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淫乱で…
作:死に逝く翼





 黒川とは、順調に続いていた。その証拠に、今日も私は黒川のマンションを訪れている。もちろん、Sexをするためだ。
 これまでに、私は何度も黒川に抱かれていた。それらは、すべて私から誘ってだ。どれだけ頑張ってみても、黒川から誘っ
てくることはなかった。では、黒川は私とのSexがイヤなのかというと、そうでもないらしい。その最中には、実に念入り
に私を可愛がってくれる。
 単に黒川は、私を困らせて喜んでいるのかも知れない。実際、黒川が言ったことがある。誘ってくるときの顔が、どうにも
可愛らしい、と。
 そういうサディストじみた男に、私はその告白をすべきか迷っていた。
 それについては、私は前々から興味を持っていた。そして、そのパートナーとして、黒川は考えられる中で最良の相手だと言うことも分かっていた。
 けれどもやはり、それを口にするのは、初めて黒川を誘ったときよりも緊張した。
 ちらりと、ソファーに座る黒川を見た。
 黒川が、少し笑った。
 ……気付かれている。
 私はそっとため息をついた。やはり、逃げ道はないようだ。 黒川は、私が何か言いたいことがあるのを知っているのだ。
おそらく、それが何かも今までの付き合いから見当は付けているだろう。けれでもやはり、黒川から私に誘ってくるつもりは
ないらしかった。
 私は何度も躊躇った後、結局、その言葉を口にした。


「黒川ってさ、SMとかって、興味、ある?」


 言ってしまって、さすがに後悔した。黒川が、かなりイヤそうな顔をしたからだ。私は慌てて打ち消した。
「あっ、いや、別にやりたいとか、そういうんじゃ」
「俺はイヤだぞ。縛られたり叩かれたりするなんて」
 …………。
「はい?」
「どうしてもやりたいってんなら、相手は探してやるけどな。どんなのがいい? 年下? 年上? 中年のオヤヂとか?」
 私は、ガックリと肩を落とした。ついでに思いっきりうな垂れてしまった。
 やっぱり、黒川は私の言いたいことに気付いていたんだ。その上で、私をからかっている。
「あのねえ、そういうんじゃなくって」
「縛られたり、叩かれたりしたいの?」
 ストレートに言われて、言葉に詰まってしまった。いや、確かにそうなんだけども。
「い、いや、でも。その。痛いのとか、いやだし、ね?」
「ソフトSMって奴ね」
「そ、そう。それそれ。どんなのかなーって……」
 そういう私の中では、冷たい悪寒と熱い衝動とが入り乱れていた。黒川が、ニヤリと笑って私を見ていたからだ。不敵な笑み、というヤツかも知れない。まず間違いなく、黒川はその手の行為の経験者なんだろう。
 私は、とんでもない相手にとんでもないことを言ってしまったということに、後悔したり不安を感じている一方で、やっぱ
り黒川に言って正解だった、これから何をされるんだろうと、期待と興奮を感じていた。
「とりあえず、オレの部屋に行こうか」
「う、うん……」
 私は、震える脚でどうにか立ち上がった。




「じゃあ、まずは脱いでもらおうか」
「え?」
 私は、思わず聞き返してしまっていた。
 いつもと同じ、黒川の部屋。
 けれども、ベッドに腰掛けたその主は、いつもと違った雰囲気を持っているように思えた。それを端的に表すような言葉を、黒川は私に投げつけた。断定するように、命令するように。
「脱ぐんだよ、オレの目の前で」
「あ……」
 ようやく、私は気が付いた。今日のプレイは、もう始まっているのだ、と。
 そして、もう一つ気が付いたことがある。私は、命令されているというのに、何の反感も抱いていなかった。反発したり、
歯向かおうという気持ちは、まるで湧いてこなかった。
 私には、身を焦がすほどの期待と、ほんの少しの不安しかなかった。
「…………」
 黒川を見やると、黙ったまま頷かれた。
 私は意を決して、胸元のリボンに手をかけた。
 緊張で震える指先で、結び目を解く。シュルッと音をたてて、リボンを外す。
