5月12日に開かれた厚生労働省の「第5回看護基礎教育のあり方に関する懇談会」。「修業年限についてはテーマではない」という前提のはずだったが、この日の議論では年限問題が随所に顔をのぞかせた。
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そもそも日本看護協会(久常節子会長)は、看護師の基礎教育を現在の3年制から4年制にすべきだという姿勢を打ち出している。また、准看護師の養成は停止し、移行教育の上、資格を看護師に統一すべきだとも主張している。この懇談会では、同協会の副会長でもある聖路加看護大の井部俊子学長が委員になっており、看護界の「代表」としての主張をしてきた。一方、日本医師会は准看護師制度の存続を強く訴えてきた経緯がある。
この日、懇談会がヒアリングを行った日医の羽生田俊常任理事は、地域医療における准看護師の役割をあらためて強調。各地の医師会で准看護師の養成学校を運営していることが、地域の看護職確保に大いに役立っていると主張した。
さらに質疑応答の中でも、随所に修業年限の問題が取り上げられた。
「臨地実習での制限が多い」という議論の中では、羽生田氏が「冗談半分として聞いていただきたい」と前置きはしたものの、「みんな2年コースとすれば、准看護師の免許を持って実習に行ける、ということも考えられなくはない」。
また、井部氏が「医師と看護師は車の両輪。片方がいびつではうまく走れない。大きさ、形をそろえてうまく走るには、教育背景を一緒にする必要がある。そのための展望は」と質問したのに対し、羽生田氏は次のように述べた。
「わたしはそうした看護師さんがいてもいいと思う。しかし、すべてがそうなる必要があるのか、とも考える。例えば、われわれの診療所で、大学を出た看護師さんが、大学で得た高度な知識・技術を生かせる場はほとんどない。現場に対応できるレベルの知識・技術は当然必要だが、全体として見た時、基礎教育というのは最低限どこまでできればいいかというもの。高度な医療技術を身に付けるのは基礎教育ではない。そうした部分は上積みの教育で考えるべきだ」
看護職員の養成には複数の選択肢が必要で、4年制にこだわる必要はないと、否定的な見解を示した。
また、看護師の20年後の在り方に絡んで、看護師の業務範囲の拡大について問われると、「看護師に求められる業務については、今現在の法律上でできることもしていない。また、業務拡大を望んでいない看護師もいる。基礎教育という中では、初めから業務拡大ありき(で年限延長)の議論をすべきではない」と述べた。
一方、全日本病院協会の西澤寛俊会長は、4年制に移行する、しないの議論の前に、現在の3年制の問題点を追及し、改善していくべきだと述べた。
西澤氏は「3年制の中で教育時間を増やしていくことは可能。その上で、4年制への移行を議論・検討すべきでは」と、現時点での4年制への移行論議は時期尚早との考えを示した。
ただ、准看護師の問題には触れずじまいで、医療の急速な進歩による高度化に対応するには、長期的な課題として4年制移行も否定しないと発言。病院団体である全日病と、開業医が中心の日医との間に微妙な温度差があることが見て取れた。
更新:2008/05/13 19:34 キャリアブレイン
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