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「……まいった」
「何が?」
「……別に」
私の独り言を、隣に寝ていた黒川が聞き止めて尋ねてきたけど、私は適当に誤魔化した。
つくづく、黒川は女に慣れた男だと思う。
初めて私が誘ってから、もう5回は黒川の家に来ているけれど、その度に私は、今までのSEXでは味わったことのない、強烈な快楽を教えられていた。
しかも、だ。
私は、後戯というモノの重要性を、いわゆるセックスフレンドの黒川によって初めて教えられた。
例えば今そうしているように、コトを終えたあと、男の腕枕でベッドに横たわり、そこで髪をそっと撫でてもらったりすると言うのは、これが堪らなく心地良いのだ。どうして今までの恋人は、こんな心地良いことをしてくれなかったのか、不思議と言うより腹立たしくてならない。
で。
私が「まいった」と漏らしてしまったのは、身体だけでなく心までも黒川にはまってしまいそうだったから。少しでも気を緩めれば、私は黒川に惚れてしまいそうだった。
いや。そう考える時点ですでに惚れてしまっているのかも知れないけど、それはさすがに認められない。認めるとヤバイ。だって、相手はこんなにも女の扱いに慣れた男なのだから。こんな男に惚れてしまえば、ロクな目に遭わないと言う予感がしていた。
黒川の指先が、スッと私の頬を撫でていった。それだけで、頭の奥がジーンと痺れてきた。
あぁぁっ、もう! ホントに駄目だっ! 何とかしないと!
私は反射的に、身体を起こしていた。
「どうした?」
急に起き上がった私に、黒川が尋ねてきた。
その時、私は唐突に閃いた。
そうだ。やはり主導権は、私が握っておかないといけない。そもそも私は、私の魅力でもって黒川を虜にするつもりだったのだ。なのに今では、まるで逆。この事態は、何が何でも改善しないと。
でも、どうやって?
…………。
「ねえ、黒川。ストレートに聞くけどさ、私とのセックスって気持ち良い?」
「……ほんっとに、ストレートな質問だな、おい」
「いいから、答えなさいよ」
「あのな、気持ち良くなかったら、するはずがないだろう?」
黒川は、呆れたように答えた。
その答えは、私に自信を与えるには十分だった。
これからすることを思うと緊張せずにいられなかったけど、それでも満足そうな笑みを作ることができた。
「だったらさ。せっかくだから今日は、もっと気持ち良くしてあげる」
言うが早いが、私は毛布を引き剥がしてしまった。
……。
………………。
「おい、こら。そんなにマジマジと見られたら、さすがに恥ずかしいだろ」
「え? ああ」
寝そべっていた黒川が、肘で上体を起こして私を見ると、苦笑混じりに文句を言ってきた。その黒川の足の間にしゃがみ込んでいた私は、ほとんど上の空で返事だけしていた。
見るのは初めてではないけれど、やっぱり……。
何か変なの、と思ってしまう。
けれども、その変なのが私の中に入ってきて、それで私はすごく気持ち良くなったりするわけで……。
「だから、どうしてオマエのが顔を赤くしてるんだよ」
「え? あっ」
うぅ。
思い出して恥ずかしがるだなんて、我ながら情けない。
私は小さく息を吐いて、気を入れなおした。
ソレは、さっき終えたばかりだからだろうけど、いわゆる萎えた状態だった。私の感覚では、もっと大きなモノのように感じられていたけれど、そういう状態になれば、きっとそうなるんだろう。
とりあえず私は、ほとんど力を失っているソレに、手を伸ばした。
実を言えば、どうしたらいいのか、その知識と経験はお粗末なものだった。そのわずかな経験を思い起こしながら、私は両手でソレを包み込むようにしながら、指をそっと這わせてみた。
「あ……」
声を漏らしたのは、私の方だった。手の中で、ソレがピクンと身動きしたのが感じられたからだ。
そっと黒川の様子を窺うと、黒川は面白そうに私の様子を見ていた。その余裕な態度が何だか癪に障ったけど、私はそのままソレに指を這わせ続けた。
すると、どうだろう。
私の手の中でソレは見る見るうちに、硬く、熱く、大きくなっていった。私の手では、包みきれないほどに。
「…………」
無言のまま、私は唾を飲み込んでいた。
