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浦和で「裁判員制度」に反対・凍結求める集会ひらかれる

芹沢昇雄2008/02/26
いわゆる人質司法など、現在の刑事裁判の問題点を放置したまま、裁判員制度を導入することは問題が多すぎる。裁判員制度は陪審制とも異なる。小出重義弁護士は現状での制度導入に反対の立場で講演した。
埼玉 裁判 NA_テーマ2

 埼玉9条連、大宮・浦和地区9条連の主催で2月22日、埼玉・浦和の「パルコ」で、小出重義・元埼玉弁護士会副会長を講師に迎え、平和セミナー『やっぱりおかしい!裁判員制度』が開催された。

 最初に、最高裁が「裁判員制度」導入に理解を求めて作成した、広報用のアニメ『ぼくらの裁判員物語』(22分)の上映の後、小出弁護士の講演に移った。小出弁護士は「裁判員制度」にそれぞれの考えがあるのは当然と断った上で、現状での「裁判員制度」導入に反対の立場で講演した。「裁判制度」の概要について説明の後、刑事裁判で一番大事なことは「無辜の罪人を出さないこと」と確認し、問題点の指摘に移った。

 裁判員制度では早期評決(判決)のため、裁判員の関わらない処で既に証拠提出書類などの「論点整理」がなされてから法廷に提出され、急ぐあまり杜撰・粗雑司法の心配がある。それは裁判の公開や立証活動の制限にもつながり、裁判官と裁判員の「情報格差」があり、また、裁判官と裁判員の人数の問題や「過半数」による評決にも問題があると指摘した。

 また、現状の逮捕や勾留期間、保釈率、代用監獄での「人質司法」の問題を解決せず、連続録画・録音などの「取調の可視化」も導入されないままでの、裁判員制度の導入は危険であり反対と批判した。

 欧米の身柄拘束は数時間から数日であり、また陪審との違いにも触れ、裁判員制度は多数決で有罪無罪と量刑を決めるが、陪審は市民だけで有罪無罪だけを「全員一致」で評決し、更に無罪評決後は検察の上訴権が否定されていることなども紹介し、現状では「陪審」がベターだと訴えた。

 終わりに裁判員制度が憲法上も「思想良心の自由」に反し、死刑などの判断強制は「苦役の強制」に当たり、評決後も裁判内容を話せないことは「表現の自由」に反し(陪審では評決後は自由)、更に、論点整理などは「裁判の公開」にも反し、現状での裁判員制度導入は凍結すべきと訴え講演を終了した。


最高裁制作の「アニメ」の中に感じたこと

(1)「判決確定までは無罪推定」とあったが、裁判所自身が被疑者・被告を「色眼鏡」で見ており、黙秘権行使や否認していると釈放を求めず「言行不一致」である。

(2)「裁判官と裁判員は平等」と指摘しているが、評決の多数意見の中に裁判官が1人以上入ることが条件になっており「不平等」である。

(3)「有罪は検察に証明義務がある」と指摘しているが、現実は「自白」を強要し「アリバイ」を求められており、このアニメは建前だけで全く「言行不一致」の内容であった。


筆者私見

 被疑者・被告を四六時中官権の手元に置き自白を強要している「代用監獄」も改めず、取調に弁護士も立ち会えず、連続録画・録音も無いのは、先進国では日本だけで、台湾や韓国でも導入が始まっている。今時、密室での取調など時代錯誤も甚だしく、ましてや「密室の自白」を証拠採用するなど言語道断であり、裁判員制度を凍結し取調の「完全可視化」を最優先で導入すべきである。

 このまま導入すれば可視化や代用監獄の見直しはなおざりにされ、今より更に人権は侵され冤罪も増えるであろう。 
◇ ◇ ◇
浦和で「裁判員制度」に反対・凍結求める集会ひらかれる | 会場の「集会参加者」
会場の「集会参加者」
浦和で「裁判員制度」に反対・凍結求める集会ひらかれる | 講演する「小出重義弁護士」(元埼弁護士会副会長)
講演する「小出重義弁護士」(元埼弁護士会副会長)

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