■実は彼女に見切られていたとしたら……
はじめて会って、次第に仲良くなって、いわゆる相思相愛で互いを彼女と彼氏と呼べる関係になるまでの間は、ものすごく甘酸っぱいですよね。急にいつもより身体も軽くなったり、鳥の声や花の色も鮮やかに感じたりしてきます。多分、アローズで手にするニットの色味も、気持ち彩度が上がることでしょう。
そして、一年が経ちました。
「彼女? ああいるけど。うん、別にうまくいってるよ。結婚とかはまだだけど、あいつは俺のこと好きだし。えっ? 鳥の声? 聞こえないけどオマエ何言ってんの? 」
やはり聞こえなくなってきています。すでに気持ちはニュートラルに戻ってきているようです。あなたが、ナポリ人やリオデジャネイロ人ならば、ギアもまだ1速のまんまアクセル全開だったでしょう。が、残念ながらノーマルな我らワビサビニッポン人の場合、ハイブリッドで居眠りな状態です。
これを人は安定と言います。でも、それは見せかけかもしれません。実は彼女、とっくにそんなあなたを見切っていたとしたら、どうでしょう。こ、こわいですよね。当たり前に存在するハズのモノを失った時ほど、心が揺れることはありません。
今回は、そんな安定を謳歌するあなたに、被害妄想モードすら入りかねない、警鐘を鳴らします。では、マンネリの落とし穴ツアー、スタートです。
■NGポイント1:常に待ち合わせで遅れていく
「今日は気持ちいいね。えっ? 遅いって? ちょっとじゃん。それよか昨日のドラマ見た? なんだよ、機嫌悪いじゃん今日。まいっかメシいこメシ」
こんな会話はよくあるはずです。罪の意識が無い場合、あまりにどうでもよくて、記憶にまったく残りません。さらにそれを何十回と繰り返していようが、根本的に罪の意識ゼロ、ゼロかける何十はゼロってことですから、やっぱりまったく記憶にかすりもしません。
それに対して、「もお遅いんだから」という側の彼女がちょっと違う男性とデートして、その人が待ち合わせ時間より先に来ていたのを彼女が知ったその瞬間。ここからすべては始まります。あなたの記憶に残らないその何十回は、すべて彼女の頭に蓄積していきます。そしてそれが頂点に達した時。もちろん彼女は、サナギマンからイナズマンに変わるのです。
「そ、そんなことで」と思われるかもしれません。中には、おおらかなお相手がいるかもしれませんが、論点は「罪の認識の欠如とその反復性」にあります。取り返し付かなくなる前に、もう一度彼女を見つめて鳥を呼び戻しましょう。さもなければ、彼女は旅立ちます。
■NGポイント2:いつも同じことばかりしている
「どうするって何が? 明日? いやなんでもいいけど。うん、え? イルカ見に? いやもうちょっとあったかくなってからにしようぜ。お台場? 道混むよなぁ、電車もダルイし。映画かぁ、なんかやってっかなぁ。いやー、それはレンタルでいいんじゃん別に。とりあえず、いつものスタバね、先行ってっから」
いつもの街をぶらぶらして、いつもの居酒屋で呑みメシして、じゃまたな、なんて。
「結構あいつもカワイイとこあるよなぁ、今日はお刺身頼んでイーイ? なんて聞いてきて。居酒屋でも俺たちはハッピーだし、まだこれからって感じだし、自分的にはそんな俺たちリスペクトっていうか……」
ダメです。あと数分も持ちません。今頃彼女は夜行列車に乗って旅立っていることでしょう。何がダメって、創意工夫がないからです。小学校の通信簿にすらそんな項目があったじゃないですか。毎回同じコトやってたら、サルでも飽きます。首相候補や大統領候補だって改革だのチェンジだの言うわけですから、いろいろな変化はとても大切なのです。別にゴージャスじゃなくたっていいんですよ。動物園でも、浅草でも、井の頭公園でも、巣鴨でも。好奇心が低い男性は生命力も低いと考えられることもあるようですので、気合い入れていきましょう。
■NGポイント3:デリカシーなさすぎ
「ちょっと、やめてよオナラして。あーあー、音立てて噛まないで口閉じて噛んでよ。また、つまようじくわえてる。食事中はマンガ読むのやめてください。ゲップとかやめようよ、ちょっと。」
これ、意外に気を許しているだけなんでしょうけど、彼女には通用しないことも多いです。だって、お父さんとか娘からぼろかす言われてるじゃないですか。実の父でもそうなんですから、他人のあなたが大丈夫なはずがありません。多分、最初の頃はそんなことなかったでしょう。だんだんとお父さん化してきたわけです。逆に彼女がお母さん化するとやっぱり違和感あるわけですから、そういうのは結婚以降にしましょう。
でも結婚して、気兼ねなく緩められるなぁと思いきや、娘がいると大変です。息子ならば余裕、でも娘は許してくれない。つらいですね。でもそんなことで大好きな彼女が夜汽車に乗ってしまうのは忍びがたいです。ということで、よそ行きモードキープが賢明です。
■NGポイント4:SEXするだけ
「いーよ、とりあえずウチ来いよ。弁当買ってきて弁当、オマエもなんか買っていいよ。とりあえず先にチェックインしとくから。食事? 部屋部屋。ルームサービスにしよ」
「どうする今日? じゃコンビニよってとりあえずラブホ入ろうよ。」
完全な危険信号です。レッドゾーン振り切ってます。見ようによっては、無駄のない完璧なセリフと提案に見えますが、いけません。間違いなく終焉を迎えます。たぶんそれは、あなたの中に徐々に頭をもたげることでしょう。崩壊の序章は、若干の響きがあります。いわば、鳥の声とは真逆の位置づけ。でも多くの方は、その音に気付きながらも、欲望という名の列車に乗り続けます。中には、「この崩壊の音が聞きたかったんだよ」なんて職人気質なマッチポンプ野郎もいらっしゃるかもしれませんが、素人はマネしちゃあいけません。
「せっかくプロポーズしても予想外に断られた。」なんて方は、どこかでそんな安定と間違ってしまったマンネリプレイをしていたことでしょう。いやまだ、大丈夫です。今度のデートを最後のチャンスと思って、待ち合わせの15分前には着いて、イルカ見て、お台場行って、いつもと違うお店でご飯食べて、オナラも我慢して、耳元で好きだからしようよって、ゆっくり口説きましょう。そうすれば、カノジョから素敵な一言が……
「アンタ浮気したでしょ」
2008年5月7日 11時00分