指の合間から覗くその形は、異様なモノとしか思えなかった。身体の一部であるはずなのに、とてつもなく熱く感じられる。おまけに、硬い。
それでいて、ソレは脈打ち、震えたりする。
気持ち悪いと感じてもよさそうなのに、私はそれに手を添えたまま、じっと見つめていた。
なぜだか、目が離せずにいた。
「……これ、が」
「うん?」
「これが、その……」
「ま、そういうわけだな」
緊張でかすれた声の私とは対照的に、黒川は相変わらず余裕のある声だった。けれど私には、それこそそんなことを気にする余裕なんてありはしなかった。
ソレを目の当たりにしたことで、私は今まで味わった興奮を思い起こさせられていた。
今、手にしているこの熱く硬いモノが、私の中に入っていく感触。
そして、私の中を思い切り掻き回される快感。
私の呼吸は、知らないうちに早くなっていった。
私は膨れ上がる期待をどうにか押さえ込みながら、黒川に話し掛けた。
「……ねえ」
「どうした?」
「その、どうすれば……?」
そう。
さっきも言ったように、自分で仕掛けておきながら、その経験は未熟だった。けれども、そういう意図で始めた以上、黒川に気持ち良くなってもらわないと困る。
「とりあえず、そのまま指でやってみなよ」
「指で?」
「そう。片手で軽く握るような感じにして、上下に動かすんだ。ゆっくりでいいから」
「う、うん」
私は教えられたとおりに、右手で軽くソレを握ってみた。そうやって持ってみると、よりダイレクトに熱さと大きさが感じられるような気がした。
私は、また一つ唾を飲み込んだ。
それから、ゆっくりと手を上下に動かし始めた。
「……ぅぁ……」
これも、私の声。
十分大きくなっていたと思っていたそれが、私の手の中で、もっと大きく膨らんでいた。こんなになるなんて、信じられない思いだった。
私はソレに魅入られたように、ただただ無言で黙々と、息だけを荒くしながら手を動かしていた。私の手の中で、それはますます力を漲らせていくのが分かった。
しばらくそうしていると、先端から透明な液体が出てきた。
それが何なのか、知識は豊富な私には見当がついた。
先走りの、とか言われるモノのはずだ。
「黒川……」
「うん?」
「……気持ち、良い?」
「ああ」
その答えに、私はなぜかホッとした思いだった。
この液体が出てくるのは、そういう意味だと読んだ覚えはあるのだけれども、やはり実際に答えてもらえると、自分の行為の意味が実感できた。
何となく嬉しくなった私は、調子に乗って手を動かし続けた。するとその液体――確かカウパー氏線液だとか言ったと思う――が零れて、私の手の方にまで垂れてきた。
それは、思った以上にヌルヌルとしていた。
私の手は、見る見るうちにヌルヌルにまみれていった。
それでも私は、特に気持ち悪いと思うこともなく、手を動かし続けていた。
そうしたら、その音はすぐに聞こえてきた。
ニチャ……。
粘液質の、何だかとってもエッチっぽい音。
アソコを触った時のような。
アソコに入れられた時のような……。
そんな感じがしてしまった。
おまけにその音は、私が手を動かすたびに響くのだ。
「あ、あの……」
「うん?」
「……口で、した方が……、イイんだよね?」
気が付いたら、そう言ってしまっていた。
自分でも不思議だった。
私の経験が未熟なのは、そういう行為が嫌いだったからだ。今まで付き合った男たちは、そういうことを私にさせようとしたけど、ほとんど私は応じなかった。そもそも気持ち悪いとか汚いという思いがあったし、実際にやってみて、その思いは確信に変わったからだ。何度してみてもその感想は変わらなかった。
それなのに、私は今、自分からそれをしようとしている。求められてもいないのに。
でもその時の私には、そうするのが自然だった。
もちろん黒川も、私の申し出を断りはしなかった。
「そうだな。じゃあ、とりあえず舌で舐めてみて」
「う、うん」
私は黒川に言われるままに、顔を寄せていった。間近にすると、それはツンと独特の匂いがしたけれど、まるで気にはならなかった。私はためらうことなく舌を伸ばし、その先っぽの方を軽く舐めてみた。
「……ん」
何て言えばいいのか、塩辛いと言うか苦酸っぱいと言うか、そんな感じが、少し触れただけなのに口の中に広がっていった。多分、こんな味の料理を出されたら、口にするどころか匂いを嗅いだだけで遠慮したと思う。
