Pressnet News 2006年12月
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2006年12月7日

新聞協会編集委員会が実名発表の意義をまとめた『実名と報道』を刊行

 日本新聞協会編集委員会は12月7日、『実名と報道』を刊行しました。この冊子は、行政機関や警察等による匿名発表が増加傾向にある中、匿名発表に関する近年の事例を検証し、実名発表の意義についての考え方をまとめたものです。

 行政機関や警察などの発表当局に対して実名での発表を求めるとともに、実名発表の意義について犯罪被害者や読者・視聴者の理解を求める目的で作成しました。

 近年、「匿名発表」の動きが政府機関をはじめ多方面に広がる傾向にあります。とくに、事件・事故広報における被疑者・被害者の匿名化や、事件の発生を不公表とする警察の動きが顕著になっています。こうした流れは、警察だけにとどまらず、昨年春には医師・看護師国家試験の合格者名簿が実質的に個人を特定できない形での発表となりました。個人情報保護法への過剰反応、情報隠しともとれる動きも出てきています。

 報道各社は、近年とくに高まっている人権・プライバシー意識を尊重し、取材・報道に際してこれまで以上の配慮を心がけています。一方で、過剰ともいえる匿名化の動きに対しては、重大な問題意識を持っています。

 日本新聞協会編集委員会は、このような状況における匿名化の実態の把握、検証を行い、実名発表の意義や考え方を冊子にまとめました。

 冊子は、(1)報道機関の使命と実名、(2)匿名発表の広がりと弊害、(3)実名発表と実名報道、(4)報道側の配慮、(5)報道機関の課題、の5章構成で、社会にとって実名発表が必要である理由、匿名発表を拡大している行政や警察の言い分の検証、取材・報道におけるメディアの人権への配慮などを実例を交えて記載しています。

 報道機関にとって実名は、取材の起点であり、公権力監視のためにも重要な要素であること、発表された実名をそのまま報道するかどうかは、その影響を十分考慮して判断していることなどを説明しています。