 どうしようかと思ったが、私はそれを、そばにあったイスの背もたれにかけた。それからまた、黒川の方に向き直る。
 そして、ブラウスのボタンに指をかけた。
 学校指定の、白いブラウス。胸元には校章が入っている。今まで何度となく脱ぎ着してきたこの服だけれど、男の前で、見せるために脱ぐのは、さすがに初めてだった。
 指先が、寒さにかじかむように震えている。ボタンを外そうにも、指が上手く動いてくれない。
 私は震えを抑え込むように、右手で左手の指をギュッと掴んだ。目を閉じて、指をきつく握り締め、それから大きく息を吐
いた。
「ふぅぅ……」
 胸の鼓動はどうしようもなく速く、逃げ出したいくらいに恥ずかしいのは恥ずかしい。それでも、ほんの少しだけ落ち着け
た気がした。
 私は、ゆっくりと一つずつ、ブラウスのボタンを外していった。
「…………」
 無言のままの黒川の、視線が突き刺さって来るのが分かった。
 はだけたブラウスの合間から空気に触れた肌は、瞬間的に冷たさを感じ取っていた。けれどもそこに黒川の視線を感じると、そこはすぐに、どうしようもない熱を私に伝えてくるのだ。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
 ボタンを外し終えた私の息があがっていたのは、緊張や羞恥のせいというよりやはり、興奮と期待のせいだった。
 黒川の様子を窺うと、丁度目が合ってしまった。黒川は何も言わずに、ニヤリと笑って頷いてきた。
 私は目を閉じると、大きく息を吐いた。
 衣擦れの音を立てながら、白いブラウスが、私の肌の上を滑っていった。
「…………」
 男の前で、男に見つめられながら服を脱ぐのは、想像以上に恥ずかしいことだった。相手は今までに何度となく肌を重ね、恥ずかしい部分まで見られているというのに。それでもどうしようもなく、恥ずかしかった。
 ……そして、それ以上に、興奮するものだった。
 見られていると思うだけで、肌があわ立つ。視線を意識すれば、まるでそこを触れられたような感覚が起きて、私の身体はビクッと震えてしまう。
 身体が、熱い。
 恥ずかしくて恥ずかしくて堪らないのに、この刺激がもっと欲しくてどうしようもなかった。
 私は、脱いだブラウスをリボンと同じようにイスにかけると、黒川の方に向き直った。
 胸元を隠すように組んでいた両手を、身体の脇に下ろしていく。下着姿の上半身を隠すことなくさらけ出す。
 それから、閉じていた目をゆっくりと開いた。
「…………っ」
 黒川の視線に正面から射抜かれ、私は思わずよろめいた。黒川と視線を重ねただけで、瞬間的にフッと浮遊感が私を襲っていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 私の吐く息は、すでに喘ぎに近かった。
 そんな私を、黒川は黙って見つめている。そして私は、黒川の視線に突き動かされるように、次の行為に移った。
 興奮のあまり震える指先で、それでもどうにかスカートのファスナーを下ろして、ホックを外した。すとんと、スカートが滑り落ちていった。私はスカートを拾うと、やはり同じようにイスにかけてから、黒川に向き直った。
 ユラユラと、視界が揺れていた。
 それとも、揺れているのは私の身体だろうか。
「さあ、続けてもらおうか?」
 黒川の声が、わーんと頭の中に響き渡った。
 私はコクンと頷くと、背中に手を回してブラのホックを外した。ともすれば霞みがちになる意識の中で、私はほとんど機械
的に肩紐から手を抜き、ブラを取り去った。
 やはりそれを脱いだ服の上に重ねて置くと、私はまた黒川と正対する。見せつけるように。見てもらうために。
「ふーん」
「…………ぁ……」
 黒川の視線が、胸を這うのが分かった。
「乳首がもう、硬くなってるな」
「ぅ……ぁ……」
「自分から誘うだけあって、素質は十分なわけだ」
 黒川が、からかうように笑った。
 私はただ頬を染めて、黙ってその言葉を聞いていた。
「前から思ってたけど、形は綺麗だよな。お椀型ってのかな? 今もちゃんと、垂れずにいるしさ」
「……ん……」
「最初はてっきり遊んでんのかとも思ったけどさ。その乳首の色とかも、全然綺麗だし」
