分からバックの姿勢を取った。膝を立て、お尻を突き上げる。両手は背中で縛られたままなので、上体は肩と顔で支えていた。
 そんな不自由な体勢ながら、私はカメラの前でお尻を振りたくっていた。縄の食い込んだ股間を、カメラの前にさらけ出していた。
「んあっ! あぁぁっ!!」
 フラッシュを浴びて、私は絶叫する。光は電流となって、私の身体を駆け抜けていく。その快楽に身悶えする私を、縄がきつく戒める。その感覚がまた、私に嬌声を上げさせるのだ。
「ふぁぁっ! 私っ、私ぃっ!!」
「いいのか? 写真を撮られるのが、そんなにいいのか?」
「あぁぁっ、いい、いいですっ!」
 シャッターの音が、フラッシュが、実感を伴って私の身体を貫いていく。
「あぁぁ、もっと、もっと撮ってぇっ!」
 私は泣きながら首をよじって、後ろでカメラを構える黒川を見やった。
 そんな私に、容赦なくフラッシュが浴びせられる。
「ひぁぁぁぁぁっ!」
「イクのか? 触られもしないで、写真を撮られてるだけで、ホラ、イクのか?」
 黒川がそう言いながら、シャッターを切りつづける。
 間断なく浴びせ続けられる閃光に、私の意識も白く染め上げられていく。
「あ、あぁぁっ、イクっ! イクイクイクっ、イっっ、いあぁぁぁぁっ!!」
 そうして私の意識は、白い光の中に溶けていった。





「ん……、ふぁ、あ……」
「ふふふ。イヤらしい顔だよな、本当に」
 黒川に笑われて、私は恥ずかしさのあまりに顔をそむけてしまう。
「自分の写真なんだから、そんなに嫌がらなくても」
 言いながら黒川は、私の中に埋めた指で、中の襞々をクッと引っ掻いてきた。
「ふぁっ、あっ」
 私の身体が、黒川の腕の中で跳ねる。そんな私の目の前に、黒川は次の写真を突きつける。
「ホラ、な?」
 嬉しそうな黒川の声。
 私はやっぱり恥ずかしくって、顔をそむけてしまう。


 少し、説明しようか。
 私が絶頂の余韻に浸っている間に、黒川はサッサと次の準備を済ませていたのだ。
 つまり、写真をその場でプリントアウトしたわけだ。
 そして、余韻の冷めやらない私をベッドに抱き上げると、早速、写真の品評会に移ったわけだ。
 私は、股縄を外された代わりに、足を大きく広げて座らされていた。そんな私を、後ろから抱きかかえるような形で、自分も裸になった黒川が座っている。
 そして黒川は、右手で私の身体をもてあそびながら、左手で私に写真を見せ付けてくる。
 私はつくづく、この男の性格の悪さを痛感していた。