なのに今の私ときたら。
何か変な味。
そう思っただけで、また舌を伸ばしていた。繰り返し繰り返し、ペロペロと先端に舌を這わせた。
「お……っ」
私に舐め続けられて、黒川が声を漏らした。目だけを上げて黒川を見ると、何だか嬉しそうな顔をしていた。
私は一旦顔を離すと、ふぅと息を吐いた。それから改めて黒川を見たら、黒川はやっぱり、嬉しそうに笑っていた。
「教えてくれって言ってた割に、上手いじゃないか」
「へへ、まあね」
私も笑みを浮かべると、そう答えた。
そういうことが上手いと誉められるのは、ホントは誉められるようなことじゃないと思う。けれども、私は素直に嬉しかった。何だかこう、胸の奥がクッとなるくらいに。
私は込み上げてくる衝動を、そのまま言葉にしていた。
「じゃあ、もっと本格的にしてあげるから」
そう言ってもう1度、黒川のソレに顔を近づけた私は、そこでふと、黒川を仰ぎ見た。
黒川と、視線がぶつかった。
その視線が、私の中で何かのスイッチを入れてしまったのを、私は確かに感じ取っていた。
「……はぁぁぁ……」
自然と、私の口からは熱い吐息が漏れていた。
それから、私は黒川を見上げたまま口を大きく開けて、黒川のソレを、ゆっくりと口に含んでいった。
「う……っ」
苦しさに、思わず呻き声が漏れてしまった。
私の口の中は、ソレで埋め尽くされてしまった。口一杯に頬張っているのに、まだかなり残っている。
私は、息をするのさえ辛くなっていた。けれどもそれは口を塞がれているせいではなくて、何と言うか、胸の鼓動が苦しかった。
本当なら汚いと思うようなモノを、口一杯に含んだ私が感じていたのは、陶酔感とでも言うようなものだった。なぜだか身体の芯が熱くなっていた。その熱は下腹部の奥から出ているような感じで、私は自然と腿をすり合わせていた。
私は、ゆっくりと口に含んだものを吐き出していった。
ソレは、私の唾液でヌラヌラと照り輝いていた。
何だか、すっごくいやらしい。
でも、それを見つめる私の瞳は、欲情に熱く潤んでいたに違いない。
私はそんな、もの欲しそうな瞳で黒川を見上げた。
黒川は、小さく笑って頷いた。
「そう、自分の唾液を拭い取るような感じで、ゆっくりと舌を動かすんだ。根元から舐め上げるようにな」
私は、素直にその言葉に従った。と言うよりも、頭がボーっとしていて、断ることなど思いもしなかった。言われるままに、求められるままに、ただ従順に私は舌を動かした。
下から上へ、ゆっくりと舌を動かしていく。汚れを拭き取るように、丁寧に丁寧に。何度も舌を往復させる。
「竿だけじゃなく、亀頭の方もな」
黒川に言われるままに、私は舌を動かす。先端の部分、亀頭には、円を描くようにして舌を這わせた。それから、その一番先から溢れ出ている透明な液体も、舌先ですくい取った。
そしてまた、顔を根元の方へと寄せると、ツツーッと舐め上げていくのだ。
そんな風に、黒川に求められるとおりに動いていると、なぜだかそれが、とても自然なことに思えてきた。黒川のソレを、私の舌で気持ち良くするのが当然に思えた。
時折、黒川が漏らす気持ち良さそうな声を聞くと、何だかとても嬉しく感じられたりもした。
唐突に、私の脳裏に【奉仕】という言葉が閃いた。
それは、気持ち良くしてあげたいという思いとは、微妙に異なる感覚だと思う。けれども私には、むしろその奉仕と言う言葉の方が馴染むように思えた。
奉仕。
私は今、黒川に奉仕している。
そう考えただけで、私の身体は一気に熱くなった。
触れてもいないのに、奥からジュワッと愛液が湧き出てくるのが分かった。
どうにも堪らなくなっていた私は、そんな思いをぶつけるように、より激しく舌を動かしていた。
「ふふふ、ずいぶん熱心にしてくれるんだな」
そう言うと黒川は、私の髪を撫でてくれた。私は、恥ずかしさと嬉しさで身をよじっていた。
髪を撫でていた黒川の指が、私の頬から顎へと這わされた。私は黒川の指に導かれるままに、奉仕を止めて黒川の顔を見つめた。
黒川の瞳の中には、もの欲しそうに欲情している女の子が映っていた。それが今の自分なんだと思うと、私はますます身体を熱くさせてしまった。