「あ……あぁ……」
 黒川の視線が、言葉が、私を追い詰めていく。胸の奥に、本当に火がついているみたいだ。
「はぁ……あぁ……あ……」
「よし。じゃ、次は下な」
「……ぁぁ……」
 興奮に飲み込まれた私にとって、黒川の言葉だけがすべてだった。羞恥や不安など、とっくに消えうせていた。
 いや。
 恥ずかしさはあった。
 けれどもそれは、興奮を煽り立てるスパイスでしかなかったのだ。
 私は黒川に求められるままに、黒川を求めるために、呆気ないほどアッサリと、ショーツを脱ぎ捨てていた。
 そうして、私は黒川に、すべてをさらけ出した。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
 裸になっただけなのに、私は肩で息をしていた。
 上から下へ。下から上へ。黒川の視線が私の身体を舐め回していく。その動きを肌に感じるたびに、私はビクッと身体を震わせる。
 ギシッと、ベッドの軋む音がした。気が付けば、黒川がすぐ目の前にいた。
 触られる。ついに……。
 けれども、黒川にそのつもりはなかったのだ。
「脚を肩幅に開いて」
「……え?」
「開くんだよ、脚を」
「は、はい」
 黒川の声に、少しだけど苛立ちが混ざっていた……ように感じられた。そして私は、自分でもそうと知らないうちに、何とも従順な返事をして、その言葉に従った。
「あ……っ」
 全身が、一気にカッと熱くなった。
 私が脚を開くと、黒川はそこを覗き込むように、私の足元にしゃがみ込んでしまったのだ。
「あ……あぁぁ……そんな……」
 不思議と言えば、不思議な話だと思う。
 そこは、今まで何度も触れられ、舐められさえもした場所なのに。
 それでも私は今、そこをマジマジと見つめられるだけで、羞恥に身を震わせ、興奮に熱くさせていた。
「ここも、綺麗なもんだよな」
「うっ、うぅぅ」
 私は、堪らず両手で顔を覆って呻いていた。恥ずかしくて恥ずかしくて、逃げ出したかった。せめて屈んで視線から逃れたかった。けれどもそうしなかったのは、恥ずかしさが快楽と表裏一体だったからだ。
 私は、腰をくなくなと揺すった。それはやはり黒川の視線から逃れるためと言うより、視線によって燃え立たされた衝動に
、いよいよ我慢できなくなってきたからだ。
 そこへすかさず、黒川が次の指示を飛ばしてきた。
「自分で開いて見せろよ」
「…………え?」
「自分の指で、ここを広げるんだ」
「………………」
 その言葉の意味を理解するのには、数秒の間が必要だった。
「そっ……」
「やるんだ」
 思わず反論しそうになった私を、黒川の強い言葉がさえぎった。
「…………」
「自分の指で、ここを広げるんだ」
 顔を覆った指の隙間から黒川を見下ろす私に、黒川はやはり同じ言葉を返して寄越した。
「…………」
「できるだろう?」
 その言葉だけは、なぜかとても優しく聞こえた。
 そして、私は……「はい」と小さく頷いていた。


 顔からゆっくりと手を離す。
 その手を、もっとゆっくりとした動きで、股間へと下ろしていく。
 指が、その場所に触れた。
 ふと視線を下ろすと、私を見上げる黒川と目が合ってしまった。私はたまらず、顔をそむけた。
「……ふぅぅ……」
 大きく息を吐く。
 それから私は、その部分を、両手の指で、割り広げた。
 クチャッと、イヤらしい音がした。
「あっ……」
 思わず、声が漏れたのは、その淫らな音が恥ずかしかったからではない。もっと恥ずかしいことになっているのを、身体で感じ取ったからだ。
 視線という愛撫を受け続けた私の身体は、十二分に熱く火照っていた。それは、ソコも同じだったわけだ。私のそこは、熱
い愛液で潤っていたのだ。なのに今、私はその入り口を大きく開け広げてしまった。
 愛液が、糸を引いて落ちていくのが分かった。
「ふふ……」
「ああぁぁぁぁ……」
 笑ったのは黒川。
 泣いたのは私。
「すごいな。どんどん溢れてくる」
「あぁぁ、言わないで」
 揶揄するような黒川に、私はすすり泣いた。
「指を離すな」
「……うぅぅ……」
 私は歯を食いしばって、そこを広げつづけた。
