「市内に産科がなくなり、出産のために離れた街にアパートを借りた」・「夜中に子どもの具合が悪くなり、救急車を頼んだが、受け入れ病院がなく冷や冷やした」・「市内唯一の透析施設が医師の退職で閉鎖され、週3回、隣り町まで行くことになった」−。医師の不足で日本の医療が深刻な事態に陥る中、全日本民主医療機関連合会の「ドクターウェーブ」推進本部はこのほど、医師不足に起因する医療崩壊の問題を解決するため、「医師を増やして! 安全で安心な医療のために」と題したパンフレットを作成した。同本部は「今こそ医師が力を合わせて声を上げ、地域の患者さん・住民の皆さんの理解を得て、政府に医師抑制政策の転換を求め、安全で安心な医療を確保したい」と話している。
日本の医療が危機的な状況に直面する下で、勇気ある医師が立ち上がって現場の問題を告発するといった動きが活発化。医療界に賛同の輪が広がるとともに、「医師を増やせ、病院を守れ」という住民運動も全国各地に広がっている。ドクターウェーブは「医師が力を合わせ、地域の患者・住民の理解を得て政府に政策の転換を求めよう」という願いを込め、全日本民医連の医師部が中心になって取り組んでいる。パンフレットは、現在の日本の医療崩壊を表す状況を分析し、原因と解決の方向を示すために作成された。
パンフレットでは、産科・小児科から始まった医師不足が、今では麻酔科・救急医療・内科・外科・脳外科など、ほとんど全ての診療科に広がり、診療縮小・休止、閉院が続出する異常事態を指摘。また、翌日が休みにならない当直業務や代休がない休日勤務などで、特に勤務医が疲弊し、病院から立ち去るケースが多発していることも取り上げている。
なかでも、月に当直8回、24時間以上の連続勤務7回、休日出勤6日などの激務で小児科医の夫を亡くした「小児科医師・中原利郎過労死裁判原告」の中原のり子さん(薬剤師)の寄稿も収録。のり子さんは「勤務体制・条件などを早急に見直し、医療者にとって人間らしい労働環境が整うことを願って止まない」などと訴えている。
また、医師不足問題の解決に向け、全国各地で講演活動などを展開している済生会栗橋病院(埼玉県)の本田宏副院長=外科医=も「『医療は命の安全保障』、国民が正しい選択をするためには正しい情報が必要最低条件。現場からの情報発信、あきらめずに頑張ろう」というメッセージを寄せている。
さらに、医師を増員している世界の趨勢に対して、日本の医師は絶対数が不足していることを裏づけるデータや、日本政府が医師の養成を抑制してきた歴史なども紹介。女性医師が働きやすい環境づくりが急務になっていることも指摘し、「安全・安心の医療のために、医師を増やし、公的医療費を増やす政策に転換させる」ことを強調している。
具体的には、@医学部定員削減の閣議決定を見直し、医師養成数を増やすA労働基準法を遵守(じゅんしゅ)し、勤務医が働き続けられるように診療報酬を増やすBへき地勤務や不足が著しい専門科を積極的選択できる条件づくりをするC医療事故などへの警察介入をやめ、原因究明と再発防止を目的にした第三者機関の設置と無過失補償制度を設立する−の4本柱からなる医療再生のための処方箋を掲げている。
同本部は、パンフレット(A5版、32ページ)を50万部発行。各職場や医療団体などで活用し、運動が普及することを目指しており、問い合わせは民医連(電話03・5842・6460)へ。
更新:2007/07/24 15:22 キャリアブレイン
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08/01/25配信
高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。