「今度は、咥えてみて。できるよな?」
「うん」
舐めるだけではなく、そういうやり方があるのも、もちろん知っていた。そして、それをするには私の口には大きすぎることも、最初に一度含んだ時に理解できていた。
けれど私は、ためらうことなく返事をしていた。私の胸には、不安よりもむしろ期待と興奮が渦巻いていた。
これを丸々咥えたりしたら……。
私は期待に胸を高鳴らせながら、大きく口を開けた。
「……んぐ……っ」
息苦しく、ともすればえづきそうになるほど深くまで、一気に飲み込んでいた。
私の口の中を埋め尽くす、圧倒的な存在感。
口腔を占領された私は、クラクラと目眩さえ感じていた。それほどに、私の興奮は高まっていた。
私を突き動かす熱い衝動、身体の芯にある熱い塊が、いよいよ沸騰し始めたのが分かった。
「ん……ふっ……」
私は本格的に奉仕をしようと、唇をきゅっと窄めて、ゆっくりと頭を引き上げ始めた、まさにその時だった。
「んんっ!」
唇がめくりあがる感触は、舌や口の中の粘膜を擦られる感触は、身震いするほどに気持ち良かった。どうにか口を離したり、噛んだりすることはなかったけれど、電気が走ったような快感が、私の身体を痺れさせていた。
私は、口の中に流れ込む快楽を味わうように、ゆっくりと口に含んだものを吐き出していった。
そして最後まで吐き出しはしたけど、私はまだ口を離さなかった。その先端にキスをするように唇を押し付けたまま、息を整えた。
「んっ……ふぅ」
それからまた、ゆっくりとした動きで私は顔を沈めていった。
今度は唇をすぼめたまま、黒川を締め付けるように。
私の口の中に、黒川が溢れてくる。
私の唇を、黒川が滑っていく。
黒川に押し出された唾液が、唇の端から溢れ出て、ジュプッとイヤらしい音をさせる。
「……んふぅ……」
私がうめいたのは、苦しかったからじゃない。
私の中で、つながってしまったから。
口でするというその行為が、まるで入れられるのと変わらないじゃない、ということに。
そう考えると、もうダメだった。
私の頭の中は、気持ちイイで塗り潰されていた。
それこそ、子宮が疼いた。
私は、ただただ肉体の求めるままに、自分のそこへと指を伸ばしていた。
「んっ」
そこは、自分でも信じられないくらいに熱くなっていた。
自分で触るのが、初めてなわけはない。今まで何度だって、それこそ数え切れないくらいに自分で触ってきた。けれども、こんなに熱くなっていたのは初めてだった。
私は、いつもの手順などまるで無視した。何より、そんな手順を踏む必要もないほど、私のそこは濡れていたから。今の私は、とにかくソコに何かを入れたかった。
「んんぅっ!」
2本の指が、あっけないほど簡単に飲み込まれた。ヌルっていう感じで。しかも、私の中は飲み込んだ指をキュウキュウと締め付けてくる。まるで、もっともっととせがまれているように。
「ははっ、ずいぶんと気持ち良さそうだな」
指を動かそうとした私の耳に、黒川の笑い声が響いた。
途端に、私の中に羞恥が込み上げてきた。今の自分の状況を思うと、泣きたいくらいに恥ずかしかった。私は興奮で火照らせた肌を、羞恥で赤く染めていた。
それなのに。
それだからこそ。
私の身体は、ますます熱く燃え盛っていた。
こんな、男の人のアレを咥えて、それで気持ち良くなって自分で自分を触って。それを笑われて、どうしようもなく恥ずかしくって。
そんなのがみんな一緒くたになって、私の興奮を煽り立てていく。
「んぶっ……んぐ……うんっ」
止まらなかった。
私はもう何も考えられないまま、身体が勝手に動くままに快楽を貪っていた。
咥え込んだ黒川のソレを吐き出していく。それに併せて、自分の中へ潜り込ませた指も引き抜いていく。
全部吐き出して、抜き取ってしまう直前で動きを止め、今度はまた身体の中へと招き入れていく。
口とアソコが、どうしようもなく気持ち良かった。上と下から気持ち良さをどんどん流し込まれてきて、それが私の身体の中で渦を巻いていた。
その昂ぶりをぶつけるように、私はひたすら黒川を舐めしゃぶり、自分を慰め続けた。
「そうそう。咥えていても、中で舌を動かすんだ」
黒川の声だけは、やたらとハッキリ聞こえた。