 ポタポタと、愛液が溢れ落ちていく。フローリングの床に、水滴が溜まっていく。
「はっ、はっ、はぁっ」
「ふふふ。中が動いてるよ」
「あっ、あぁぁっ」
 私はイヤイヤと頭を振った。けれども黒川は、わざと克明に描写を聞かせてくる。
「面白いもんだよな。そうやってイヤがっても、ここはモノ欲しそうにするんだからさ」
「うっ、うぅぅ」
「せっかく、美人で優等生って地位を築いてんのに、これじゃあ台無しかな?」
「うぅっ、うふぅ、あぁぁぁ……」
 黒川の言葉が、刃となって私の胸を抉る。事実を端的に指摘され、私は羞恥にむせび泣いた。
「何か、溢れてくる量が増えてきてるぞ?」
「いやっ、いやぁぁぁ」
「ここまで反応するなんてな。本物のマゾってことか?」
「ちがっ、私……」
「違わない」
 また。
 また、黒川が私の言葉をさえぎった。
 そこに生まれた一瞬の思考の空白に、黒川の言葉が斬り込んできた。
「そうなんだよ、オマエは」
「……あ……あぅぅ……」
 立ち上がった黒川が、オロオロと視線をさまよわせる私の目を捉えた。
「普通の人間なら恥ずかしくって、とてもこんなマネはできやしないさ」
「うっ、うぅぅ」
「こんな、男の前で服を脱いで、大事な場所を見せつけるように指で開いて」
「だ、だって……」
「言われたって、やらないんだよ」
 そう言われれば、私は言葉に詰まるしかなかった。
 なぜだか悔しくて、恥ずかしくて、惨めで、涙がにじんできた。
「ふふふ。そんな泣きそうになっても、指は離さないんだな」
「……え? ぁっ」
「いいんだよ、それで」
 私が改めて自分の姿に気付いた時だった。
 黒川の口調が、ガラリと変わった。
 慈しむような、その声。
「それの、何が悪いんだ?」
「ぁ……あぁぁ……でも……」
「オレに見られて、見せさせられて、興奮するんだろう?」
「わた……し……」
 私の意識は、黒川の言葉に完全に翻弄されていた。侮辱され、嘲われ、貶されて動揺しきっていたところに、救いの言葉が差し伸べられたのだ。私は、それにすがるしかできなかった。黒川の言葉を否定するなど、できるはずもなかった。
「視線で犯されるのも、気持ち良いだろう?」
「……は……い……」
 私は、かすれる声で答えていた。
 最初は、単なるSexのバリエーションとして始まったはずなのに。ソフトSMという、趣向を変えたSexのはずだった
のに。
「今も、身体が熱くて堪らないんだろう?」
「はい……熱い、です」
 まるで催眠術のように、私は黒川の言いなりだった。黒川に身体が熱いと言われれば、本当に熱くなってくる。
 そう。
 始まりはともかく今は、今はもう、黒川は私の支配者だった。私に、抗う術はない。いや、抗う必要などない。すべてを、黒川に委ねてしまえば……。
「じゃあ、もっと気持ち良くなりたいか?」
「は、はい。なりたいです」
「それなら、自分でやってみろ」
「自分、で……」
「できるよな?」
「はい」
 私は、シッカリと頷いた。



「んあああぁっ! あぁっ、あはぁっ!」
 それは、今までのオナニーでは決して味わうことのなかった、強烈な快感だった。私はその快感を貪るために、夢中で指を動かし続けた。
 ベッドに腰掛けた黒川に見せつけるように、私は大きく足を広げて床に座り込んでいた。そらした上体を左手で支え、腰を
突き出すようにする。そうして黒川の視線を浴びながら、私はソコを右手の指で掻き回す。愛液がとめどなく溢れて、私の手と床とをびしょ濡れにしていた。
「い、いぃぃ、こんなっ、わた……しぃっ!」
 信じられなかった。人に見られながらするのが、こんなにも気持ちが良いだなんて。
 私は煙る視界の中に、ただ黒川だけを捉えて、夢中で肌をなぞり続けた。
 右手では依然としてソコを弄り回しながら、少し身体を起こして、左手も使えるようにする。
「ひぐっ!」
 カチカチになった乳首を指先で摘まむと、鋭い電流が駆け抜けていった。反射的に、身体が仰け反り、私は床に寝そべってしまっていた。それでも脚は開いたままで、視線は黒川を捉えていた。
「あっ、あぁっ、あぁぁっ、んんっ!」