「ホラ、ちゃんと見なよ」
「んあっ!」
 黒川が、親指でクリトリスを軽く押し揉んだ。甘く鋭い電流が走り、私は縛られた身体を揺すった。
 さっきイッたばかりだというのに、私の身体はもう、疼いて仕方がなかった。縛られた乳房が、弄られる股間が、熱くて堪らなかった。
「ホラ、これは胸のアップだけどさ。これだけでももう、十分ヤらしいよな」
「ぅ……」
「こっちはこっちでまた。この泣きそうな顔がさ」
 黒川は私に写真を見せつけながら、イチイチ感想を言ったりする。そしてその間も、右手で私のソコを触り続ける。
「あ、も、もう……っ」
 私は踵でシーツを引っ掻くと、頭を黒川の胸板にグリグリと擦りつけた。
「ん? 恥ずかしくって見てられないって?」
「違……あっあぁぁっ!!」
 黒川が、私の中に2本目の指を埋めてきた。
 クチュクチュと、イヤらしい音が響きだす。
「お願……い。もう……」
「もう?」
 私は焦れったくて歯がゆくて仕方がないのに、黒川は余裕綽綽で聞き返してくる。だけどもう、私には黒川を睨みつける余力はなかった。
 欲情しきった身体を持て余した私は、涙目で黒川にすがった。
「……入れて、ください」
「何を?」
 黒川が、優しく聞き返してくる。微笑みながら。乱れた私の髪を撫で付けながら。
 さすがに、言葉に詰まってしまった。
「何を?」
「オ……オチ×チン」
 重ねて問われて、私はためらいがちにその単語を口にした。そして、一度口に出してしまえば、もうためらう必要はどこにもなかった。
「オチ×チン、オチ×チンを入れてぇ……っ!」
 喉を引きつらせて、私は黒川を求めた。その私の首筋に、黒川がカプリと噛み付いてきた。
「ひあっ、あっ、あっ!」
「そっちから言い出したんだから、自分でやってみな」
「あ、あぁぁ、はいっ、はいっ!」
 私が肩を震わせて頷くと、黒川の身体が私から離れていった。振り返れば、黒川はベッドに寝転がっていた。
 そして、その股間には――。
「自分でやるんだろう?」
「あ、あぁぁっ」
 私は、ようやく餌にありつけた子犬そのものだった。恥ずかしがることもなく、むしろ喜び勇んで身体の向きを変えると、黒川に向かい合うようにしてその身体をまたいだ。
 そして、ゆっくりと腰を落としていく……。
「あっ、いやっ、いやぁっ!」
 入らない。
 両手は背中で括られたままなので、手を添えるということができない。だから狙いが定まらないし、そもそも角度が合わないのだ。
 黒川のものは、私の入り口付近をいたずらに撫でるだけで、一向に入ろうとしない。
「あぁっ、あっ、いやぁぁっ、やっ」
 それでも私は、何度も入れようと努力した。
 グッと天井を見上げ、歯がゆさを必死に噛み殺す。肩で大きく息をして、呼吸を整える。最後に大きく息を吐くと、顔を下に向けて目標を捕らえる。
 そして、ゆっくりと腰を落としていく。
「うぁ、うぁぁぁぁ……」
 けれど、どう足掻いてみても、それを入れることは叶わなかった。
「あぁぁっ! もう、もうダメぇっ! いやっ、入れて、入れて入れてぇぇっ!!」
 私は涙を零して叫んでいた。
 全身が、むず痒いような、チリチリとした焦れったさに炙られていた。それを解消する方法は分かっているのに、後少しで手が届かない。
 私は黒川の上に座り込むと、その胸に顔を埋めてすすり泣いた。
「お願い、入れて……、入れて、入れてぇ……」
「やれやれ。仕方ないな」
 黒川が、私の身体をそのままヒョイと脇にどかしてしまった。そして、だらしなく座り込んだ私の腰を抱え上げた。反動で、私はベッドに突っ伏してしまった。
 そして……。
「くあぁぁっ! いっ、ひぃぃぃっ!!」
 後ろから貫かれ、私は泣き叫んでいた。
 全身を包んでいたむず痒さが、一瞬で消えうせた。
「いっ、いぎっ、いあぁっ!」
 全身がバラバラになりそうだった。
 それを、ギチギチに締め上げられた縄で、ようやく一つにまとめられているよう。
「いやっ、いやぁぁっ! こんなっ、こんなのってぇっ!!」
 私は髪を振り乱して、悶え狂っていた。
 縛られた不自由な身体の、その奥の奥まで黒川が突き進んでくると、瞬間的にフッとした落下感に見舞われる。
「あっ、いいっ、イッ、イキそうっ!」
「何だ、もうイクのか?」
 黒川が、ドンっとばかりに私を突き上げる。
「ひっ、ひぃっ、いっ、あっ、いはぁっ!」
 その一撃が、私を奈落の底へと突き落とした。
 1本の縄で繋ぎとめられていた私の身体はバラバラに砕け散った。
 自分が自分でなくなりそうな、その瞬間。
「くあああ! いいっ! いいいぃぃぃっっ!!」
 一転して、身体が急上昇していく。
「あぅあぁうぁぁぁっ!」
 もはや言葉に意味はなく、ただただ喘ぎ続ける。
「ホラ、自分ばっかりよがってないで、締め付けてみろ」
「あっ、あぁっ!」
 天啓のように響く黒川の声。
 私はわけも分からず、言われるままに腰に力を入れた。途端に、私の中で黒川が膨れ上がった。
「ふっ、ふはっ、そうだ、イイぞっ」
「うっ! うあ、あっ! あうぅっ!」
 いいのは私も同じだった。私は今、中の襞々のすべてで、細胞の一つ一つで、黒川を感じ取っていた。
 黒川が、いよいよ腰の動きを早めてきた。
「そ……ろそろ、オレも、イクぞっ!」
「き、きてぇっ! 私も、私もイキそうぅっ!」
 そう叫んだ瞬間、背中に熱い熱湯を浴びせられたような感覚があった。
 そしてその熱が、私の意識を蒸発させていた。
「っっぐぅあぁぁぁっっ……!!」
 私は意味のない叫び声を上げ、髪を振り乱し、縛られた身体を痙攣させながら、絶頂への階段を駆け上った。





「やれやれ。ちっと激しくしすぎたかな?」
「ん。大丈夫」
 私の身体には、キッチリと縄目が残ってしまっていた。
 そっと指先でなぞると、ゾワッと鳥肌が立ってしまった。
「肩とか大丈夫か? けっこうキツイんじゃないか?」
「大丈夫だってば」
 気遣う黒川に、私は照れもあって、少し乱暴に答えていた。
「ま、それならいいけどさ。とりあえず、シャワーでも浴びてこいよ」
「ん」
 頷いた私は、ゆっくりとベッドに身を起こした。そこで私の目はようやく、散乱した写真を捉えた。
「あ…………」
 私は、顔を真っ赤にして目をそらしていた。
「ああ、それな。どうする?」
「……え?」
「こっちで処分しとこうか? あと、デジカメのデータも残ってるけどさ」
 私は、チラリと写真に目を走らせた。
 それは、信じられないくらいに卑猥な写真だった。
 私は、オズオズと写真に手を伸ばして、拾い上げた。
 それは、この上なく淫らな写真だった。
「…………」
 ジワッと、身体の奥から何かが溢れてくる感覚があった。
「…………」
「おい、どうした?」
 それを言うのは、今日ここに来た時、縛って欲しいと頼むのよりも、恥ずかしいことだった。
 けれども、我慢などできるはずもなかった。
「……ねえ、黒川」
「ん?」
「時間、まだ、平気……だよね?」







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