私は頭を振りたてながら、窮屈な口の中で、それでも懸命に舌を動かした。私の口腔で暴れまわる黒川に、舌を絡め、擦りたてた。
もちろんその間も、自分を抉る指も動かし続けていた。
気持ち良いという感覚だけが、私を支配していた。
男の人を舐めるのが、まさかこんなに興奮するものだなんて、気持ち良いものだなんて、思いもしなかった。私が口で黒川を気持ち良くしているのか、黒川がソレで私の口を気持ち良くしているのか、どちらなのかさえ分からない。
私の口腔を蹂躙する黒川のソレは、圧倒的存在感で私を平伏させる支配者だった。私はその凶悪な支配者に一身に仕え、褒美として快楽を与えられている。
黒川に触れる部分からは、次々に快楽が流れ込んできた。
変態。まるで変態だ。
時折、不意にそんな考えが頭をよぎった。
男のをしゃぶって、気持ち良くなる変態。
しかしそんなわずかな理性の覚醒は、今の私には自分を昂ぶらせるスパイスにしかならなかった。
自分のために、黒川のために、私はより激しく頭を振って、黒川のソレを舐めしゃぶった。
「んぐぐぅっ、はぅっ、ふぉっ」
そうやって行為に没頭すればするほど、私は倒錯的な快感に酔いしれていった。
「んっ、イイ……ぞ」
そしてやはり、私がどんなに快楽に酔っていても、黒川の声だけは明瞭だった
黒川が、誉めてくれた。
それが素直に嬉しかった。
そんな気持ちが、私をいよいよ加速させていく。
口の端からは、ジュプ、ジュポと唾液が溢れ出ていた。
「ちょっ、悪いっ、もう……!」
ついに、黒川の余裕な態度が崩れた。切羽詰ったような声。
それでも私は、動きを止めなかった。
ただ、目だけで黒川に頷いて見せた。
「いいよ、このまま」と。
そんな自分を、不思議にさえ思わなかった。そうすることが、当たり前だったから。
私がその意思を示すと、黒川が緊張を解いたのが分かった。私は、ここぞとばかり激しく口に出し入れした。
すると口の中で、黒川がフッと膨張したように感じた。
私は息苦しくなるのもお構いなしに、ノドの奥深くまで咥え込んでいた。
同時に、アソコを弄っていた指を引き抜き加減にして、親指をクリトリスに押し当てていた。
「くぅっ、出すぞっ!」
その瞬間、いちだんと膨れあがったのがハッキリ分かった。
私は目を閉じてそ瞬間を待ち受けた。
そして――。
ビシャッ! ビュッ!
熱い塊が、私のノドの奥に叩き付けられた。
同時に私は、親指でクリトリスを強く押し揉んでいた。
「んぶぅっ!」
私の中で、性感が爆発した。
頭の中が、白く染まっていく。
その間も、黒川は私の口の中で断続的に射精をしていた。その勢いにむせ返っても不思議じゃないのに、私はそうはらなかった。それどころか私は、唇をすぼめて一滴もこぼすまいと頑張っていた。
自慰による絶頂の影響なのか、私はむしろ、口の中に放出される感覚に酔いしれていたのだ。ノドや舌に絡みつくその独特な感触も、口一杯に広がるその匂いも、信じられないだろうけど、私には心地よかった。
そんな風に、私が陶酔の間を漂っていたのは、大した時間ではなかったと思う。気が付いた時には、黒川がすべて吐き出し終えていたのが感じられた。
私は唇をすぼめたまま、ゆっくりと黒川のソレを口の中から引き抜いた。
身体を起こして、黒川を見つめた。
私の口の中には、黒川の出したものが一杯に溜まっていた。
「おい。無理してなくて出していいぞ」
黒川が私にティッシュの箱を渡したけれど、私は首を横に振った。
出してはいけないと、なぜか私はそう考えていた。
私は、ノドを大きく動かして、口の中に溜まっていたモノを飲み込んだ。
「んっぷ」
味も匂いも独特なら、ノド越しもまた例えようがなかった。
「やれやれ。最初からそこまでしなくてもイイのに」
黒川が呆れたように言ったのは、多分、私が無意識のうちに顔をしかめていたからだと思う。口の端からは、飲みきれずに少しこぼれ出しているのが自分でも分かった。
私はそれを指先で拭うと、パックリと口に咥えてみせた。
それから、黒川に向かって軽く小首を傾げて微笑んだ。
黒川は、苦笑交じりの笑みを浮かべると、私の頭をクシャクシャっと撫で回した。
その手が、何とも心地よく感じられた。
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