 喘ぎ続ける私の口の端から、涎が垂れていく感覚がわずかにあった。けれどもそれを気にする余裕もなく、私は悦楽を追い求め、胸をこね回し、アソコを掻き乱す。
「ひぃっ、いっ、いっ、いぎぃっ!」
 私の、悲鳴とも嬌声ともつかない叫び声に、ジュプジュプと水音が重なる。
 もう……、もうスグ……。
 あと、少し……。
 自分がイってしまいそうなのが分かった。けれども、今のままでは足りないことも私は無意識のうちに悟っていた。
 指では、物足りない。
「あぁっ、ああぁぁぁ……っ」
 胸を、アソコをいくら指で愛撫しても、それはもうもどかしい快感が積み重なっていくだけで、頂上には届かない。私は一
気に駆け上がるため、胸を揉んでいた左手を、アソコに下ろしていった。
 今、クリトリスを一撫ですれば、それで……。
 私はそれを思いながら、黒川に微笑んでいた。
 しかし、その時だった。
「待て」
 それは、決して大きな声ではなかった。快楽に飲み込まれた私が、聞き逃しても不思議はなかったと思う。
 けれども。
 その声は不可視の鎖となって、一瞬のうちに私の全身を縛り上げてしまっていた。
「あっ、あぁぁぁぁ?」
 私はすすり泣いた。
 溜まりに溜まった快楽を、一気に爆発させたかったのに。思う存分、クリトリスを弄りたかったのに。
 けれども、それは中断させられてしまった。
 どうしてそうなったのか、自分でも分からない。制止の声など無視して、指を動かすことはできたはずだ。
 けれども黒川の一言が、私の自由を完全に奪っていた。
「あ……、あぁぁ、わた、わ……たし……」
 私は涙ながらに黒川に哀願した。
 もどかしくてもどかしくて、死んでしまいそうだった。
 あと、あとほんの少しなのに……っ!
「自分ひとりで、勝手にイクつもりだったのか?」
 そう言われて、初めて気が付いた。
 黒川も、全裸になっていた。
 そして、その股間には……。
「あ、あぁぁぁ……っ」
 私の涙は、喜びのそれへと変わっていた。そして私は、いそいそと黒川の足元へ這い進んだ。
「こ、れ……」
「ああ。上手にできたら、ちゃんとご褒美をやるよ」
「んむぅっ、んんっ」
 私は返事の代わりに、いきなりむしゃぶりついていた。
あの時以来、何度も繰り返してきた行為が、自然と出てきていた。
 熱く硬い肉の棒に、唇を滑らせ、舌を這わせる。そうすると、ただでさえ大きく思えていたそれが、ムクムクとさらに大き
さを増していくのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……、ん、んん……」
 そそり立つ肉棒の裏筋を、ツツーッと舐め上げると、その威容を誇るそれが、ビクッビクッと震える。
 それが、私にはたまらなく嬉しく、そして愛しかった。
 私は黒川を見上げて小さく微笑むと、もう一度、根元から舐め上げた。それから口を大きく開いて、亀頭を咥え込んで舌を絡ませる。
 口腔を埋め尽くすような圧迫感に、私はクラクラとする不思議な高揚感を覚えていた。
 そしてそれは、私の内で燻り続けていた炎にも、油を注ぐ形となった。狂おしいほどの快楽への期待に、私は黒川のモノを口の中で舐めしゃぶりながら、自分の股間へと手を伸ばしていた。
「コラ」
 途端に黒川に叱られ、私はビクッと身をすくませた。
 仕方なく、私は意識を奉仕に集中させようとしたが、それはむしろ逆効果に終わった。口内を黒川の熱い肉棒で刺激され、どちらが快感を味わっているのか分からなくなってしまう。
 ただでさえ、私はもどかしさを誤魔化していたのだ。再び燃え上がったその炎を、私が自分で抑え込めるはずはなかった。
「はぁっ、ふぅっ、うっ、はぉぅっ」
 頭を振ると、ジュルジュルと唾液の混ざり合う音が響く。肉棒はいよいよ熱くなり、私の口を蹂躙する。
 そして私は、それに貫かれることを夢想しながら、自分の指を割れ目の奥にまで埋め込んでいた。
「んぶっ、んんっ、んふぅ」
 頭を振りながら指を動かす。口腔を出入りする肉棒が、アソコを掻き乱す指の動きとシンクロしていく。上と下とで、淫らな水音が同じような音を立てていた。
 ところが。
「聞き分けのないヤツだな」
「んっ」
 黒川の手が、私の腕を掴んだ。と思うと、私の両手はあっという間に、後ろ手に括られてしまっていた。
「あ、あぁぁ、お願いぃ」
 私は、本当に涙をこぼして黒川に哀願していた。もうこれ以上お預けを喰らうのは、我慢できなかった。
「ダメだ。ちゃんとできたらって、言っただろう」
「あぁぁぁぁ……」
 残酷に過ぎるその言葉に、私はすすり泣く。
 けれども、黒川は許してはくれない。
 私はもどかしさに身を揺すると、泣く泣く奉仕を再開した。
「そうだ。舌先で亀頭をなぞって、そうそう」
 両腕を背中に括られた不自由な体勢ながら、それでもどうにか黒川の指示に従う。唾液を乗せた舌で亀頭を舐り、エラの部分をチロチロと舌先でくすぐる。
「ああ、ホントに上手くなったよな」
 黒川が満足そうに言いながら、私の頭を撫でてくれた。
 私はそれを励みに、さらに奉仕を続けようとしたが、やはりもう限界だった。
「ふっ、ふっ、ふぅぅぅ……」
 黒川のモノから顔を離すと、身体の奥で燃え盛る炎を冷ますかのように、私は何度も浅い呼吸を繰り返した。
「はぁっ、はっ、はぁっ、あ……、あはぁぁぁっ」
 ダメだった。
 もう、欲しくて欲しくて堪らなかった。
「お願い……です、私、もう……、もうっ」
 私の目に映る黒川は、涙で滲んでいた。
「やれやれ。まあ、初めてということで、今回は特別だからな」
「はっ、はいっ!」
 ようやくもらった許しの言葉。
「あぁぁ、早く、早くぅっ」
 私は身体を震わせ、脚をすり合わせておねだりをしていた。
「分かったよ。じゃあ、ベッドに上がって。そうしたら、膝を
立ててお尻を突き上げるんだ」
「はいっ、はいっ」
 私は何度も頷くと、浮き立ちながらベッドに這い上がった。そして、言われたとおりの姿勢をとる。
 うつ伏せで、膝だけを立てて、お尻をかざす。両手は後ろ手に括られているので、上体は肩と顔で支えた。アソコも、お尻
も、隠すべき場所をすべてさらけ出した、恥ずかしい姿勢。今の私には、それがお似合いだった。
「早く、お願いだから」
 私ははしたなくも、お尻を振って黒川を誘う。
「お願いするんなら、それらしい言い方があるだろう?」
 意地悪く、黒川が笑う。私はその言葉に、逆らうことも非難することもできはしない。ただ従うだけだ。
「お願い、お願いですから、早く入れてくださいぃぃ」
「何を? どこに?」
「あ……ひぃぃぃぃっ!」
 一瞬の躊躇。そこを、黒川が突いてきた。
 快楽を求めてヒクつくアソコに、一切の刺激を禁じられてきたアソコに、指を刺し込まれた。
 指一本のささやかな愛撫でも、飢えた私には十分だった。身体の内を指先で掻かれると、例えようのない甘美が湧き上がっていく。私はその快楽を貪ろうと、黒川の手にお尻を押し付けていく。
 すると途端に、指が引き抜かれてしまった。
「あっ、あぁぁぁっ、もう許してくださいぃっ」
「だったら、言えるだろう?」
「はっ、はぁぁ……あ……、お、オマ×コに、オマ×コに入れてえええっ!」
 私は、恥も外聞もなく叫んでいた。
 その言葉を口にするのは、ひょっとしたらそれが初めてだったかもしれない。友達とエッチな話で盛り上がっても、その単
語が出ることはなかったはずだ。 けれども私は今、その単語を大声で連呼していた。
「お願いですっ、オマ×コに、入れてくださいひぃっ!」
 髪を振り乱し、絶叫した時だった。
「きひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 灼熱の塊が、私の中に埋め込まれた。
 瞬間、私は全身を硬直させ、そして弾けた。
「ふっ、ふぁっ、あっ、あひぃぃっ!」
 それは、入れられたとか貫かれたとか、そんなレベルの話ではなかった。その熱い塊は、圧倒的な存在感で私を蹂躙する。私を埋め尽くし、中から食い破るかのように動き回り、膨れ上がっていく。
「あぁぁぁぁっ、んぐぅっ、んあぁぁっ!」
 私は言葉を失い、意味もなく叫び続ける。背中をそらし、声を張り上げる。
「そんなに気持ち良いのか?」
「あっ、あっ、あうっ、んぐぅっ!」
 背後から激しく突き上げられる私に、答えることはできなかった。けれどももちろん、支配者である黒川が、私のそんな様
を許すはずがなかった。
「気持ち良いのかって、訊いてるんだよ」
「っっんぎぃぃっ!!」
 クリトリスを摘み上げられ、意識が消えた。



 しかしそれは瞬間的なことだったようで、私はすぐに、背後からゆっくりとした動きで貫かれている自分に気が付いた。
 あぁぁ……、すごい……これが……。
 暴力的な官能の嵐は、台風の目にでも入ったように収まっていた。けれども私自身は今もなお、遥かな官能の高みにあった。その高みをプカプカと漂いながら、私は私を屈服させ、蹂躙しているモノを、噛み締めるように味わっていた。
「ふふふ。蕩けそうな顔をしてるよ」
「あはぁ……だってへぇ……」
「気持ち良いのか?」
「は、はひぃ、すごく、いひです……」
 ろれつの怪しくなった舌で、私は答えていた。
「どこが、気持ち良いんだ?」
「あぁぁ……オマ×コ、オマ×コ良いですぅ……」
 私はウットリとした声で答えていた。
 実際、それはとても気持ち良く、心地良い状態だった。今は、私の中に黒川がいることがハッキリと分かっていた。その大
きさも、形も、熱も硬さも何もかも、私は自分の膣で感じ取っていた。その中の自分の襞々が、黒川にまとわりつき、引き剥
がされる感触さえも感じ取れた。
 身体を震わせて、甘えたようにすすり泣く私は、きっととても幸せそうな笑みを浮かべていたに違いない。
「ふふ。素直な子には、ご褒美をあげないとな」
 その言葉が、私を再び嵐の中に放り込んだ。
「ひっ!?」
 ゆっくりとした黒川の動きが、一転して激しいものに切り替わる。叩きつけるように、突き破るような勢いで、黒川が私の
中を激しく出入りする。
「はぅっ! うはぁぁっ!!」
 荒々しい快感。
 そう。
 快感には違いなかった。
「いっ、いいいい……、うんっ、んっ、くあぁぁっ!!」
 身体の自由を奪われ、その身体を自由に扱われながら、私は快楽にとり憑かれていた。全身を刺し貫かれ、私は狂ったように叫んでいた。
「あはぁっ、もっとっ、もっとしてえぇぇっ!!」
 涎と愛液とでベッドをグチャグチャにしながら、私はさらなる快楽を求めて叫ぶ。
 頭の奥で、火花が散る。
 意識が白熱の世界へと染まっていく。
 そんな中でも私は、なおも黒川を求め、自分から腰を振っていた。耐えるように背中できつく拳を握っていたのは、ギリギ
リまで快楽を感じていたかったからだ。
「そろそろ、オレも……っ!!」
「んぐぅっ、あっ、私っ、もぉっ!!」
 黒川の言葉に、私は最後の防波堤を自ら崩した。
 そこへ、いよいよ加速した黒川が襲い掛かってきた。
「はああああっ、イグぅっ! うんっ、んっ、んあぁ! イッ、イクゥゥゥ……っっ!!」
 ふっと、奈落の底へとどこまでも落ちていくような感覚に、全身が包まれていった。
「いひぃぃぃぃ…………っ!!」
 すべての感覚が呑み込まれ、意識が消え去るその瞬間、私の中で何かが弾け、私をさらに遠くへ吹き飛ばしていた。
 そして、私は完全に意識を失ってしまった。




「おい、大丈夫か?」
「……ん…………」
 身体を揺さぶられて、私はうっすらと目を開けた。
「ん……あ……?」
「はは、ようやく起きたか」
 黒川が、笑っている。
「あ……そうか……」
 呟いた私は、ようやく自分の状況を理解した。
 今日は、黒川と初めてSMまがいのことを試したのだ。
 そして、私は…………。
 私はその時の自分を思い出し、恥ずかしさのあまり黒川に背中を向けた。
 黒川が、笑い声混じりに私に話し掛けてきた。
「誘ってくるくらいだから、ある程度は予想したけど、しっか
しかなり予想以上だったな」
 ポンポンと、黒川が私の頭を撫でた。
 私は、ビクッと肩を震わせてしまった。
「ま、おかげでオレも楽しかったけどな」
 …………。
 黒川は、まるで普段の黒川に戻ってしまっていた。
 あれはプレイだったのだから、当然といえば当然だ。
 けれどもなぜか私には、そのことが寂しくて、涙が出るほどに、切なかった。







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